楽天 2015年度 決算発表!海外事業の撤退で見える理念
楽天が掲げた3つの指針にECの未来を見る
楽天株式会社(以下、楽天)は、東京・二子玉川のクリムゾンハウスにて、代表取締役会長兼社長 三木谷浩史氏が記者会見を行い、平成27年12月期 決算短信を発表した。
楽天の27年12月期の連結業績(平成27年1月1日~平成27年12月31日)は、売上収益7135億5500万円(前年期19.2%増)、営業利益946億8900万円(前年期同-11.0%)、税引前利益919億8700万円(前年期-11.8%)、四半期利益442億8000万円(前年期-37.1%)、親会社の所有者に帰属する12月期純利益444億3600万円(前年期-37.7%)、四半期包括利益合計額511億1600万円(前年期-58.7%)となる。
業績のハイライトとしては、連結売上収益が過去最高の+19.2%(前年同期比)であること、Non-GAAP営業利益(ノンキャッシュアイテムを除いた、過去との連続性を重視した営業利益)が+28.8%(前年同期比)と成長を見せたほか、グローバル流通総額が9.1兆円で+22.8%(前年同期比)、Ebates流通総額約50億ドルで+42.5%(前年同期比)、楽天カード取扱い高 4.2兆円で+20.2%増になっていることが挙げられるだろう。
また、今回の決算発表においては、主に、今後の戦略を「vision2020」と銘打って、そこに沿った形で、決算を振り返っているのが特徴だったように思う。
まず大きく分けて3つの指針として、strong、smart、speedというものを掲げ、楽天が話すところによれば、ここに絞ることで、安定的な収益を長期的に持続できるビジネスを確立しつつ、イノベーションができる土台を作り上げたい、としている。
では、strongとは何だろう。これについては、主に、自らの経済圏に関して触れている。楽天グループは、EC(楽天市場が業界1位)、トラベル(楽天トラベルが業界2位)、インターネット証券(楽天証券が業界2位)、クレジットカード(楽天カードが業界1位)と言う具合に、あらゆるジャンルでナンバーワンのシェアを握るようになっており、ここをベースに成長していくとした。
smartについては、ユニーク、かつニッチというジャンルでありつつも、収益源が見えているものに関して、強化していくものとし、具体的なところで言えば、Ebates(会員制のオンラインキャッシュバックサイト)や楽天マーケティングなどを挙げた。
speedについては、収益に関してはこれからではあるが、急成長しており、早めに取り組むべきものとしており、具体的には、ラクマ、楽天ID決済、楽天スマートペイなどを挙げた。70%以上のKPIの達成を目標としていくとしている。
こうした戦略をもとに、やや保守的な数値としながらも、その説明によれば、2015年は売上収益が7140億というところから、2020年には1兆7000億にしていくとした。また、Non-GAAP営業利益(ノンキャッシュアイテムを除いた、過去との連続性を重視した営業利益)に関しても、2015年で1300億円というところから、3000億円を目指すとしていく。インターネット通販事業に関しては、960億円の収益(経常利益)だったが、2020年については1600億円にしていく、としていた。
海外事業へのテコ入れと国内事業の注力するポイント
その上で、今回、楽天がこのvisionを掲げる背景には、改めて、先ほど3つの指針になぞらえ、そこにあてはまらないものについては、大胆に見直していくという覚悟を見せた。特にその動きは、海外事業において顕著に見られたように思う。
まず、アメリカに関しては、自社販売を中止にして、Ebatesとマーケットプレイスに力を入れていくとし、ブラジルに関しては、マーケットプレイスビジネスをやめてSaaS(必要な部分を必要なだけサービスとして利用できるようにしたソフトウェアの提供)だけにして、事業の選択と集中を行う。
東南アジアでも、その動きはあって、タイに関しては、マーケットプレイスを他社へ譲渡。インドネシアに関してもそれをクロージングしていき、その代わり、伸びている「ラクマ」に注力する。この理由として、地域的な消費者の行動、ロジクティックスの環境において、CtoCの方が向いているだろうと判断した結果としている。
楽天は、そうした戦略や方向性で推進し、国内市場に関しては、楽天の国内の流通総額を2,7兆円だったものを、2020年は5.2兆円にしていくと説明。その数字の脇を固める要因として、更なる顧客満足度の向上を挙げている。顧客満足度に繋げるために取り組む内容として、まずは商品の品質の向上。例えて言うなら、得点の低いものをつけたお客様には直接電話をして意見を伺い、それを店舗にフィードバックしていく話を披露した。
お客様の利点として、ポイント制度に関しても触れた。楽天におけるポイント制度の差別化要因としては、グループでのロイヤリティーが上がるほど、メリットがあるような形にある。例えば、商品を購入して、楽天カードを利用すればポイント4倍。さらに、楽天市場アプリを使えばポイント5倍、楽天プレミアムカードを使えばポイント6倍という具合に、楽天グループのスケールメリットを活かして、いろんな楽天サービスを使えば使うほどに、ポイント還元に繋げているということをわかりやすく伝えることで、顧客満足度をアップさせる狙いだ。
楽天は創業当初から、スピードを重視し、仮説と検証を繰り返し、確固たるビジネスを取り入れ、自らを変えて、成長させてきた。海外に対する積極的な方向転換は、まさにそんな楽天らしさがいまだ、あることを示している。すべては、店舗への想いを反映させ、消費者の笑顔に繋げるために。楽天は、また、失敗成功を乗り越え、2020年に向けて、出店店舗とともに、また大きく舵を切ったのだ。五輪とともに、素敵な花火をあげたいものだ。