コールドチェーンとは?食品物流の仕組みやメリットを簡単に解説!

ECのミカタ編集部

私たちが、新鮮な食品を口にするために必要不可欠となる「コールドチェーン」という仕組み。

コールドチェーンとは、低温管理が必要な生鮮食品や冷凍食品などを、冷蔵や冷凍で一定の温度を維持したまま消費者へ届ける一連のプロセスのことを言います。今回は、将来的に市場規模が拡大するコールドチェーンの概要や仕組みをはじめとする、基礎知識について解説していきます。

記事の後半には、冷凍倉庫をレンタルする際の費用や相場についてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

■目次
・コールドチェーンとは
・コールドチェーンの市場規模
・コールドチェーンの食品物流での仕組み
・コールドチェーンのメリットと課題
・コールドチェーンを担う冷凍倉庫の相場
・まとめ

コールドチェーンとは

コールドチェーンとは、別名「低温ロジスティクス」や「生鮮SCM(サプライチェーンマネジメント)」とも呼ばれ、低温での温度管理が必要な生鮮食品や冷凍食品を、生産から一定の温度を維持したまま商品を届ける物流方式です。

コールドチェーンの発達により、私たちはコンビニやスーパーで手軽にアイスクリームや鮮度の高い食品を購入することができています。また外食チェーン店で、クオリティの高い冷凍食品により、低価格でバラエティに富んだメニュー展開が実現できているのはコールドチェーンのおかげでもあります。

さらに近年では食品だけでなく、医薬品や化学品、写真フィルムや電子部品などの多岐にわたりコールドチェーンが活用されており、私たちの生活に欠かせない存在となっています。

コールドチェーンの目的


コールドチェーンの目的は、主に食品の鮮度を保つため低温を維持することです。低温状態を維持することで、常温での輸送が困難であった食品を全国各地に届けることができ、保存期間の延長も実現します。

また、コールドチェーンと混同する用語に「サプライチェーン」というものがあります。サプライチェーンもコールドチェーンと同様「生産」→「配送」→「販売」→「消費者」の一連のプロセスのことを指しますが、コールドチェーンは、このプロセスに加えて、常に一定の温度管理が必要となる点に違いがあります。コールドチェーンは、商品が届くまでのどの過程においても徹底した温度管理が前提で、消費されるまで低温が保たれていなくてはなりません。

コールドチェーンの重要性


繰り返しになりますが、生鮮食品や冷凍食品の流通には、コールドチェーンの仕組みが必要不可欠です。常温での流通しかなかった時代には、品質の劣化が早く、商品として成立しないケースや、限られた保存期間内で輸送できるエリアにしか商品が届かないというケースが当たり前でした。

しかし、現在では、輸送中のトラック内で温度調整ができるようになったことで、輸送エリアが大幅に拡大しています。また、チェーン展開をする外食店では店舗側の負担軽減や効率化により、メニューの製造や加工を1箇所で行ったあと、コールドチェーンを利用して各店舗へ輸送する仕組みが定着しています。

このように、私たちの生活にはコールドチェーンの下支えが必要不可欠であり、将来的にも市場規模が拡大すると予想されていることから、重要性は今後さらに高まっていくでしょう。

コールドチェーンの市場規模

海外のコールドチェーンに関するモニタリングレポートによると、2022年から2030年までに14.7%のCAGR(年平均成長率)で成長し、2030年には792億7000万米ドルに達すると予測されています。
引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002383.000071640.html

また、国内においても、一般社団法人日本冷凍食品協会の発表では、2011年に約6,300億円だった冷凍食品の国内生産額が、コロナ渦に突入した2020年には約7,000億円になったという結果も出ています。
引用:https://www.reishokukyo.or.jp/

これは共働き世帯の増加や、コロナによるテレワークや巣ごもり需要による市場規模の拡大が要因とされています。このことから、今後も冷凍食品や生鮮食品の取り扱いが増えるとともに、食品ECの需要も高まっていくでしょう。

コールドチェーンの食品物流での仕組み

コールドチェーンは、大きく「生産・加工」「流通(保管・輸送・販売)」「消費」の3つの工程を経て消費者へと商品が届く仕組みです。

それでは、それぞれの役割と流れを見ていきましょう。

引用:https://www.smartmat.io/column/logistics

1.生産・加工


生鮮食品と一言で言っても、野菜や果物、肉や魚によって低温加工の過程に違いがあります。

例えば、野菜や果物は、低温状態前に「予冷」処理を行ったあと、適切な温度で管理しなければなりません。また、肉や魚は鮮度が重要とされるため細胞の破壊を防ぐ「急速冷凍」が必要です。

このように、出荷する前にそれぞれの食品に適した加工処理を行うことで、品質維持が可能となります。

2.流通


低温処理の後は、販売に向けて輸送の準備を行います。

コールドチェーンにおいて、輸送時の品質管理が最も重要なポイントです。低温で温度管理された倉庫から外に出し、トラックへ運ぶことを含めて温度管理ができる輸送設備を整えなくてはなりません。特に輸送先が遠方の場合は長時間の温度管理が必要となるため、温度管理のスキルを持った人材の確保も重要となってきます。

また、中継地点で一時的に倉庫を利用する際は、商品の温度に対応できる倉庫かを事前に確認し、最適なルートを検討しておくなど細部にわたり注意が必要です。

3.消費


生産・加工、流通の過程を経て、商品が消費者へ届けばコールドチェーンは完了ということではなく、実際に商品が安全に消費されるまでが、大切な役割となります。そのため、消費者が自宅の冷蔵庫や冷凍庫で保管しやすいような素材を使用したパッケージを採用したり、傷みにくい加工方法を行うなどの工夫が求められます。

コールドチェーンのメリットと課題

将来的に市場規模の拡大が見込まれているコールドチェーン物流ですが、事業として参入を検討しているのであれば、企業にもたらすメリットはもちろんのこと、課題も理解することが重要です。続いては、コールドチェーンのメリットと課題についてそれぞれ詳しく解説していきます。

コールドチェーンのメリット


コールドチェーンのメリットは以下の3つが挙げられます。

・食品ロスの削減
・品質を維持しながら消費者へ
・遠方エリアへ配送可能

コールドチェーン物流によるもっとも大きなメリットは、食品ロスの削減です。保存期間が延長されれば店舗で販売できる期間も伸びるため、賞味期限切れによる破棄率の減少に繋がります。

その他にも、品質をより長く維持することができるようになったことで、各地に物流拠点を作らなくても直接全国各地へ商品を届けることが可能となりました。このことから、一部地域でしか販売されていなかった商品が、気軽に遠方エリアからでも購入できるなど、販路拡大にも貢献しています。

コールドチェーンの課題


続いては、コールドチェーンの課題について解説していきます。
主に課題として挙げられるのが、以下2つです。

・導入コストがかかる
・高い技術力が求められる

まず機械や設備の導入コストをはじめ、維持管理のランニングコストが常温物流よりもかかってしまう点が課題とされます。扱う商品が多ければ、ぞれぞれに温度管理や機械の整備も必要となるため、付随するコストの増加に注意しなければなりません。また、設備を揃えても温度管理の専門知識がある人材が確保できるかも重要なポイントです。

コールドチェーンは、一連のプロセスの中で、いかなる場合も温度管理の失敗が許されないため、イレギュラーな対応にも柔軟に対応できる温度管理のスキルが求められます。

このことから、これからコールドチェーン物流の参入を検討しているのであれば、まずは、レンタルによる冷蔵・冷凍倉庫を利用して、専門スキルが必要な作業を外部に委託してみるのがおすすめです。

今やレンタルの冷蔵・冷凍倉庫は、入庫から発送業務、システム化された在庫管理などの手厚いサービスの提供が主流で、人件費や維持費などの経費削減だけでなく、業務効率化や生産性の向上も期待できるでしょう。


コールドチェーンを担う冷凍倉庫の相場

冷蔵・冷凍倉庫は、一般的に温度によって階級で区別されており、野菜や果物、アイスクリームや冷凍マグロなど、温度管理に違いがあります。

より温度が低くなれば、かかる光熱費も変わるため管理コストが上がっていきます。続いては、レンタル冷凍倉庫を利用する際にかかる費用について、それぞれの内訳や相場を見ていきましょう。

冷凍倉庫の固定費


レンタル冷凍倉庫の固定費は、主に以下3つが挙げられます。

・システム使用料:20,000〜50,000円/月
・保管料:3.000〜7,000円/坪
・管理費:10,000〜50,000円/月

レンタル冷凍倉庫にかかる固定費の1つ目は、入庫から在庫管理、ピッキング、出荷をシステムで管理するために発生する「システム使用料」。各工程の状況を瞬時に確認することが可能で、自社でシステムを構築せずに利用することができます。

2つ目の「保管料」は、保管する場所にかかる「テナント料」です。倉庫の保管料は、坪貸しやパレット貸しなど、倉庫に応じた単位でテナント料が算出方法が変わるため、自社が預ける商品に適した倉庫を選ぶことが求められます。

3つ目は「管理費」であり、業務管理に必要な手数料が、システム使用料とは別途請求されることが一般的です。倉庫サービスによっては、基本料に含まれるケースもあります。

冷凍倉庫の変動費


続いては、変動費の内訳をご紹介していきます。変動費とは、在庫の動きによって費用が変わる料金のことで、主に以下の5つの項目で変動します。
・入庫料:10〜30円/個
・検品料:10〜30円/個
・ピッキング料:10〜30円/個
・梱包料:150〜300円/個
・配送料:400〜1,000円/個

商品を受け入れる際に発生する「入庫料」。フォークリフトで荷物を積み下ろす「デバンニング料(20,000〜35,000円)」として、入庫料とは別途請求されるケースもあります。商品を受け入れた後は、検品とシステムによる商品登録を含む「検品料」が発生し、出荷準備にかかる費用が「ピッキング料」です。

その後は、段ボールなど破損を防ぐための梱包を行う「梱包料」と、消費者へ商品を届けるために「配送料」がかかりますが、これはエリアによって料金が変動します。

エリア別に見る保管料の相場


冷蔵・冷凍倉庫をレンタルする場合、コスト面で大きな差が出るのが「保管料」です。保管料はエリアの地価によって大きく左右されるため、地域ごとに保管料の相場を事前に把握したうえで、レンタルする冷凍倉庫のエリアを検討すると良いでしょう。

エリア別の保管料の相場は以下を参考にしてみてください。

引用:https://www.biz.ne.jp/

冷凍倉庫会社を選ぶ際のポイントは、主の目的である、冷凍品の徹底管理はもちろんのこと、万が一の際のサポート体制も、冷凍倉庫会社の選定ポイントとして確認しましょう。

まとめ

今回は、コールドチェーンの概要からメリットまで詳しくご紹介しました。食品ロスの削減や遠方エリアへの配送が可能なコールドチェーンですが、導入までにはいくつかの課題がありますが、市場のニーズは高まっています。ぜひ、コールドチェーン物流の専門知識を持った委託先と上手に連携し、将来的にますます需要が高まっていく食品EC事業の運営に活用してみてください。


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