ECサイトの改善点まとめ。事例を交えて売上アップにつながるポイントを解説
ECサイトの売上を向上させるためには、まず現状の課題をデータに基づいて正確に分析することが不可欠です。どこに問題があるのかを数値で可視化することで、改善すべきポイントが明確になります。
本記事では、ECサイトの数値分析の手法や、カート離脱率の低減、CVR(コンバージョンレート)の向上をはじめとする具体的な改善施策を解説します。また、実際に成功を収めた事例もご紹介し、実務に役立つ知識をお届けします。
ECサイトの現状に悩む方が、即実行できる課題解決策をぜひ参考にしてください。
ECサイト改善は「売上の因数分解」から
売上が思うように伸びない状況を改善する際に重要なのは、「売上そのもの」を目的に施策を練らないことです。売上を構成する要素を細かく分解し、それぞれの数値を改善することが成果を上げるための効果的な考え方です。
たとえば、月間売上が300万円のECサイトは以下のように売上を分解できます。
<売上の分解例>
売上 = 訪問者数 15,000人 × 転換率 2% × 平均注文額 10,000円
この分解をもとに、具体的な改善策を考えることが可能です。
ECサイトの売上構成要素の一例
ECサイトの改善ポイント・KPI
具体的に改善を図る際は、各指標を階層構造で整理すると、対策すべきポイントが見えやすくなります。上位の目標を達成するために、下位のKPIがどのように関連し、影響を与えるかを視覚化することが大切です。
以下は、ECサイトのKPIツリー例です。
それぞれの指標をKPIとして設定し、各担当者が改善を繰り返すことで、結果として売上が改善していきます。
ここで、多くのECサイト運営者がKPIとして設定している主要な指標を紹介します。なお、階層は考慮せず、頻出のものをピックアップしています。
訪問者数(UU)
ECサイトの売上向上には、まずターゲットユーザーの訪問者数を増やすことが重要です。訪問者数は、Google Analytics 4(GA4)などの解析ツールを活用すれば簡単に確認でき、流入状況や流入元の分析が可能になります。
訪問者数を増やすには、複数のアプローチを組み合わせる必要があります。たとえば、検索エンジンやSNS、広告、リファラル(他サイトからの流入)など、多様なチャネルからの流入を総合的に強化することが求められます。
検索エンジンを通じた流入を強化する場合はSEO(検索エンジン最適化)、広告を活用する場合はGoogle広告やSNS広告が有用です。
また、既存の顧客が再訪問するよう促す施策も、訪問者数の維持や増加に役立ちます。リピーターの割合を高めるためには、購入後のフォローやメールマーケティング、ポイント制度などの活用が効果的です。
転換率(CVR)
サイトを訪れた人のうち、実際に商品を購入した人の割合を示す重要な指標です。たとえば、1,000人が訪問して20人が購入した場合、CVRは2%となります。ECサイトの平均的なCVRは1~3%程度とされ、扱う商品やサイトの設計によって大きく変動します。
CVRの改善は売上向上において欠かせない課題です。そのためには、商品の魅力を直感的に伝えつつ、スムーズな購入体験を提供することが重要です。
平均注文額(AOV)
平均注文額は、1回の注文でどれだけの金額を購入してもらえているかを示す指標であり、月の売上が100万円で注文件数が200件なら、平均注文額は5,000円と計算されます。
平均注文額を上げるためには、商品単価を上げるか、1人の購入点数を増やす必要があります。しかし、商品単価は仕入れ価格や競合との兼ね合いもあり、簡単には調整しづらい部分です。そのため、実現性が高いのは、1人あたりの購入点数を増やす工夫です。
たとえば、関連商品の提案として「一緒に買われている商品」を表示することで、ユーザーが複数商品を購入しやすくなります。また、「3個まとめ買いで10%OFF」のような数量割引を設定することで、購入点数を自然に増やすことができます。
LTV(顧客生涯価値)
LTV(顧客生涯価値)は、顧客1人が生涯にわたってECサイトにもたらす売上金額を予測した指標です。この値は、顧客との関係性の深さや購入頻度、平均注文額などの要素を反映しており、ECサイトの収益性を長期的に把握するために重要です。
たとえば、1人の顧客が毎月3,000円を使い、平均して2年間買い物を続けた場合、その顧客のLTVは3,000円 × 24ヶ月で72,000円と計算されます。この指標は、新規顧客を獲得するための費用(CPA)と比較することで、マーケティング施策の収益性を評価する際にも活用されます。
直帰率・離脱率
直帰率は、サイトに訪れたユーザーが1ページ目だけを閲覧し、ほかのページを見ずにすぐ離れてしまう割合を示します。直帰率が高い場合、ページ内容がユーザーの期待に合っていない可能性や、サイトの第一印象が良くない可能性が考えられます。
離脱率は、商品ページやカートページなど、購入フローの途中で離脱したユーザーの割合を表します。この指標は、ユーザーが購入を断念した具体的な地点を特定するのに役立ちます。
一般的に、ECサイトでは直帰率が50%以上、離脱率が70%以上になると注意が必要とされます。直帰率が高い場合、サイトの構造やデザインがユーザーの期待に合っているかを確認することが重要です。一方で、離脱率が高い場合は、購入フローのどの部分がボトルネックになっているのかを分析し、具体的な改善点を見つける必要があります。
再購入率・リピート顧客比率
再購入率は、一度購入した顧客が再び購入する割合を示す指標です。一方、リピート顧客比率は、全購入者に占める2回以上購入した顧客の割合を表します。この2つの指標が高いほど、安定した売上が期待できるとされています。
これらの指標は、新規顧客の獲得に加え、既存顧客との関係性をどれだけ維持できているかを示す重要な指標です。ECサイトをオープンしたばかりの段階では新規顧客の獲得に注力することが一般的ですが、継続的な売上を確保するためには、再購入率やリピート顧客比率の向上が欠かせません。
業界や商品によりますが、再購入率は30%以上、リピート顧客比率は40%以上を目標とするのが一般的な目安とされています。
CPA(顧客獲得コスト)
CPAは新規の顧客1人を獲得するためにかかった広告費用を表します。
例えば、10万円の広告費用で50人の新規購入者を獲得した場合、CPAは2,000円となります。商品の利益率にもよりますが、一般的にCPAは商品単価の15%以下に抑えることが望ましいです。
売上目標を達成していても、CPAが高い場合は利益率が低くなります。
広告費用を抑えるには、広告の効果測定を正しく行い、成果の出ている広告媒体に予算を集中させるのが基本です。
また、自然検索からの集客を増やすSEO対策や、SNSでの情報発信、既存顧客からの紹介促進など、広告に頼らない集客方法を取り入れることで、CPAは抑えられるでしょう。
売上要素 | 関連する指標 |
---|---|
訪問者数(UU) | 流入チャネル別訪問者数、 オーガニック検索流入数、 広告クリック数、新規訪問者数とリピーター数 |
転換率(CVR) | LPの直帰率、カート離脱率、 商品ページの閲覧数、 商品ページの滞在時間 |
平均注文額(AOV) | 商品単価、購入点数、バンドル(セット販売)の利用率、 カート追加後のアップセル成功率、割引やキャンペーンの利用状況 |
あくまで一例ですが、このようにして売上を分解することで、改善すべき具体的なポイントが見えてきます。
ECサイトの改善施策を6つ提案
ECサイトの売上を伸ばすには、データ分析で特定された課題に対し、具体的かつ実践的な改善策を講じることが重要です。
ここでは、多くのECサイトでぶつかりがちな共通の課題に対する、実践的な改善案を紹介していきます。
「商品の見つけにくさ」の改善案
顧客が欲しい商品にたどり着けないことは、致命的な機会損失です。まずサイト内検索の改善から始めましょう。
検索窓は画面上部の目立つ位置に配置し、入力補助機能をつけることで入力ミスを防ぎます。また、「赤いセーター」「Mサイズのワンピース」といった自然な言葉での検索にも対応できるようにするのが好ましいでしょう。
複数の商品ジャンルを取り扱っている場合は、商品カテゴリーの見直しも必要です。
「レディース」「メンズ」といった基本分類に加えて、「新着商品」「人気ランキング」「季節特集」など、顧客の買い物目的に合わせた分類を追加します。さらに、「3,000円以下」「送料無料商品」といった価格帯や特典での絞り込みも効果的です。
また、AIを活用したレコメンド機能の導入も効果が高い手法です。レコメンド機能を搭載すれば、過去の閲覧履歴や購入履歴に基づいた商品提案が可能になり、顧客は自分に合った商品をさらに見つけやすくなるでしょう。
「情報不足な商品詳細ページ」の改善案
商品詳細ページは購入の決め手となる重要なページです。
商品画像は正面だけでなく、横や背面、拡大写真など最低6枚は用意しましょう。衣類なら着用イメージ、食品なら盛り付け例、家具なら設置イメージなど、実際の使用シーンが分かる写真を掲載することで、顧客の購入意欲を刺激できます。
商品説明文には、素材や機能に加え、商品のユニークな特徴や具体的な使用シーンを盛り込むと効果的です。
また、サイズ表やカラーバリエーション、在庫状況も明確に表示します。加えて、実際に購入した顧客のレビューを掲載することで、商品の評価や使用した感想を共有できます。
「高いカゴ落ち率(カート離脱率)」の改善案
カートでの離脱率を下げるには、購入手続きの簡素化が重要です。多くても商品画面から3ステップ以内に収めることをおすすめします。
会員登録は購入後でも可能にし、必須入力項目は最小限に抑えましょう。住所入力には郵便番号からの自動入力機能を設置し、スマートフォンでの入力も考慮して文字サイズや入力欄のサイズ調整も重要です。
支払方法は、クレジットカード、コンビニ支払い、後払いに加え、PayPayやApple Payなどのデジタルウォレットも検討すると効果的です。複数の決済方法を用意することで取りこぼしを減らせます。
また、送料や支払手数料などの追加費用は、早い段階で明示することで顧客の不安は解消されます。
また、カートに入れた商品は一定期間保持されるようにし、後から購入を再開できる仕組みも効果的です。
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「低いリピート率」の改善案
リピート率を高めるには、初回購入時の顧客体験を“良いもの”にすることが大切です。
まず、商品の梱包は丁寧に行い、お買い上げお礼のメッセージカードを同封すると好印象です。また、商品の使い方や組み合わせ方のミニガイドを入れると、顧客は高い付加価値を感じてくれるでしょう。
購入後のフォローメールでは、商品の使用方法や保管方法をアドバイスし、困ったときの問い合わせ先も明記しておきましょう。
会員向けの特典として、ポイント制度や会員限定セールを実施するのも有効です。
さらに、リピート購入を促進するために、サブスクリプションモデル(定期購入サービス)の導入も検討しましょう。消耗品や化粧品、食品などのカテゴリーとは相性が良いです。
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「不十分な顧客対応」の改善案
顧客からの問い合わせ対応は、ブランドの印象を大きく左右します。
まず、注文状況や配送状況を24時間確認できるマイページが必須です。同時に返品・交換の方法や、よくある質問と回答も分かりやすく掲載しましょう。
問い合わせ窓口は、メールだけでなくチャットボットを導入することで、即座に回答できる体制が整います。チャットボットにAIを活用すれば、過去の問い合わせ履歴やFAQデータを基に、パーソナライズされた回答を提供できるようになるので顧客満足度向上につながります。
また、商品到着後にお客様アンケートを実施し、接客や配送に関する満足度を把握すれば、改善施策が見えやすくなります。顧客対応の品質を上げることは、口コミでの評判向上にもつながります。
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「低品質ページ(表示の遅さなど)」の改善案
ページの読み込みが遅いと、顧客はストレスが溜まりサイトから離れてしまいます。特に画像の多いECサイトでは、表示速度の改善が重要です。
まず、商品画像は適切なサイズに圧縮し、Lazy Load(遅延読み込み)を活用することで、無駄なデータの読み込みを防ぎ、ページの速度を最適化しましょう。
スマートフォンユーザー向けには、画面サイズに適した画像を配信することで、無駄なデータ通信を削減できます。
また、ページ全体の構造も見直すことが必要です。メニューやボタンの配置を整理し、顧客が直感的に操作できるよう工夫しましょう。文字の大きさや行間を調整することで、読みやすさを向上させることも重要です。
表示速度と使いやすいデザインを両立することで、サイト全体の品質を大幅に向上させ、顧客満足度が高まります。
ECサイトの改善事例5選
実際のECサイトの改善事例を見ることで、具体的な改善方法やその効果を理解できます。業界や商品特性に応じて効果的な施策は異なりますが、それぞれの事例には、ほかの業界にも応用可能な参考ポイントが多く含まれています。
ここでは5つの改善事例を紹介します。
事例1:アパレル業界「アダストリア」の顧客対応改善
カジュアルファッション専門店チェーン「アダストリア」は、AIビジネスメッセンジャー「チャネルトーク」を導入し、業務効率化と顧客満足度向上を達成しました。
チャットボットを活用することで、有人チャットの問い合わせ件数を最大で50%削減し、チャットボットが88%の自己解決率を達成。
これにより、人的リソースの大幅な削減と、顧客対応の質の向上を実現しています。
参考:アダストリア、チャネルトークの導入により大幅なリソース削減を実現。チャットbotの自己解決率は88%を記録|チャネルトーク
事例2:食品業界「ベースフード」のリピート率改善
食品スタートアップのベースフードは、オンラインコミュニティ「ベースフードラボ」を活用し、顧客の声を商品改良に反映する仕組みを構築しました。
「甘いパン以外が欲しい」という要望を受けてカレーパンを開発し、その後「生地が硬い」とのフィードバックをもとに、ふっくら感を高めてカレーの量を増やすリニューアルを実施。
これにより、顧客満足度が向上し、2カ月以上の購買継続率が2年間で3ポイント以上向上しました。
登録者約3万5,000人の投稿から得られるアイデアと双方向の交流が、リピート率の改善と商品開発の成功につながっています。
参考:ベースフード、ファンサイト発で商品改善|日本経済新聞
事例3:化粧品業界「資生堂」のページ品質改善
資生堂インタラクティブビューティー(SIB)は、Salesforce Commerce Cloudの「コンポーザブルストアフロント」をIPSA公式サイトに導入し、モバイルデバイスでのユーザー体験を大幅に向上させました。
React/Node.jsを活用したProgressive Web App(PWA)により、ページの初期表示速度と遷移速度を大幅に改善。ネイティブアプリに近い操作性を提供し、モバイルユーザーへの快適な体験を実現しています。
また、段階的な導入アプローチにより、コストやリスクを抑えつつトップページの刷新を完了させ、段階的に全ページに拡大していくそうです。
出典:Salesforce Commerce Cloud のコンポーザブルストアフロントをIPSA 公式サイトに採用|資生堂インタラクティブビューティー株式会社
【担当者の声】ECサイトの改善に取り組んだ人の口コミ
ECサイトの改善は、実際に取り組んだ担当者だからこそ分かる発見や苦労があります。
SNSやECサイト運営者向けコミュニティから、実際の声を集めてみました。成功事例だけでなく、失敗から学んだ教訓も含めて紹介します。
改善に成功した人の声
実際にECサイト改善で成果を出した担当者からは、具体的なノウハウが寄せられています。
アパレル担当のAさん(28歳)は「商品レビューの★4以上を目立つ場所に表示したところ、購入率が1.5倍になりました」と語ります。食品ECのBさん(35歳)からは「毎朝8時の商品写真更新にこだわり続けた結果、鮮度の良さが伝わり、客単価が3割上がりました」という声も。
コスメECのCさん(32歳)は「お客様からの問い合わせ内容をデータ化し、よくある質問をサイトに掲載。問い合わせが半減し、接客時間が確保できました」と成功体験を語っています。
改善に失敗した人の声
雑貨ECのDさん(30歳)は「広告予算を増やして集客は増えたものの、商品ページの改善をしていなかったため購入率は変わらず、赤字になってしまいました」と振り返ります。
アパレルECのEさん(41歳)からは「値引きキャンペーンで売上は上がったものの、安易な割引で客単価が下がり、1年後には元の売上に戻ってしまいました」という報告も。
日用品ECのFさん(38歳)は「担当者1人で改善を抱え込んでしまい、現場の意見を聞かずに進めたため、かえって業務が非効率になってしまいました」と語っています。
効果的なECサイト改善には、ECコンサルや代行の活用もおすすめ
ECサイトの改善は、多くの専門知識と時間が必要な作業です。社内の担当者だけで取り組むと、最新のトレンドやノウハウを取り入れづらく、また日々の運営業務との両立も難しくなります。
そんなとき、ECコンサルタントや運用代行会社の活用がおすすめです。
改善実績の豊富なコンサルタントは、業界特有の成功事例や失敗例を熟知しており、自社に最適な改善プランを迅速に提案してくれます。
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