【続報】グリー子会社が動画広告を電撃発表!その裏側

石郷“145”マナブ

動画はぼくら人の心をどれだけ動かすのか

 今まで、インターネット通販で、僕らは、動画の持つ可能性について、どう見てきただろう。Glossom株式会社(以下、Glossom)が、グリーのセミナールームで開催した「第1回 動画マーケティングカンファレンス」で、プレゼンを聞きながら、その可能性を想い、その説明を感慨深く僕は受け止めていた。

 いろいろ紹介された動画広告の例で僕が一番印象を受けたのは、とある車のメーカーのCMでのことだった。

 それは、車の中で幼き頃、高校生時代、大人になってから、結婚した時、子供が生まれた時、その時々父と娘の“親子のやりとり”を追う動画だ。ただそれだけのことでも、テキストでは伝えきれない、親の一貫して子供を思いつつも微妙な表情の変化と、時につれなく、時に素直に想いを返す娘の表情には、あったかい体温みたいなものを感じた。その上で、そのCMは、全く同じ場面を、敢えてスピンオフのような形で、父の視点からと、娘の視点から、で描いた動画も同時に作成していた。僕がまさにこれこそが動画の真骨頂だと思ったのは、この時だ。

 同じ場面でいるのに、その受ける印象はまるで変わっている。そのようにすぐに直感させるその力は、動画にこそできることだ。文章の魅力を誰よりわかっている私でも、この動画のわずか一瞬で伝える表現力と、人の心に染み入る温もりは、文章や一枚画像では到底できないと思った。

 わずか数秒、数分にこめられたメッセージは、その時間の短さとは裏腹に、ストレートに心に届くのだとすれば、より短い時間で、スマホ上で判断が迫られるような時代になりつつある、インターネット通販の世界で、そこで売られる商品を広めていくツールとして、動画はもっと活用されてもいいのではないか、と純粋に思ったのは、事実だ。

スマホ台頭の今、時代に取り残されないための動画

スマホ台頭の今、時代に取り残されないための動画左;ピンテ中村氏 右:江川氏

 では、なぜ、今動画を活用しようという動きがにわかに起こりつつあるのか。それは、いうまでもなく、インターネット環境の変化によるもの。かつては携帯電話だったのが、スマートデバイスとなり、今や動画を電車で観れるくらいに、簡単に手軽になったことが大きい。思うに、インターネットのイノベーションとは、デバイスの変化、通信速度の変化と隣り合わせ。今、動画の必要性が叫ばれるのは、そうした変化のタイミングにちょうど、動画というの技術がマッチしているのである。去年でもなく、一昨年でもなく、今このタイミングなのである。

 事実、マーケティングの効果があがってきており、Glossomの代表取締役 江川 嗣政氏の話によれば、「日本の動画広告市場は、この5年間で約16倍に膨れ上がっている。例えば、地方自治体の宮崎県小林市移住促進PRムービー「ンダモシタン小林」の広告では、終始登場人物がフランス語で喋っているようでいて、実は、宮崎で方言で話していたという動画ゆえのオチに締められていて、これがウケて、一気に多くの人に拡散され、話題を集めたという例もある」と話していた。動画がそのまま拡散されやすくなったというのもある。

 ネットはテキストだけの時代から画像重視となり、サイト上でも、自然派化粧品のLUSHのサイトなどがそうであるように、商品ページに自動再生される動画が付いていて、商品やブランドのイメージを伝えるといった事例も見られるようになった。

Glossom江川氏熱弁!なぜ今動画?グリー子会社が注目する理由

Glossom江川氏熱弁!なぜ今動画?グリー子会社が注目する理由

 話を戻そう。インターネット通販の世界においても、その波がもしかしたら、押し寄せてくるかもしれない。それをシンボリックに示す例として、江川氏はカタログ通販とテレビ通販をあげた。「これまで、カタログ通販が販売部数を落とそうとも、テレビ通販だけは落ちなかった。その理由として、ネットのインフラがまだ整っていなかったから、ではないか。ネットは既存メディアに強力に影響していて、カタログ通販のシェアの縮小は、ネット通販に影響を少なからず受けたものとも考えられる一方で、テレビ通販の競合となりうる、動画を使ったネット通販は、動画のインフラが整わないために、テレビ通販は伸びを落とさずに済んだのではないか」という持論を展開していた。もし、これから、ネットで動画を見ることが容易になれば、今までテレビ通販で購入していた人も、その手軽さで、動画を使ったネット通販で購入するようになるかもしれないと。

 それほどにまで、動画と通販との距離が近づけば、自ずと、ECとお客様を結ぶ媒体として、動画という選択肢が出てくる。Glossomの関連会社でグリーの子会社株式会社ピンテが提案するのは、まさに、そこでの動画を使った広告事業なのである。その名前を「WOOZ(ウーズ)」と言う。広告の製作はこのピンテが行う。

  「WOOZ」は、親会社であるグリーが培ってきたマーケティングのノウハウを活用。動画広告の企画立案からタレント、モデルをはじめとするインフルエンサ ーのキャスティングを含む製作を、最適な価格と納品スピードで行うというものだ。

ピンテの動画広告「WOOZ」は何をしようとしているのか

ピンテの動画広告「WOOZ」は何をしようとしているのか

 製作価格は数十万円ほどとの話もある。僕は、これは、大きな会社ではなくてもいいし、むしろ、大きな会社でなくても、こうやって動画の広告ができることの意味を想った。小さな会社でもきちんとだせる予算で、その予算に見合った動画の広告サービスが、費用対効果も含めて、成立させることができるか、受けられるかどうか、ここは見せどころだと思う。

 加えて、僕が着目したのが芸能人との連携だ。影響力のあるインフルエンサーと言われる人たちを上手に自ら作る動画の中に起用し、製作した動画をより発信力のある広告として育てていく姿勢だ。基本的には、テレビメディアでがんがん起用されている人たちとは限らない。

 動画広告という独自の環境の中で、その中で最大限の力を発揮できるそういう人たちのプラットフォームを作ることで、テレビメディアや雑誌などの既存メディアにとらわれない、タレントの育成ということも可能になるように思う。僕個人の意見にはなるが、出演させるタレントを、今でこそ売れっ子ではない、でもこれからの可能性を持った人というのは、実は多い。

 そういう方の可能性にかけて、起用すれば、低コストに抑えられるし、また、その広告がそのタレントの認知をあげるきっかけになって、お互いの認知が関係し合いながら、成長することもある。とすれば、多くの広告主にとって、適正な価格でまたビジネスができるような気もして、それは、ある意味、広告業界にも新風を起こすだけでなく、あらゆるところに新たな価値を生む可能性も秘めていると思うのだ。

 カンファレンス内で、初心に帰ると話す中村氏が、自分の原点である高校時代のユニフォーム姿で登場してきたときには、さすがに驚いたが、その言葉は、高校球児を思わせる熱いものもあった。お客様と同じ目線で、動画広告を“等身大”の提案をすることで、必ずしも、大手でなくとも、力と輝きを、ともに手にいれようという想いを感じた。「WOOZ」を通して、ピンテは出演者をあたたかく後押しし、そこでの素敵な仕草やメッセージは、見る者の心を“動”かし、それが行動へと駆り立て、いずれ世の中を“動”かすことになるだろう。動画時代の幕開け、彼らの一挙手一投足に注目だ。

構成:石郷“145” マナブ


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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