多くのEC企業が恐れる誤出荷!それを100%無くせる新技術とは?
手間のかかる梱包・封かんと送り状の貼り付け作業。しかし、梱包のオートメーションシステムは、データのズレによる誤発送の高いリスクを伴っています。そこで、管理ラベル(短ラベル)なしで100%ズレない封かん&ラベリングのシステムを実現させた株式会社タクテックの代表取締役社長の山崎 整氏にお話を伺いました。
常に予想の斜め上を行く!GASの次は『PaLS』
多くの物流現場に弊社の仕分けシステム"GAS(ガス/Gate Assort System)"が導入され、ピッキング業務の改善が行われてきました。そして次は物流においてボトルネックとなっている梱包・送り状貼り付け作業の完全オートメーション化を実現し、業務の大幅な時間短縮・省人化を図ります。
ただの封かんシステムは世界的にありますが、当社の『PaLS(パルス)』では"管理ラベル"を無くし、絶対にズレない仕組みを構築しました。
箱は封を閉じてしまうと、中の商品が何なのか・誰の箱なのかがわからなくなってしまいます。そのため、封かんした箱とそれに貼る送り状のズレを防ぐために使われているのが、封かん前に箱の横に貼る小さなバーコードの管理ラベルです。
これまで世界的なEC企業でさえ誤発送の問題を起こし、多くのECショップが試行錯誤を繰り返してたどり着いた方法です。それが世界標準で、それ以外に方法がないと思われていました。
しかし、低コストの梱包ラインでは管理ラベルを使わず、流れてきた箱に順番に送り状を貼っている場合もあります。ですが、もし途中で誰かが荷物を抜いたり、なんらかの機器トラブルで荷物がズレたりすると、すべての荷物の送り状がズレてしまう。その日の最後の荷物でズレに気づいたら、当日の朝から処理してきた、何万件もの箱が全てズレているという可能性があるということです。実際にそのような事故がかなり起きているのです。
実は1年以上前、弊社がある取引先企業に封かんラインを2ライン導入した際に、出荷ミスが起こってしまいました。管理ラベルを使用するタイプの、旧型の『PaLS』です。
封かん前に箱の中の納品書のバーコードを読み込み、そのバーコードデータと同じ番号の箱に管理ラベルを貼る。それで箱と送り状の整合性を担保していたはずなのに、納品書を読んでから管理ラベルを貼るまでの間でズレてしまいました。この時は30件程度の出荷ミスでしたが、もしかしたら千件、2千件とミスが起こる可能性もありました。
結局そのラインは『このままでは使えない』ということで、社員が張り付いて運用に立ち会い、チェックをすることで再稼働させました。その後、納品書を読むスキャナーをもう1つ増やして、管理ラベルを貼った後に改めて納品書と管理ラベルの合致確認の照合ゲートを増設し、その後に封かんするよう改造したのです。
このミスが『PaLS』を開発するきっかけでした。この失敗がなければ、このシステムは生まれていなかったかもしれません。
『PaLS』はどうやって短ラベルを無くせたのか
これまで、封かん機とオートラベラー、送り状の制御はそれぞれが独立したブラックボックスとなっていました。そこで、封かん機のメーカー・オートラベラーのメーカーと共同開発し、連携して一体化した仕組みを作りました。
決められたプログラムに従ってコントロールするシーケンサー(PLC)を1つにして管理ラベルを無くしたい。そう、封かん機メーカーに話をしても、最初はあまり理解されませんでした。製造業と物流業では文化も言語も違う。でも私の熱意と物流の可能性を信じて手を組んでくれました。
商品を切り出した後、『PaLS』では
①開いた状態で流れてきた箱の中の納品書をスキャン
②ランダム封かん機でサイズの異なる箱も自動封かん
③送り状を自動貼り付け
④貼り付け失敗を防ぐためのチェックスキャン
というシンプルな4つの工程に集約しました。これにより機長が今までの12メートルから6メートルにまで短縮されました。物流センターの柱のスパンはだいたい10~11メートルですが、柱を避けてラインを構成すると柱の間がデッドスペースになる。『PaLS』は柱と柱の間のデッドスペースに置けるのです。デッドスペースにも倉庫代を支払うことになるので、この違いは大きいですね。
PLSとPCがライン上を移動していく箱の位置を常に管理し、万が一ズレることがあればラインが停止。ラインを全部クリアにしないと復旧できない仕組みであるため、『PaLS』は「100%ズレない」と断言できるのです。
『PaLS 』は1時間あたり600~900個を封かんできます。人の手では30〜50個なので、15人分くらいの人手が削れる。1~2年で投資回収できる計算です。
封かんとラベリングはさらなるステージへ
物流業界では85~90ミリの高さのダンボールが多いですが、『PaLS』のランダム自動封かん機はそれに加えて75ミリまで対応しています。送料が高騰して小型の箱の需要が増えているのに伴い、今年の秋には宅急便コンパクトやゆうパケットのサイズにも対応する予定です。いずれは20ミリのネコポスにまで対応できるようにするつもりです。
開発に着手してから1年以上を要しましたが、今はセンサーの数を減らしてもっとシンプルにできないかと、すでに次の段階に向かって進めています。
導入企業様の満足度も高く、追加導入の注文も着々と増えています。人の手での封かんによる能力のバラツキや人手不足、コスト削減、出荷ミスの防止など、物流に関するさまざまな問題がありますが、『PaLS』はそれらをまとめて解消できるECの必需品になるのではないでしょうか。
<「ECのミカタ通信vol.18」より転載>