LTV特集

~消費者をファンにするLTVの基本~
現在、EC業界は新規顧客の獲得を重視した施策に苦戦する企業が増え、既存顧客へのマーケティング、いわゆるLTVの向上が重要となっています。LTVを向上させるためには、顧客との良好な関係構築・顧客接点の多様化・ロイヤリティの高い顧客体験の提供など新規顧客とは異なる戦略が必要となります。本特集では、ECサイトのLTVを向上させるために、役立つパートナー企業や、LTV向上イベントなど、ECサイトのLTVをあげるために必要な情報をまとめてみました。

  • 1、なぜ今、LTVを重要視するのか
    現在の日本は、少子高齢化がますます進展し、小売市場は確実に縮小していく傾向にあります。また、アベノミクスによって日本経済が活性化したという評価がある一方で、経済成長率は必ずしも十分な伸びを示しておらず、消費も決して上向きとは言えない状況です。こうした厳しい環境の中にあって、小売業界は一層の経営努力を求められており、それはEC事業者にとっても無縁のことではありません。

    "以前ほど広告が効かない""CPAが上がっている""セール待ちの買い控えが増えた"というEC事業者の声は後を絶ちません。ECの黎明期においては、単に広告を出せば新規のユーザーを集めることができ、ショップを訪れたユーザーは、ECでの購入体験自体を楽しむ傾向もあり、集客したユーザーのボリュームに応じて一定の売り上げを確保することができました。しかし、ECでの購買が当たり前になり、競合ショップが増加の一途を辿る今日のEC市場では、広告の費用対効果は大きく低下し、大手のECモールなどで実施するセール時にはある程度売れるものの、割引販売なので利益率は悪化するという薄利多売を余儀なくされています。

    こうした環境下で、EC事業者が重要視する必要があるのがLTVです。新規顧客獲得を重視したマーケティング戦略では、広告コストが高くつきますが、いったん自社の顧客として取り込んだ既存顧客なら、上手なリレーションシップ・マーケティングによって、無駄なコストをかけなくても、売り上げの向上が可能になるのです。

    LTVとは
    Life Time Value(ライフタイムバリュー)のこと。日本語では「顧客生涯価値」と訳される。一人の顧客が、特定の企業(またはブランド、商品)を一生のうちでどれだけ購入するか、という概念。マーケティング戦略におけるコンセプトであり、一定の計算式によって具体的にマネタリーを算出することによって、マーケティング上の指標(KPI)としても活用できる。

    2、LTVを向上させるために
    当たり前のことですが、LTVを向上させるためには、既存顧客に、より高単価・高頻度で自社商品を購入してもらうことが必要です。そのためには、顧客との良好な関係性を構築・維持することが不可欠で、その考え方を体系化したのがCRMです。つまり、LTVを向上させるためにはCRM戦略が不可欠で、その戦略にそって、各種の施策を展開していくことが求められます。

    CRM戦略を進めるには、最初に顧客の見える化が必要です。そのためには、CRMツールやMAツールの利用も検討に値します。CRMツールに蓄積された顧客データを分析して、ある属性の顧客群は、A商品の購入後にB商品を購入する確率が高い、ということがわかれば、同じ顧客群の中で、"まだB商品を買っていない顧客"に絞って、プロモーションをかけるなど、効率のよい施策展開が可能になります。

    また、LTV向上のための具体的な施策としては、コンタクト・ポイント(顧客接点)の多様化が軸となります。従来はメールによるDM、郵送DMなどを活用するのが主流でしたが、SNSの普及により、ツイッター、フェイスブック、LINE、インスタグラムなどの活用はEC運営においても必須です。

    顧客の購買行動や、購入履歴などのデータを元に、どんな属性の顧客に、どんなコンタクト方法が有効なのかを分析的に導き出し、実行することで、ローコスト・ハイリターンを実現することも可能になるのです。

    また、LTV向上のためにCRM戦略を重視するようになると、新規獲得がおろそかになると考えがちですが、それは大きな誤りです。

    顧客創造はすべての企業にとって重要な命題です。一度、自社の顧客になったら、ずっと顧客であり続ける、ということはありません。必ず一定数の離脱は発生します。ですから、新規顧客創造のための取組みは続けなければなりません。

    しかし、LTVが向上すれば、新規獲得に投下できるプロモーションコストを増やすことができます。それにより、質の高いプロモーションを実施することもできるようになるのです。

    3、ロイヤルティを高める顧客体験を提供する
    LTVの向上を目指す上で、もうひとつ大切なのが、「ロイヤルティを高める顧客体験の提供」です。最近ECにおいても、いわゆる接客が重視されるようになってきているのは、こうした背景もあるのです。そのショップで、満足度の高い購入体験をした顧客は、「次もまた、ここで買おう」と考えます。そうした体験を繰り返すことで、顧客はロイヤルカスタマーとなり、より高いLTVを提供してくれるようになるのです。

    LTVの向上を目指す、これはまさに、競争が激化するEC市場で成長し続けるための大命題だといえるでしょう。