楽天ショップ店長が見た商売の本質~27歳、職歴なし無職の大逆転劇

ECのミカタ編集部

日大商学部で楽天タイアップ講義開催

 2016年10月、日本大学商学部 准教授 宇田 理氏の楽天とタイアップした講義が開催された。

 そこで語ったのは、27歳まで職歴なし無職だった佐々木 伸一氏。大逆転した彼の人生、そして商売の本質の話が教室に響き渡った。

「人生終わった」と語った男が歩んだ道

 「人生詰んだって思いましたよ…」

 そう語る佐々木氏。現在は、大阪で自転車グッズの卸売業を営む奥様の実家に婿入りし、EC部取締役マネージャーとして日々ECサイト「自転車グッズのキアーロ」を運営している。ECのミカタでは全10回のコラムを連載していただき、10月に最終回を迎えた。

(コラムはこちらから。https://www.ecnomikata.com/column/9195/
 ECにおいても人生においても学ぶ点が大変多いため、ぜひご覧いただきたい。

 27歳の時に実家の借金を3,000万背負うことになり、8年間通っている大学がある東京から、実家のある岩手県へと戻ってきた。戻ってきたといっても、無職で職歴なし。「人生詰んだと思いました。だって東京で人々の役に立つ仕事をするんだ、って意気込んでたから。それが実家に帰って借金返済するために働いて。でもまだその頃は2~3年で借金返済して、もう一度東京へ戻ってやるんだって思ってました。俺はまだいけるって。」

 働いて借金を返済するために仕事を探していたが、当時かかってしまった病気の影響もあり、まずはアルバイトからスタートすることにした。しかし雇ってくれるところが…ない。「27歳職歴なし無職って今まで何してたんだよって思いますよね。雇ってくれるところがなかったんです。」そんな佐々木氏だが、縁があって岩手では有名な日本酒造「あさ開(あさびらき)」のレストランにオープニングスタッフとして働くことになった。そこから接客の楽しさを知り、必死に働いたという。

 『30歳までに借金を完済して東京へ帰る』と夢を見た佐々木氏。借金は返済し終わった。しかしアルバイトからあさ開の社員として働き、2014年の結婚を機に大阪へ移り住み現職に至る。東京へは戻らなかったのだ。

 「結果的にあさ開で働けて良かったと思っています。本当に仕事が楽しかった。」そう佐々木氏は語る。あれほど東京に帰りたかった佐々木氏は、なぜ最終的にあさ開で働けて心からよかったと思ったのだろうか。それは働いた約10年間、あさ開で商売の本質を学べたことにあったのだ。そして自分の力をつけていくことの大切さも。

パソコンが使えないネットショップ店長生まれる

 あさ開は岩手では有名な日本酒造だ。地元では名が知れており、明治4年創業のため安定している。「アルバイトから社員にならないか?」と言われた時には、就職先の条件としては悪くないだろう、という気持ちで入社したという佐々木氏。

 しかし日本酒業界はそんな甘いものではなかった。日本酒の消費量は昭和48年以来、低下し続けている。そして現在は、一番売れていたときの7割減だ。そう、佐々木氏が安定していると思って入った業界は、衰退してきている業界だったのだ。

 業界の衰退とともに、あさ開の売上も下がっていった。そんな時、新しいことを始めようとECに参入することになる。「月5万でも10万でも売上の足しになるなら、ネットショップを始めてみようという話になったんです。そこで、誰かやってみないか?という話になったんですが、みんなめんどくさがって手が上がらず。しかしその中で空気を読めない人が1名、元気よく手を上げました。それが僕だったんです。(笑)」

 佐々木氏がEC担当をやりたかった理由は、パソコンが欲しかったからだという。当時借金返済中でお金がなかったため、会社がお金を払ってパソコンを学ばせてくれるなんて、という気持ちで手を上げた。そしてパソコンの使い方がわからない、楽天市場のネットショップ店長が誕生した。

 「ネットショップを始めてから、無我夢中で働きました。休みもいらなかったし、家に帰りたくなかった。だって新しいことをやればやるほど売上が上がるんですから。本当に楽しかった。」

 最終的にあさ開は、楽天ショップ・オブ・ザ・イヤーを6年連続受賞。あさ開は日本全国的に見ると知名度があるわけではなかった。しかし楽天市場の中で、一番日本酒を売るお店・銘柄へと成長したのだ。

佐々木氏が学んだ“商売の本質”とは・

 パソコンの使い方が分からないネットショップ店長。あさ開での10年間、何をしてここまでのショップへと成長させたのだろうか。その理由は言わずもがな佐々木氏の努力だった。楽天大学に通ったり、ECCと二人三脚で試行錯誤を繰り返した。その努力の結果なのだ。

 その中で佐々木氏は商いの大切な本質を学んだ。「お客さんに自分たちのネットショップで買い物をして喜んでもらう。その対価として安売りをせずに価値に見合うお金をいただく。これがあさ開で学んだ商いの本質です。そしてこの知識と経験があれば、なんの仕事をしていても生きていけるんです。」

 そう、佐々木氏が岩手に戻ってきて、あさ開で必死に働いた10年間。そこで商いの本質を学び、今ここで佐々木氏が登壇しているのだ。

 「大企業は安定しているから、と就職先に選ぶかもしれませんが、この先どうなるかわかりません。僕が入った日本酒業界が衰退していたように、未来の世の中はどうなっているのかわからないのです。だからこそ会社にぶら下がらずに、自分の実力や知識、経験を育てていくことが大切です。商売の本質を身をもって理解し、必死に頑張って自分のブランド価値を確立すれば、必然といい結果がついてくるのです。」と佐々木氏は学生へ語る。

 そして「僕はあさ開で働いて、お客さんを喜ばせて報酬をいただくという商売の本質を学ぶことができて良かったと思っています。岩手へ帰ってきた当時は東京へ戻りたかったですが、今はあさ開で働いてとても良い仕事に出会ったと感じています。」と続けた。


そして佐々木氏の現在は…?

自分ブランドで生きてゆく

自分ブランドで生きてゆく

 佐々木氏は現在、大阪にある自転車グッズを販売するネットショップ「キアーロ」でお客さんに向けて商品を販売している。そこでもあさ開で学んだ商いの本質を生かし、前年比200%を超える売上を上げている。そう、あさ開で経験を積んで自分ブランドを確立したことで、販売商材が変わってもその知識が生きてくるのだ。

 「企業ブランドにぶら下がらず、自分ブランドを確立することによって得られるものが3つあります。まず1つ目は自立、2つ目はプライド、そして3つ目が高収入です。お金は後から絶対についてくるんです。」

 もともと27歳まで無職、職歴なしだった佐々木氏。しかしあさ開と出会い、未知のインターネットの世界に入ったことで、商いの本質を学んだ。そうして知識と経験を積んで自分の価値を上げ、自分ブランドを確立したのだ。

 お客さんの喜びとお金を正当に交換するという商いの本質は、ネットショップも然りすべての職業に共通していることである。今回の講義を受けた学生の中には、佐々木氏によって未来を変えられた人もいるだろう。それほど身に染みる、熱い講義だった。どんなに大きな壁が立ちはだかっていたって、自分の努力次第でいくらでもその先の道を作ることができる。それを佐々木氏は身をもって実証している。


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