Amazonがビジネス変革を議論 日本水準のサービスは世界で受け入れられる 「Amazon Business Exchange 2023」開催

桑原 恵美子

Amazon.com, Inc. Amazonビジネス バイスプレジデントのアレックス・ギャノン氏。「日本でのAmazonビジネスの拡大は我々にとって優先事項であり、主要な海外進出先の一つとして、2017年にサービスを開始した」と語った

Amazonが提供する法人向けのEコマース事業「Amazonビジネス」は、2023年7月27日、4回目となるビジネスカンファレンス「Amazon Business Exchange 2023」を開催した。組織の経営・購買改革のリーダーが集い、ビジネス変革を議論するイベントで、今回は「企業・組織の収益力を高める購買調達戦略の現実解とは」がテーマ。その概要を紹介する。

基調講演「変化に強い間接材購入とは?不透明な時代を乗り越える購買組織の在り方」

最初のプログラムは、「不透明な時代を乗り越える購買組織の在り方」をテーマにした基調講演。冒頭で、Amazon.com, Inc. Amazonビジネス バイスプレジデント アレックス・ギャノン氏から日本のユーザーに向けたビデオメッセージが紹介された。

アマゾンジャパン Amazonビジネス事業本部 事業本部長 石橋憲人氏がアレックス・ギャノン氏のコメントを補足。「一般の消費者のお客様もそうだが、Amazonビジネスも日本のお客様の要求水準が最も高く、きめ細かいサービスを求める傾向が強い。逆に言うと日本の水準にミートするようなそんなサービスを作ることができれば、世界中のお客様にも受け入れられる」と語った。

「購買に対する要求が厳しい日本は、世界のアマゾンビジネスのショーケースとなっている」と語るアマゾンジャパン Amazonビジネス事業本部 事業本部長 石橋憲人氏

その後、世界各国の購買調達の責任者やリーダーに対して行ったサーベイの結果を石橋氏が紹介。

購買調達の責任者やリーダーはコスト削減を最も重要視しており、課題としては、効率化と複雑性への対応が最も多く挙げられた

Amazonビジネスで間接購買全体の自動化と戦略的フォーカスを進めるイメージを、5段階のフェーズで示した

Amazonビジネスでのインボイス制度対応についても簡潔に紹介

続いてAmazonビジネスを導入し、非効率な購買プロセスを改善した例として、ウーブン・バイ・トヨタ株式会社 Global Head of Procurement 若菜佳世氏が登壇。

ウーブン・バイ・トヨタ株式会社 Global Head of Procurement 若菜佳世氏

ウーブン・バイ・トヨタ株式会社は自動運転、先進運転支援システムの開発といった特異な業務を手掛けている。よって購買必要製品の品目が多岐にわたり、しかもスピード感を持って開発を行うために必要な製品はどこよりも早く購入することが求められているという。にもかかわらずAmazonビジネスの導入前は社内カタログがなく、非効率、不透明な購買が行われている状況だった。このような状況の中、2021年1月に、Amazonビジネスの利用を開始。さまざまなトライアル&エラーの内容をフェーズ1からフェーズ4までの段階に分けて紹介した。

Amazonビジネス導入後、トライアル&エラーを繰り返し進化してきた内容をフェーズ1からフェーズ4の段階別に解説

カスタマーパネル①「バックオフィスDX最前線~今から実現する業務改革の進め方~」

続いて、バックオフィスDXを推進している企業の購買改革のリーダーに、その進め方を聞くカスタマーパネル。一つ目のテーマは「バックオフィスDX最前線~今から実企業現する業務改革の進め方~」。大日本印刷株式会社、北海電気工事株式会社、国立大学法人三重大学という、全く異なる三業種の購買担当者が、Amazonビジネス導入によるDXの成功例を紹介した。

一人おいて左から、大日本印刷株式会社 購買本部 購買管理部 副部長 上尾哲也氏、北海電気工事株式会社 企画部 部長代理 笹森貴恭氏、国立大学法人三重大学 財務部財務管理チーム 調達室 調達室長/業務運営DX作業部会 エキスパート部会員 平山亮氏

「DXをする必要があった課題とは?」「その課題に対する解決方法」「DX化の解決Amazonビジネスがどう役に立ったのか」という3つの設問に対して、それぞれがフリップで回答し、その内容を解説した

北海電気工事株式会社では、Amazonビジネス導入により購入1件あたりの作業工程が20工程から7工程に減り、年間最大約800万円のコストダウンを見込んでいるという

カスタマーパネル②「効果を実感する購買改革のすべてを徹底解剖」

Amazonビジネスによる購買改革を実現した例を紹介する2つ目のカスタマーパネルは、保育、人材派遣、介護などを提供するグループ会社・ライク株式会社と、21業種・52業態のビジネスを采井している多角化企業・オカモトグループの購買業務を担当する株式会社オカモトホールディングス。

一人おいて、左からライク株式会社執行役員 経営企画部長 兼 グループDX担当の中西洋太氏、株式会社オカモトホールディングス 総務部マネージャーの大谷健氏

通常、新しい便利なシステムを導入する場合、現場の抵抗を受けがちだが、ライク株式会社執行役員 経営企画部長 兼グループDX担当の中西洋太氏は、「アマゾンの場合、インターフェイスになじみがあるので『使い方がわからない』『移行が面倒』という声が非常に少なくて済んだ。導入時のコミュニケーションとしても、『皆さんが使いやすいECに移行する』というと、すぐに納得してもらえた」と語った。

株式会社オカモトホールディングスの大谷氏は、「購買コストは、経常利益に直結する」ことを高く評価。「弊社ではAmazonビジネスの導入により、人件費も含めて、約800万円の経費が削減できた。今、中小企業での経常利益の平均は約3%、大企業でも4%ほどといわれている。つまり、この削減分を売上げで出そうとすると、2億6千万円くらいの売り上げが必要だということになる」(大谷氏)

Special Session「人間とAIの『ハイブリッド』時代 次にすべきDXは」

カンファレンスを締めくくるスペシャルセッションは、「人間とAIの『ハイブリッド』時代 次にすべきDXは」がテーマ。専門家として、東京大学大学院情報学環教授 暦本純一氏と、青山学院大学 地球社会共生学部 教授 学部長で、アバナード(株) デジタル最高顧問で音楽家としても活躍している松永 エリック・匡史氏が登壇。さらに聞き手として、アマゾンジャパンの石橋憲人氏も再登壇した。

左から、アマゾンジャパン Amazonビジネス事業本部 事業本部長 石橋憲人氏、東京大学大学院情報学環教授 暦本純一氏、青山学院大学 地球社会共生学部 教授 学部長 /アバナード(株) デジタル最高顧問/音楽家 松永 エリック・匡史氏

暦本氏はAIの歴史を産業革命になぞらえて、まだその歴史が始まったばかりであることを強調。「産業革命が何十年もかかって進んだのに比べて、AIによる革命は数カ月でも起こり得る」と、変化のスピードの速さ、影響の大きさを強調。松永 エリック・匡史氏はAIの自動翻訳機能の進化によって言葉の壁がなくなり、英語圏に有利だった情報量の世界標準が変わる、特に言語で不利だったアジアに有利な変化が訪れるだろうと予測した。


記者プロフィール

桑原 恵美子

フリーライター。秋田県生まれ。編集プロダクションで通販化粧品会社のPR誌編集に10年間携わった後、フリーに。「日経トレンディネット」で2009年から2019年の間に約700本の記事を執筆。「日経クロストレンド」「DIME」他多数執筆。

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