物流業務の基本!仕事内容から有利なスキルや業界の魅力を徹底解説
「物流業務」と聞いて、みなさんはどんな仕事内容を思い浮かべるでしょうか。主にトラックでの配送や倉庫での作業をイメージする方が多いかもしれません。「物流」とは単に商品の輸送だけを指すのではなく、商品の生産や倉庫内での保管や在庫管理、梱包や情報管理など、消費者に届けるまでの機能や項目が含まれます。今回は、物流業の基本や機能、業務内容から取得しておくと有利になる資格の情報などをご紹介します。
物流とは?
そもそも物流とは、「物的流通」という言葉の略称で、生産者やメーカーから消費者へ生産物を引き渡す「物の流れそのもの(活動)」のことを指します。この「物の流れ」の中には、輸送・保管・荷役・包装・流通加工・情報処理といった6つの機能が含まれており、この6つの機能が連携することで、消費者の元に商品を届けることが出来るのです。
物流とロジスティクス
物流に関する言葉として、「ロジスティクス」という言葉を聞いたこともあるかと思いますが、ロジスティクスと物流は同義ではないので、使用の際は注意が必要です。ロジスティクスとは、もともと英語の「logistics」を由来とする軍事用語で、計画的に物資を調達し補給する活動を意味する言葉です。
この活動をビジネスに落とし込み、「原材料の調達地点から消費者の手に届くまでの一連の流れ(物流)を管理するプロセスおよびシステム(管理)」を、ロジスティクスと呼びます。
つまり、「物流はロジスティクスの中の一部」と考えることができます。
物流と流通
物流と似た言葉に「流通」がありますが、流通とは「商品が生産者から消費者に渡ること」です。物流との違いは「モノだけではなく、お金やサービス」などを含む一連の流れのことを指すため、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどが店頭で商品を販売することも流通に含まれます。
また、EC事業者の場合は「オンラインショップから配送された商品が購入者の元に届くまで」が流通と呼べるでしょう。
物流業6つの機能
先にも述べたように、物流業とは単に荷物の配送だけを指す言葉ではありません。物流業務の内容はさまざまですが、以下では主な仕事の種類や機能をご紹介します。
輸送・配送
輸送と配送は、受注した荷物を指定された場所・期日に納品することを指します。「輸送」は一般的に、「長距離を移動しながら人や物を運ぶこと」ですが、物流においては工場から物流倉庫などの「拠点から拠点への移動」を差し、一次配送とも呼ばれます。
「配送」は、倉庫などの拠点から小売店や消費者など複数の場所に運ぶことを指し、二次輸送とも呼ばれます。輸送・配送は物流業にかかるコストのうち約6割を占めると言われているため、コスト削減に取り組むことが重要とされています。
荷役
荷役は、トラックや船・航空機に貨物を積み込んだり、荷下ろししたりする作業のことです。物流倉庫への入出庫や仕分け作業も含まれ、大きく以下の6つの作業に分かれています。
① 荷物の積み下ろし
② 運搬
③ 積付け
④ 入庫・出庫
⑤ 仕分け
⑥ 荷揃え
保管
保管は、荷主から預かった荷物を適切な環境で品質管理する、数量の管理などを行う作業で、物流センターなどの倉庫業務がこれに該当します。単に物を保管しておけばいい、というわけではなく、食品においては厳密な温度・湿度管理などが求められます。
流通加工
流通加工は、製品をすぐに販売できる段階まで加工する作業です。具体的には値札付けやラベル貼り、箱詰め・袋詰めなど、商品を消費者のもとへスムーズに届けるために、出荷先の希望や使用状況に応じて加工します。
包装・梱包
「包装」は、商品をラッピングするなど、商品の価値を高めるための見栄えを美しくする装飾要素を目的に行われます。「梱包」は商品を発送する際に、内容物を破損や損傷から保護することを目的に行われます。
包装と梱包は「商品を包む」という広義では同様ですが、目的や意味には大きな違いがあるため注意が必要です。
情報管理
情報管理では、倉庫管理システムなどを利用し、在庫管理やピッキング作業を最適化する、ほかにも輸送中の荷物の状況を把握するなど、システムを用いて物流の一連の過程において必要とされる業務の効率化を行います。
物流業務の魅力
上記でご紹介したように、物流業にはさまざまな業務が存在します。
以下では、物流業務の3つの魅力的なポイントを解説します。
幅広い業務内容
6つの機能をもつ物流業ですが、細かく分けるとさらに業務の幅は広がります。倉庫業務といっても、商品のピッキングから梱包まで多岐に渡る作業があるため、いろいろな職種の中から役割を選択できることが魅力の一つでしょう。
物流業は日本国内に限らないため、輸入や輸出など海外との取引がある場合には、外国語のスキルが役立ちます。幅広い分野の業務の中で、過去に取得したスキルを活かせる可能性もあるでしょう。
未経験でも働きやすい
インターネットの普及により、EC利用者が増加し続ける状況で、物流業では人手不足が課題として挙げられています。この人材不足を解消するため、未経験者でも募集されることが多く、また業務内容も幅広いため転職しやすい業界といえるでしょう。
将来的にもなくなりにくい
物流業は生産者から消費者のもとに商品が届けられる過程で不可欠です。コンビニやスーパーなどの小売店はもちろん、飲食店でも食材の仕入れをする上で物流が必要になります。
どんなお店や業種でも、その裏側には必ず物流が存在しているので、勤務する人々も不可欠となります。拡大を続ける物流業界は、将来的にもなくなりにくい仕事と言えるでしょう。
物流業務に有利な資格
物流業では未経験でも働きやすい業界ではありますが、業務内容によっては資格が役立つ場合もあります。
さまざまな資格がありますが、以下では厳選した7つの資格をご紹介します。
運行管理者
物流業務の中で「輸送」に関する業務に必要となる国家資格です。運行管理者は輸送トラックのドライバーなどの乗務割の作成や、休憩や睡眠施設の保守管理、指導監督や健康状態の把握など、輸送の際の安全運行ができるように維持管理するため必要となるスキルです。
危険物取扱者
ガソリンや化学薬品など、「燃焼性の高い危険物」を取り扱う場合に、必ず必要となる国家資格です。甲・乙・丙の3種類があり、種類によって管理できる危険物が違います。甲種は消防法上のすべての危険物の取り扱いが可能なため、企業ニーズの高い資格と言えるでしょう。
消防設備士
消防設備士は施設に設置されている消防設備を点検・整備できる国家資格です。大量の荷物を保有する物流倉庫は、火災に備える必要性が高い施設のため、倉庫作業を行う企業では優遇される資格と言えるでしょう。
フォークリフト運転技能者
最大荷重1トン以上のフォークリフトを運転するために必要な国家資格です。荷役など倉庫作業の際に有利なスキルとなり、比較的取得しやすいと言われています。
通関士
海外から到着する荷物の通関手続きを行うことができます。財務省が管理する資格で難易度は高いとされていますが、輸出入を行う企業では専門の企業に代理や代行を依頼するため、保有していれば非常に有利な資格だと言えるでしょう。
倉庫管理主任者
倉庫を適切に管理するための資格で、講習だけで取得できます。倉庫内での火災・事故防止のためのメンテナンスや、適切な物品の保管、荷役業務の管理など、事業登録が倉庫業の場合に選任が義務となるため、倉庫業に有利な資格です。
ロジスティクスオペレーション 2級・3級
荷役や輸送に関するオペレーションを遂行するために必要な知識を有することを証明する資格で、倉庫内で現場スタッフとして働く際に有利な資格です。
厚生労働省傘下の中央職業能力開発協会(JAVADA)が開始した、ビジネス・キャリア検定試験の1つで、物流倉庫向けのなかで唯一の公的資格となるため、需要の高い資格でしょう。
物流業の抱える課題
物流業は人々の生活に不可欠な存在ですが、一方で多くの課題を抱えています。EC利用者の増加に伴い、消費者のニーズに合わせた物流を行うことを多くの企業が模索しています。
そのなかで「送料無料」や「当日配送」など、消費者には多くのメリットをもたらす内容が、多くの物流事業者にとっては負担となっている問題があります。
人手不足
深刻なドライバー不足による従業員の負担増が問題視され、2024年4月1日以降、ドライバーの年間時間外労働の上限が960時間に制限されることとなりました。「物流業界の2024年問題」と言われているものです。
ドライバーの労働環境見直しは大切なことではありますが、若手不足と高齢化による運送・物流業界には大きな課題となっています。
物流波動
物流波動とは、さまざまな要因で商品の受注数に波が起こることです。例えば、季節需要などが該当しますが、近年ではSNSでのインフルエンサーによる投稿で急激に受注件数が増えるなどの影響もあります。
この受注量の変化に柔軟に対応することができなければ、顧客満足度や売り上げの低下にも繋がるため、物流波動に対応できる体制の構築が必要となります。
燃料の高騰
2021年に世界的な原油価格の高騰があり、軽油の価格が値上がりしました。本来であれば、燃料費の高騰は運賃の値上げに繋がるところですが、多くの荷主は配送費の安いところへ依頼を考えます。そのため、荷主との関係上、運賃の値上げをすることが難しく、長距離の配送になるほど赤字となるケースがあるようです。
まとめ
課題を抱える物流業界ではありますが、その反面多くの魅力ある業種でもあります。自分の持つスキルや資格を活かせる場所になる可能性も秘めているかもしれません。多くの物流企業では人手不足に悩んでいるため、未経験でも歓迎されるケースが多く、転職もしやすい業界です。
これからも普及・拡大を続けるEコマースの存在も踏まえて、物流業界について改めて情報を整理してみることをおすすめします。