【楽天決算】2022年12月期第2四半期決算(連結)を公表

ECのミカタ編集部

楽天は、最新となる2022年12月期第2四半期決算短信(連結)を公表した。ここではその概要についてポイントを絞って見ていく。

当該連結累計期間の経営成績

当該連結累計期間の経営成績

同社によれば、インターネットサービスにおいては、インターネット・ショッピングモール『楽天市場』における共通の送料無料(込み)ライン導入に代表される顧客利便性向上の施策等の奏功により、コロナ禍における「巣ごもり消費」等を背景に増加した顧客の定着が進んだほか、国内旅行に対する需要が持ち直しを見せたこと等により、国内EC取扱高の伸長に貢献したとしている。またフィンテックにおいては、各サービスにおける顧客基盤の拡大が続き、クレジットカード関連サービス、銀行サービス、証券サービス等において増収増益を達成した。

モバイル部門においては、通信料金収入の増加等により、当該第2四半期累計期間における売上収益が拡大した。この結果、同社グループの当該第2四半期連結累計期間における売上収益は893,598百万円(前年同期比12.6%増)となったが、モバイルにおける自社基地局設置等の先行投資が継続中のため、Non-GAAP営業損失は177,391百万円(前年同期は91,124百万円の損失)となった。

あお同社グループは、メンバーシップ及び共通ポイントプログラムを基盤にしたオンライン・オフライン双方のデータ、AI、仮想化ネットワーク等の先進的技術を活用したサービスの開発・利用促進等を図ることで、楽天エコシステムを更に進化させ、楽天グループの競争力を高めて行くとしている。

各セグメントの概況

各セグメントの概況

◆インターネットサービス

主力サービスである国内ECにおいては、流通総額及び売上収益の更なる成長を目指し、ロイヤルカスタマーの醸成や新規顧客の獲得のための販促活動、クロスユースの促進、共通の送料無料(込み)ラインの導入促進に加え、楽天エコシステムのオープン化戦略等に注力したとしている。

インターネット・ショッピングモール『楽天市場』や食品・日用品の宅配サービスを行う楽天西友ネットスーパー等においては、こうした施策の結果、コロナ禍における「巣ごもり消費」の拡大に伴うオンラインショッピング需要の高まりを背景に増加した顧客の定着が進み、取扱高はコロナ禍における業績の押し上げの影響を受けた前第2四半期連結累計期間と比較しても伸長した。

インターネット旅行予約サービス『楽天トラベル』においては、国内旅行に対する需要回復に合わせた販促施策等が奏功し、前第2四半期連結累計期間と比較して取扱高が拡大した。

海外インターネットサービスを含むその他インターネットサービスにおいては、効率的なマーケティング施策や人々の消費行動の回復に伴い、米国のオンライン・キャッシュバック・サービス『Rakuten Rewards』を中心に売上収益の伸びに回復が見られた。

なお、前第2四半期連結累計期間に、投資事業におけるフィンテック関連企業への株式投資の評価益を28,200百万円計上しており、前年同期比で大きく減益となっている。また同社における物流事業に関して有する権利義務については、一部を除いて、日本郵便株式会社との合弁会社であるJP楽天ロジスティクス株式会社への承継が完了しており、前第3四半期連結会計期間より、同社の持分法適用関連会社となった。

これに伴い、前第2四半期連結会計期間までインターネットサービスセグメントで計上されていた物流事業の損益の一部が、前第3四半期連結会計期間より持分法による投資損益として計上されている。この結果、インターネットサービスセグメントにおける売上収益は505,699百万円(前年同期比9.8%増)、セグメント利益は38,555百万円(前年同期比31.8%減)となった。

◆フィンテック

クレジットカード関連サービスにおいては、2022年4月に『楽天カード』の累計発行枚数が2,600万枚を突破した後も顧客基盤の拡大が継続したほか、同年3月に、まん延防止等重点措置が解除されたこと等を背景に、オフライン消費の回復が見られ、ショッピング取扱高の伸長に貢献した。銀行サービスにおいては、新規口座の開設が増加したほか、2022年6月末時点の預金残高は7.9兆円となり、引き続き顧客基盤の拡大に努めました。証券サービスにおいては、2022年6月に総合口座数が800万口座を達成した。この結果、フィンテックセグメントにおける売上収益は320,850百万円(前年同期比5.3%増)、セグメント利益は49,212百万円(前年同期比4.5%増)となった。

◆モバイル

国内モバイルサービスにおいては、通信料金無料キャンペーンが順次終了したことに伴い、通信料金の支払を開始したユーザーの増加が売上収益の増加に貢献した。また2022年5月に新料金プラン『RakutenUN-LIMIT Ⅶ』を発表した。楽天シンフォニーにおいては、同年4月に、Robin Systems, Inc.を完全子会社化している。今後、同社との協業関係を強化し、顧客となる通信事業者に対して、エンドツーエンドで完全自動化されたクラウド、高度な統合クラウドプラットフォームを提供することで、更に高い顧客価値を実現するとしている。この結果、モバイルセグメントにおける売上収益は164,983百万円(前年同期比53.8%増)となったが、モバイルにおける自社基地局設置等の先行投資が継続中のため、減価償却費等のネットワーク関連費用が増加し、セグメント損失は259,328百万円(前年同期は197,282百万円の損失)となった。

連結業績予想

同社によると現時点では、同期の連結業績予想において、株式市況の影響を大きく受ける証券サービスを除いた連結売上収益については、前期に比べ二桁成長を目指すとしている。ただし、ウクライナ情勢や、原油価格の高騰、新型コロナウイルス感染症拡大防止のための外出自粛要請等の影響を受け、事業によっては、売上収益の減少等が発生する可能性があるとも述べている。各セグメントにおける同期の見通しは、次のとおりだ。

◆インターネットサービス

ECをはじめとした国内インターネットサービスにおいては、引き続き、ロイヤルカスタマーの醸成、新規顧客の獲得、クロスユースの促進、ECプラットフォーム拡大にむけた楽天エコシステムのオープン化戦略等に取り組むとともに、データやAI等の活用を通じた新しい市場の創造により、流通総額及び売上収益の成長を目指すとしている。なお、旅行予約サービスである『楽天トラベル』等においては、外出制限解除に伴い持ち直しの動きが期待されるものの、今後の新型コロナウイルス感染症の影響によっては、売上収益や利益が減少する可能性があるともしている。海外インターネットサービスにおいては、楽天エコシステムの会員基盤拡大、海外におけるブランド認知度の向上を図るとともに、ユーザーに新たな価値を提供することを目指すとのことだ。

◆フィンテック

クレジットカード関連サービスにおいては、引き続きマーケットシェアやグループシナジーの拡大を狙いとしたマーケティング施策の強化により、ショッピング取扱高の更なる成長を目指すとのことだ。銀行サービスにおいては、新規口座獲得に加え、給与口座利用等のメイン口座としての利用促進施策を進めていくとしている。保険サービスにおいては、新規契約件数の増加、インターネットサービスとの親和性が高い商品の拡充等により、一層の成長を目指すとのことだ。証券サービスにおいては、株式市況の影響を大きく受けるため、予想は困難だとしている。

◆モバイル

モバイルにおいては、新規契約者の増加、既存ユーザーにおける無料キャンペーン期間の契約終了等に伴い通信料収入の増加が見込まれるとしている。また、引き続き4Gにおけるネットワーク品質の向上に取り組むとともに、5Gにおける全国区での通信基地局の展開を進めるとのことだ。これに伴い減価償却費等の営業費用が引き続き発生することが見込まれる。一方で、パートナー回線エリアから楽天回線エリアへの切り替えが進むことから、第1四半期連結累計期間をピークに、ローミング費用が減少に転じており、今後更なる逓減が見込まれるとしている。

このように、楽天市場をはじめとしたECが引き続き好調であるのに対して、モバイル事業での通信インフラ整備で多額の出費を強いられる状況は続いており、そこでのコストが全体の利益の足を引っ張る構造から未だ抜け出せていないことが今回の決算からも鮮明に見て取れる。モバイル事業に関しては無料プランの終了に伴い、約20万件の契約数純減が発生しているが、通信料収益の増加によって、部門としての収益構造が改善するとしており、今後、モバイル部門の収益構造と、それが大きく寄与する形での全体の収益構造がどう推移するか、引き続き各方面からの視線が集まることになりそうだ。

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