EC事業者も見逃せない、”再配達”増加問題の今
再配達が店舗に与える影響
近年、”再配達”に対する関心は増しており、物流会社だけでなくEC通販企業においても様々な取り組みが行なわれている。
再配達によって起こる問題としてはまず、配達の際に排出される二酸化炭素排出による環境汚染だ。国土交通省発表の26年度輸送機関別輸送分担率(トン数)を見ると、トラックなど自動車での貨物輸送が91.3%と大きな割合を占めている(出典:交通関連統計資料集)。また、ドライバー不足も深刻な問題となっており、再配達の早急な対応が求められている。
しかし、再配達が影響しているのは環境汚染やドライバー不足などの問題だけでは終わらない。EC通販事業者にとっても影響がないわけではない。
例えば、購入した商品が再配達となってしまった場合、自分の不在を理由に荷物が受け取れなかったとしてもやはり消費者の中には「面倒だ」という感情が生まれるだろう。そして、運送業者だけでなく、その商品を購入した店舗への印象も悪くなってしまう可能性がある。
消費者の再配達に対する意識は…?
国土交通省は「宅配の再配達に関するアンケート調査」を実施。「宅配の再配達の削減に向けた受取方法の多様化の促進等に関する検討会報告書」内での結果を見ると、再配達となった荷物の中、1回目の配達時間を調査したところ「午前中」が元も多く約35%を占めているが、ついで「把握していない」が約21%を占めた。また、不在となった荷物の約7割が時間指定をしていなかった。
また、1回目の配達で受け取れなかった理由について、「配達が来るのを知らなかった」が約42%で最も多く、次いで「配達が来るのを知っていたが、用事ができて留守にしていた」が約26%、「もともと不在になる予定だったため、再配達してもらう予定だった」が約14%と、いわば「後日における再配達の依頼を前提とした不在」が併せて4割を占めた。
「どのような方法であれば1回で確実に受け取ることができたか?」という問いに関しては、有人での受取方法としては「コンビニのレジ」の活用を希望する人が最も多く、「自宅付近のコンビニのレジ」が約7割、「勤務地のコンビニのレジ」が約2割を占めた(複数回答可)。無人での受取方法では約6割が「自宅付近のコンビニに設置されたロッカー」、約3割が「自宅付近の駅に設置されたロッカー」での受け取りを希望している。
また、主な自由意見として、「配達前に電話、メール等で事前通知がほしい」、「時間変更をできるようにしてほしい」といった声があった。
再配達に対する、各社の取り組み
では、そういった再配達に対して、運送業者はどういった対応をしているのか。ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便と電話やWEBでの再配達申し込みが可能なのは共通しているが、特徴的なのはヤマト運輸だろうか。
ヤマト運輸ではクロネコメンバーズに会員登録している場合はコンビニなど、自宅以外の場所で荷物を受け取ることができたり、荷物の到着が事前にわかる事前通知メール配信などのサービスを受けることができるようになっている。
また、他にも再配達を減らすための取り組みは多くの企業で行なわれている。
◆拠点受取
拠点受取で代表的なものは運送業者の営業所がまず挙げられるが、近年は運送業者のコンビニ配送が可能となり、大手モールを始め、独自ドメインの店舗でもコンビニ受け取りが導入されている。各モールと運送業者別のコンビニ受取の比較についてはこちら→(https://goo.gl/FeinX0)
コンビニ受け取りに比べ、まだまだ導入は少ないが、日本郵便の「はこぽす」やヤマト運輸が導入した、複数の事業者が共同で利用できるオープン型ロッカーなど、ロッカー型の拠点受取も増加している。
◆宅配BOX
通常、家に設置されている郵便受けは手紙サイズのものしか入らないことの方が多いが、郵便受けに入らないサイズの荷物を入れることができる専用BOXの導入が、主に集合住宅で導入されている。日本郵便では集合住宅で大型郵便受けを設置した人には手数料を支払うという取り組みも行われている(2017年3月31日まで)。
これには、再配達の削減だけでなく、住民から不在時の荷物を預かって欲しいと頼まれてしまったりするマンション管理組合の人々の問題解決や、デベロッパーにとっては新しくマンションを建てる際の、他にはない利便性という魅力付けにもなっている。
◆細かな時間指定
先日、アスクル株式会社がヤフー株式会社の協力のもと運営する一般消費者向けインターネット通販サービス「LOHACO」が「1時間単位の指定」「30分単位の配達予定時刻通知」「配達10分前のプッシュ通知(アプリ)」を新たなサービスとして導入することを発表。「午前中」「午後」などという大まかな分類ではなく、細かく指定することで、ユーザーの満足度を向上させるだけでなく、再配達を防止している。
◆スピード配送
Amazonの「Prime Now」や楽天の「楽びん」など、購入から短時間で配達されることによって、再配達の防止に一役買っている。Amazon「Prime Now」と楽天「楽びん!」の比較はこちらから→(https://goo.gl/Tas085)
再配達の削減、防止には国を挙げての対応がなされてはいるが、まだまだこれから、という印象が強い。とはいえ、配送時間を細かく設定することができたり、24時間営業しているコンビニでも受け取ることができるという、現代人のライフスタイルに合ったサービスは、これからますます普及していくにちがいない。EC事業者としても、消費者に対して可能ならば時間指定を求めることや、拠点受け取りを導入するなど取り組むことはできるかもしれない。