個人事業主から大規模まで対応!4PXが提案する越境EC戦略
越境ECに対するハードルが下がりつつある今、一つの国に対しての販売だけでなく、世界各国へ商品を販売したいというニーズが広がっている。しかし、そうなれば各国の物流倉庫や配送業者と契約を行わなければならない。そこで、世界26カ国に展開し、9カ国で通関サービスを提供する株式会社4PX EXPRESS JAPAN(以下、4PX)の代表取締役 謝郁安氏に、世界展開を目指すEC事業者はどのような戦略をとるべきなのか話を伺った。
越境ECがより身近になる4PXの通関サービス
「日本市場で販売されている商品は中国製が多くなっています。ですから、日本の企業様も中国で作った商品を日本に持ち込み、販売しているわけですが、越境ECの場合は日本に1回入れるとコストが無駄になりますし、直接海外に送った方が早いというお客様も多いのです。
しかし、米国のAmazon.comで販売したい、オーストラリアのeBayで販売したいというお客様も増えており、中でも販売国や利用者が多いことから、各国のAmazonで販売したいというお客様が増えています。しかし、Amazonのフルフィルメントセンター(FC)へ入れるには事前予約や港からの運送が必要になります。お客様は物流倉庫や配送業者などを自分で探さなければなりません。」
謝氏が話すように、各国の企業と契約を交わすとなれば、日本とは異なる言語や法律、文化がハードルとなる。
「弊社では世界26カ国に進出しています。そのうち、世界9カ国(米国、英国、カナダ、ドイツ、チェコ、スペイン、香港、日本、オーストラリア)へは我々の方で通関手続きが可能です。現地の港に着いてから港でAmazonのFCへ送るものと弊社の倉庫へ入れるものとを分けています。」
保管費用は30日間無料!在庫の回転率を上げる仕組み作り
9カ国で展開している4PXのFBA通関サービスだが、世界各国でAmazonのFCと4PXの倉庫に在庫を置くとなれば、その分コストが嵩む。しかしその課題に対しても、4PXは明確な戦略を持って解決策を提示する。
「我々の倉庫であれば保管費用は30日間は無料ですので、30日間で商品を売り切れば作業費と配送料のみです。EC販売で得られる利益は非常に少ないため、固定費を下げる工夫やプロモーションなどを積極的に行い、30日間で売れるようなご提案をしています。
ですから、最初は国外のAmazonで販売する分の在庫も日本国内に置き、それを海外で注文が入ったら弊社が発送。量が増えてきたら国外の倉庫にも在庫を置くという方が多いですね。
また、お客様が一番困るのは委託する荷物の最低ロット数だと思います。最小でもワンコンテナであったり、ワンパレットであったり。日本国内での物流業務も請け負っていますが、iPhoneケーブル100個程度しか在庫を持たないような個人事業主様から大手企業様まで幅広くお仕事をお受けしています。」
つまり、4PXに荷物を委託さえすれば、日本国内の物流から世界各国への配送までが可能になるということ。商材も小さなものから大きなものと、幅広く取り扱いが可能だという。
「日本向けの商品ですと最近は家具が多いです。日本の家具って高いのですが、中国製の家具はものすごく安くて、クオリティも非常にいい。家具も見てから買うのではなく、ネットで買われる方が増えており、ものすごく売れていますね。あるお客様ではソファーが1日に300個売れます。中国から日本に入ってきて、FBA倉庫に入れられないので、弊社の倉庫で保管します。AmazonのFCへ入れられない商品サイズのお客様でもしっかりと条件を守れば自社のAmazonのプライムマークをつけることが可能ですので、弊社のお客様はプライムマークが付いている方が多いですね。」
中国からヨーロッパ、世界各国への在庫輸送も自由自在
大手メーカー医薬品メーカーの中国越境EC向け商材も取り扱っており、ダブルイレブン(独身の日)を目前にした取材当時、4PXの大阪倉庫には中国への配送を待つ在庫が山積みになっているという。
「我々は中国の会社ですので、まずは中国でできないかなという相談が一番多いです。やはり中国越境ECは非常にハードルが高くて、競争が激しい。中国は市場が大きいので、どんな商品でも売れるだろうと思う方が多いのですが、中国の方々が自分で日本に来て仕入れをして売っているということが多いですし、利益率を非常に低くして売るので、なかなか対抗ができないというのが実情です。じゃあどうすれば良いのかというときに『この商品はこの国に合っています、別の国に売りましょう』という提案もしています。
弊社の株主はTmall Globalを運営するアリババです。ですから、お客様に言われるままに行うのではなく、市場のリサーチを行い、ダブルイレブンではどのくらい売れるのかという話もします。
また、弊社の場合は香港の近くに自社の保税倉庫を持っており、外国貨物として一旦申請をします。そうするとこの貨物は海外へどれだけ出してもいいんですね。香港を経由することでなるべく税金のかからないルートで中国へ発送することもできますし、商品に合った海外の市場への横持ちも可能です。
世界各国に倉庫を持っていると、売れる商品に偏りが出ることがあります。しかし、他国の消費者へ直送ができたり、輸出としてその国に持って行ったりという柔軟な対応が可能です。通常こうしたことをやろうとすれば、各国の物流会社と契約をするため、契約書だけでも何十枚になってしまいますが、弊社でしたら契約書1枚だけで全てが管理できるので、お客様にもよりスピード感のあるビジネスをご提供できます。」
こうした対応も他社との提携や委託などをすることなく、4PXが最初から最後まで対応してくれるということで、日本のEC事業者にとっても安心感は強い。
また、日々の在庫管理については1つのシステムで今自社の在庫が世界のどの倉庫においてあるのかの確認、そして倉庫への指示が可能となっている。
「システムは無料で提供しています。すでに自社の一元管理システムをお持ちの場合はAPI連携をし、注文が入った場合には一元管理システムから自動的に弊社のWMSに自動でオーダーが行くようになっています。日本でWMSのシステムを使うと、従量課金制だったりするのですが、弊社はそういったものもありません。我々はシステムを売るのではなく、物流業務を売っているわけですから、お客様には使いやすいシステムを使ってもらいたいのです。」
オリンピックは目前に。販路を拡大させる4PXの越境EC支援
「弊社が日本に進出してきた時は、日本から中国への越境ECビジネスが多くありましたが、できれば今後は中国だけでなく全世界へ貨物運送のお手伝いができればと思っています。
また、弊社ではオーストラリアとアメリカを中心に全世界に380店舗のオフライン店舗を持っており、そこで商品を販売していただくこともできます。お客様が商品のバーコードをスキャンして注文が入ったら、日本から発送することができるのです。」
もともとは中国国外にいる住む中国人向けに、中国在住時代に購入していたものを購入できる場所としてつくられたオフライン店舗ではあるが、日本の商品が現地でどれだけ売れるのかというテストマーケティングの場としても活用することができるという。
また、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控えた今、EC事業者に伝えたいことがあると謝氏は話す。
「オリンピックのいいところは世界中の人たちがこの国に来て、日本や日本の商品の良さを知ってもらえることだと思うんです。それにより、越境ECの幅は広がると思います。その時に商品を知ったものの、母国に戻ってしまったら買えないとなった時のことを考えなければなりません。
今、すでに物流倉庫さんに委託されている方は多いと思いますが、いざ次のステージへと行こうとした時、既存の倉庫だと『あれができない、これができない』という話をよく耳にします。しかし、システム投資はそう簡単ではありませんし、もしも世界に出て行くのであれば事前に準備をしなければいけません。越境ECの前に、国内だけでも大変だっていう方が多いですが、日本国内で売上が下がる前に動きだす必要があるのです。」