D2C・サブスクを実践するスナックミーに極意を聞く

西村 勇哉

23687_thumbnail_snaqme_thumbnail.jpg

サブスクリプション・D2C。ECのみならず、小売業界のトレンドワードだ。

しかし、その意味を問われて、表面的な話はできる人はいても、現場に落とし込んだ形で話せる人はあまり多くない。

そこで今回は、様々な種類のおやつを個人にパーソナライズし、独自のおやつBOXをサブスクリプションサービスとして展開しているD2Cブランド、株式会社スナックミーの代表取締役 服部氏と廣濱氏に取材を行なった。

特に服部氏は自身のnoteでD2C・サブスクについて解説しており、有識者と言っても過言ではない。その服部氏が経営するスナックミーがどのようにビジネスを行なっているか教えていただく。

スナックミーが実践するD2Cとサブスク

――早速ですが、スナックミーにおいてD2C・サブスクは現場においてどのような働きをもたらしているのか、教えてください。

服部:まずはD2Cの文脈で説明しますね。

D2Cの特徴としては、お客様と直接タッチポイントを持つことができること。これは普通のECとも同じだと思いますが、D2Cはよりレバレッジを働かせ、自社サービスの世界観を伝える、サービス体験を設計できることが大きいと考えています。

そしてスナックミーはメーカーではなく、ブランドを目指しています。

今まではおやつはメーカーの商品をコンビニやスーパーで買うのが一般的だと思います。そのおやつというジャンルでD2Cモデルは珍しいと思います。世界観を伝えること、体験の設計って難しいと考える人が多いので積極的に進出しようとした人が少ないのかもしれません。

実際、おやつメーカーとお客様の距離は遠いと思います。

消費者からメーカーに対して意見を言って、なにかしらの返事が来るより、どちらかというと、一方通行的な、マスメディアを通して情報を受け取ることが多いですよね。

スナックミーでは、おやつ1つ1つにお客様からのフィードバック評価やリクエストを頂き、情報を商品に反映しています。双方向で情報のやりとりができるのはD2Cの強みですし、おやつ業界の中で一番お客様との距離が近いブランドを目指しています。

――たしかに、こういうポテトチップス味がおいしいから作ってください大手メーカーに言っても実現可能性は低いですよね・・・サブスクの文脈だと、何が強みになりますか。

服部:先ほどのD2Cの特徴であるタッチポイントをサブスクモデルにすることで継続的に届けることができるようになり、より世界観の伝達、体験設計をしやすくなります。noteにも書いてあるのですが、サブスクは定期購入とは異なり、モノをサービス化する、みたいなことを考えています。

スナックミーに置き換えると、おやつをサービスに昇華させるっていうのができるかなと。だからモノはあるのですが、一緒に冊子をお届けし、コンテンツを楽しんでもらう、箱と商品を写真に撮ってインスタに上げるってところまでを含めて体験です。

お客様との関係性に関しても、一回買って終わりよりは、買い始めてから関係は構築され始めるので、サブスクにすると距離はすごく近づいていきます。数年利用していただいているお客様もいますが、かなり親しくさせていただいております。社員とLINEでやりとりをしていますね。

このようなことがサブスクによって設計しやすくなりますね。

――D2Cとサブスクを組みあわせることによってスナックミーがやりたい、世界観をお客様に、直に継続的に届けられるような仕組みを構築しているんですね。



D2Cへ移行するときの課題は?なぜ内製化をするのか

D2Cへ移行するときの課題は?なぜ内製化をするのか

――もともとはD2Cではなく、市販のおやつを寄せ集めて送っていたという話を聞いたことがあります。お客さんからの様々な声を商品にフィードバックするためにD2Cにビジネス転換したというお話でしたが、D2Cにしようとした時に、何か壁にぶつかったことはありますか?

服部:当時はD2Cというキーワードも無く、お客様の欲しいを実際に作って提供するには、いわゆるD2Cモデルが一番いいと考えました。自分でも開発できる立場になれば、欲しいと言われば作ればいいので。結構、自然な流れとして取り組んでいましたね。実際にオペレーションのところとか、課題になったかなとは思いますが、それが困難かっていうとそうでもなくて。

――意外とスムーズに・・・?

服部:もともとは自社で色々なメーカーさんのものを詰め合わせて送っていたので。それが自社の商品になっただけですので、そこで大きな課題があったことはなかったです。

工場と新規で取引する際にも、食品とかはロットが比較的小さくても問題なかったりするんです。例えば化粧品とかアパレルとか、そういうものは難しいのかもしれないですけれど、スナックミーではそこにはぶつからなかったです。

後は、道の駅に販売されているメーカーさんとかも取引させていただいているのですが、そのようなメーカーさんは商品にすごくこだわっているのですが、販売チャネルが1つしかない所が多かったりします。なので新たにスナックミーのチャネルで売りますみたいな話は、メーカーさんの販路が広がるので逆に喜んでいただけます。

あと基本、スナックミーでは商品を全部買い取るんですよ。食品は賞味期限とかあるので、売れない場合は返品されたりってこともありますが、そこで買い取りとか、お客様の声を直接メーカーさんにフィードバックしますってこともやるので、結構喜んでいただけることが多いですね。

――どんどん内製化していこうという勢いだったんですね。


服部:そうですね。確かに梱包とかはヘビーな業務になりますが、無理であることはないです。

――梱包を自社で行う理由は何ですか?

服部:スナックミーのパッケージは結構特殊な形状をしています。社内でしか閉じられないんですよね。外注するとなると専門の機械を入れてもらうところから始まるので、なかなか難しいんです。
なので、将来的にも外注は基本せずに自社で行おうと考えています。

D2Cの要 お客様との関わり合い

――スナックミーではお客様との距離感を大事にしていると話されていました。実際にどのようなやり取りをして、自社に反映しているのでしょうか。

廣濱:スナックミーではお客さんとの接点を増やす場としてCS部隊がいます。一番大好きって評価してくれたら、大好きって評価してくれてありがとうございますってお礼をする、苦手評価つけたらどんな食材が苦手ですか?とか聞きにいったり、お客さんにCS対応良かったって言ってもらえたりするので、モチベーションにも繋がります。

服部:お客様には新商品の評価をしてもらうことが多いです。新商品が本当にお客様から美味しいと思ってもらえるかを最初はテスト的に小ロットで製作し、評価が高ければ流通量を増やす、低ければ作らない。PDCAを回す判断材料になっています。

最初からお客様の欲しい商品作ればいいじゃないかという意見もあるかもしれませんが、ゼロイチでお客様になにが欲しいですかって聞いても、答えって返しにくくないですか?どんなおやつ欲しいですかって私たちから聞かれても困ると思っています。

だからスナックミーからどんどん商品数を出して、実際に食べていただく。今まで興味なかったおやつとの新たな発見もあるかもしれません。

――お客様には実際にアンケートを毎月答えてもらっているんですよね。

服部:はい。お客様は、届いたおやつに4段階評価ができます。

今回このおやつが美味しかったのでちょっと違うフレーバーも食べてみたいですとか、このおやつを固定にしてくださいっていう声もたまにいただきますね。

商品のブラッシュアップにも活用できるのですが、お客様のパーソナライズにも効果的です。その人が、どんなおやつが好きで、何が苦手かもわかるので、おやつBOXをどんどん満足度の高い構成に進化させることができるのです。

―――すごく綺麗な流れですね。実際にお客様の声を拾い上げるCSではどのようなやり取りをしているのですか?

廣濱:個人的なお客様のお問い合わせから、SNS運用まで幅広くお客様と接点を取っています。

例えば、フィナンシェのセット作ってほしいというご要望を拾い上げ、社内で共有して商品化したり、「その商品の名前はフィナンシェオールスターズがいいです」というお客様の声をそのまま反映したり。この取材前にも、次は塩気、塩味の物のいっぱい入れて欲しいですって言われたら、かしこまりました!次回から塩気いっぱいにさせていただきますね。みたいなやり取りを、毎日やっていますね。

服部:補足すると、CSという言葉だけでは問い合わせ対応のイメージがありますよね。

お客様接点とは違う文脈です。問い合わせ対応はコールセンターやLINEでやっているんでbotが対応するとか、ある程度効率化していいと思います。

そうではなくお客様のコミュニケーションは社内じゃないとできないと思っています。D2Cよりサブスク文脈が強いかも知れないです。サブスクで長期的な関係があるので、そこでしっかりとやりとりをしていく必要があります。

――かなりお客様の声を積極的に取り入れているんですね。

服部:お客様の声を反映してもあまりリスクがないんです。

メーカーさんだと、新商品の開発に半年間とか1年単位でかけてローンチするので、開発したらプロモーションをかけて売らなきゃいけない。

スナックミーはサブスクでオススメのおやつを自分たちで選定・開発し届けているので、新商品の流通量も調整できます。少なめに開発して、評価悪かったら下げてしまう、っていう感じなので、出すことに対するリスクが本当に無いんですよね。

不良在庫もロスとかもほとんどないです。これもサブスクならではの特徴ですね。

「一番大事なのはコンテンツ」

「一番大事なのはコンテンツ」右:株式会社スナックミー CEO 服部 慎太郎氏
左:株式会社スナックミー PR・marketing 廣濱 舞氏

――他にスナックミーが定期購入ではなくサブスクリプションであった結果の反響とか教えてください。

服部:お客様に新しい価値を届けられているかなと思っています。自分では買わない新しいおやつに出会えるのはスナックミーならでは。週末にマルシェとかやっている所あると思うんですけれど、見たことの無い商品が並んでいるとワクワクしますよね。

商品もトータルで千SKUくらいあり、選択肢が増えるというか。自分たちじゃ買わないものとか見た事ないようなものがあるので発見・驚きも提供できています。

――自分では買わないものが届くのは、面白いですよね。あ、こんなの好きだったんだ!みたいな出会いは多そうです。

服部:ドライフルーツ嫌いですって方もドライパインとかお送りすると実は好きでしたみたいな。ドライフルーツってレーズンのことだと思っていましたみたいな声

MIKATA会員(無料)に登録して続きを読む
※登録は無料、MIKATA会員に登録することで、過去記事含め全記事が読み放題、サービス資料のダウンロード、セミナー参加が行えるようになります。

記者プロフィール

西村 勇哉

メディア運営事業部 編集チーム所属
見た目はヒョロイのに7歳から空手を習っています。
他にも水泳、サッカー、野球、弓道の経験有り。
たまにメルマガに登場しますが乃木坂46の話しかしません。
連絡先→nishimura@ecnomikata.co.jp

西村 勇哉 の執筆記事