成功事例から学ぶ。手堅い海外進出をするための実践的 <br> 5ステップ〜ソニーペイメントサービス・セミナーレポート

ECのミカタ編集部

目的意識が高い来場者が多く、熱気にあふれる会場

 ソニーペイメントサービス株式会社(代表取締役社長 中村英彦 以下、ソニーペイメントサービス)は、「成功事例から学ぶ。手堅い海外進出をするための実践的5ステップ」を開催した。
 「来場者の話す内容も、以前は目的が漠然としたものも少なくなかったが、最近は、進出する国を明確に口にする等、目的意識が高まっている様子」と同社営業部門 大倉 悠氏。「今回、初めて日本リサーチセンター様が講演メンバーに加わったのも、そうした背景を受けて、より具体性を帯びたものにしたかったから」(同氏)と、語り、同社の想いと、来場者の関心の高さを裏付けるように、申し込みも多く会場は満員で熱気を帯びていた。

講演者は、下記の通り。

◼︎海外ECビジネス、はじめの一歩。越境ECで失敗しないための「事前リサーチ」とは?
株式会社日本リサーチセンター 営業企画本部 エグゼクティブリサーチャー
安藤 雅登 氏

◼︎越境ECで成功した3社の事例から読み解く「海外マーケットで成功するための準備とIT戦略」とは?
株式会社アイブイピー 取締役
笠原 直樹 氏

◼︎知らないと損をする?!越境ECで失敗しないための「外貨決済」の選び方とは?
ソニーペイメントサービス株式会社 営業部門 営業企画部長
齋藤 直 氏

◼︎オットージャパンのフルフィルメントサービス~海外物流の事前確認・留意点~
オットージャパン株式会社 フルフィルメントサービス・物流部門
部門長付営業開発長・シニアコンサルタント
勝井 武二 氏

◼︎越境EC成功のために必要な海外検索エンジンマーケティング
株式会社インフォキュービック・ジャパン 代表取締役
山岸 ロハン 氏

越境ECにおいて、事前リサーチで忘れてはいけないこと。

越境ECにおいて、事前リサーチで忘れてはいけないこと。

 株式会社日本リサーチセンター(代表取締役社長 鈴木 稲博 以下、日本リサーチセンター)安藤雅登氏は、まず「企業で調べられる事と専門家に頼むべきものを明確に峻別した上で行動するべき」という点を強調した。「進出予定国の政治、経済、人口、宗教」といった部分は、自社で調べ、国の背景などを判断した上で、明確な事業計画を自分達で立てる。専門家を活用するのは、そのあとにしたほうが、専門知識を無駄なく的確に引き出せ、彼らの力を存分に引き出せるからだ。
 経済産業省でも、日本企業の海外事業活動の現状、および海外事業活動が関係する国にどんな影響を与えるのかについて「海外事業活動基本調査」で把握できる。ここで、自分達の越境ECにおけるベースや指針を決めてみることが大切、としている。その他にも、海外の情報であっても、中国の「駐日本国大使館経済商務参事処」、国際機関の「日本アセアンセンター」等、日本語で情報提供している機関は多い。
 より具体的な、自社の商品、サービスに関わる市場情報については、日本リサーチセンターに調査を依頼すると良いだろう。The WINとの連合により、70カ国以上の国々との独立系調査会社とネットワークを結び、現地調査会社の得意分野を見極めテーマに応じて最適なパートナーを選定しデータを導きだしてくれるのだ。

成功事例から学ぶ、越境ECで必要な準備

 株式会社アイブイピー(代表取締役 縄谷正明 以下、アイブイピー)笠原直樹氏は「アジアは伸び率も高く、世界一のマーケット。日本は恵まれた環境にある」と強調した。ECで使用するデバイスも「世界的にはPCは鈍化傾向にあるが、アメリカとアジアでは地域で異なる。アジアのほうがスマートフォン重視の流れが強く、アメリカにおいてはどのデバイスが重用されているかは、業界によって異なる」と説明、今の潮流を伝えた。
 ECサイトでは、同社で取り入れているERSというECサイトの構築パッケージを、例にとって解説。某大手おもちゃメーカーでは、その販売エリアは英語圏、中国本土、香港、台湾であり、これらのエリアに対しては英語と中国語でコミュニケーションを取れる顧客の獲得が重要とした。サイトもその点を配慮した構築となっているということを、具体的なサイトの画面を表示し説明した。
 更に、越境ECが実際に店舗にもたらすメリットについて(1)英語はあらゆる国に浸透しているので、英語対応をさせている店舗様においては、事実上、世界対応となる。(2)現状、まだ日本製品の取り扱いは少ない為、ほぼ独占に近い形で提案でき、他企業に優位性を示すことができる。
 越境ECでの販売計画については、商品、サイト構成を踏まえた、ローコスト、ハイクオリティで構築するアイブイピーのシステムを活用して欲しいと胸を張った。

越境ECをやる上で避けては通れぬ「外貨決済」

次に登壇したソニーペイメントサービス齋藤直氏は、もう少し踏み込んで国内企業が海外向けに商品を販売した際の外貨決済に関して講演をおこなった。EC店舗等にとって外貨決済が必要になれば、同社を通してクレジットカードの海外向けの決済データをカード会社にプロセッシングして決済ができる。大前提として外貨決済については、事業者サイドで予め外国通貨の販売額を定める「MCP」と決済の都度外国通貨金額を確定させる「DCC」の2タイプがあり、「物販」「旅行サービス」等内容によって利用すべきものが異なる。「MCP」で言うならば、VISAやMasterCardで対象の決済通貨は約150通貨にも及ぶ。また、加盟代行契約という形で、海外サービス利用時における、サポートの対応提供時間や窓口の言語対応なども同社が窓口となり、事業者の不安を解消する。
 また一方で不正などへの対処についても言及している。同社には「決済代行AVSサービス」というものがあり、これはクレジットカードの利用者本人であることを確認するため、カード会社に登録されている郵便番号と住所の照合を行う(北米と英国対象)というもので、これによって大幅に不正を減少させることが可能だという。同社のEC事業での決済ノウハウは、海外決済サービスでもしっかり生かされている。

オットーのブランドから学ぶ、海外物流で事前確認しておくべきこと

 オットージャパン株式会社(代表取締役会長 兼 社長 兼CEO ベルンハルト・シェフラー 以下、オットージャパン)勝井武二氏は、受注管理、在庫管理、ピッキング、商品仕分け、梱包、発送に至るまでのフルフィルメントに注力して説明した。オットージャパンは、Ottoなどのブランドで、ワールドワイドに様々な商品を提案している世界最大の通販企業グループ。WEB、マーケティング、カスタマーサービス、ロジスティックス、マーチャンダイジングと様々な点に精通しており、フルフィルメントに関しても徹底されている。
 中国通販物流では、倉庫、配送面での準備がまず必要。倉庫の場所、配送範囲、配送数量、配送頻度、商品SKU(色、柄などのバリエーション)のチェックの他、配送のあり方も、個人向けなのか、BtoBなのかでそれぞれ代理店が存在し、受取場所が指定されているか等の配慮が重要だとした。また、商流の観点においても中国での品質表示法への準拠への対応と商品の配送に関しても、日本からの送付で行うのか現地での保管か等の確認をするよう促し、こうした要素をピックアップし、どこまでを自社でできるのか、他社に委ねるのかを事業者側が把握し進行すべきと説く。
 「店舗」「EC」「TV」「カタログ」等、媒体によってフルフィルメントのあり方は異なる。オットージャパンは、Otto、FABIAのブランドで培った、フルフィルメントのノウハウをもとに、倉庫の状況等に基づき、きめ細やかなアドバイスをすることができる、とした。

越境ECにおけるマーケティングの重要性

 最後に、売れるためには必要なこと、という部分に焦点を当てて講演をしたのが、株式会社インフォキュービック・ジャパン(代表取締役 山岸ロハン 以下、インフォキュービック)山岸ロハン氏だ。サイトへの流入で見落としがちなのは、国によって検索エンジンの影響力が異なることを挙げた。米国においては、Google72,17%、Yahoo!14.43%、Bing9.23%(2010年5月 調査会社Experian Hitwise調べ)、中国においては、百度72.9%、Google24.6%(2010年5月 調査会社 iresearch調べ)だという。検索での流入の現状を踏まえて、ユーザーを引き込むことを戦略的に意識することで、売上も変わってくることを強調。また、Facebookを使っての広告出稿も、同サービスが131カ国111カ国でトップシェアを誇っていることから、これからの越境ECにおいて効果的と指摘する。
 実際、Facebookを閲覧する人が、何に興味を示すのかを示す一例として、小田急ロマンスカーの海外向けのFacebookページでアップロードした、とある食べ物の料理の見せ方について触れた。一見すると料亭で見られるような高級な料理が良さそうに見える。しかし実際海外の人の多くが気に入って、Facebookを通じて友達に拡散したのは、街の商店街で並ぶような飾らない写真だった、という事実。「習慣や文化の異なる「日本人ではないユーザー」ということを前提に考える必要がある。また、サイト上の表現の仕方については訪問者の興味を引くコピーエディティングは勿論、写真のセレクトに至るまで相手が誰であるかを意識して工夫をしなければならない、と言及した。環境は違っても相手は今を生きる人であり、血の通った提案こそが効果につながる。そのために「相手を知る」ということの重要性を説いていたように思う。

 5つの講演のポイントとしては(1)ターゲットを決め調査をし、(2)商品を確定して、その商品を提案する上でサイト上で必要なことをチェック。(3)海外で決済すると決めたら、国内とどう違うのかを把握し、(4)それがどのような物流の形式で扱われることが、効率良くできるのか。そして、最後に(5)どのような仕掛けによって、売り上げに繋がるのか、というまさに初歩の段階から具体的な仕掛けの部分に至るまでを、各講演者がリレーするようにして5つの要素を滞りなく説明していた。来場者にとっては、基礎から応用までフォローしている同セミナー全体のクオリティの高さに、納得の様子だった。今後も、同社はこのシリーズを重ねるとしており、ソニーペイメントサービスの催すセミナーは、越境ECを考える人たちにとって、引き続き、欠くことのできない存在となるだろう。


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