BASE FOOD&アライドアーキテクツが語る「D2C時代の広告戦略」
昨今では“D2C”“サブスクリプション”等の時代の変化に合わせ、通販ビジネスの戦略やあり方も進化が求められる。
一方で、新しい概念への理解が浅く、既存の通販ビジネスの手法から脱却できず新しい手法に挑戦できないなどの理由で、変化に対応できていない企業も未だ多く存在している。
これらの背景を踏まえ、ECのミカタではD2CブランドとD2C支援企業の対談連載記事をお送りする。上記課題を払拭し、より多くの企業がビジネスをアップデートできる事例や生の情報をお伺いする。
連載第2回目のこの記事ではBASE FOODのCMOの齋藤氏と、アライドアーキテクツのCPO 村岡氏による対談をお送りする。デジタルの時代に広告はどのような変化をしていくのか、2人が考える「未来の広告」についてお話を伺った。
連載予定企画(変更の可能性あり)
・第1回
BULK HOMME 野口氏×N&O Life 西口氏×SUPER STUDIO 真野氏
https://ecnomikata.com/original_news/25896/
・第2回
BASE FOOD 齋藤氏×アライドアーキテクツ 村岡氏
https://ecnomikata.com/original_news/26512/
・第3回
DINETTE 尾崎氏×アライドアーキテクツ 村岡氏
https://ecnomikata.com/original_news/26994/
・第4回
SEAM 石根氏×SUPER STUDIO 真野氏
・第5回
Sparty 西田氏×アライドアーキテクツ 村岡氏
・第6回
SUPER STUDIO 真野氏×アライドアーキテクツ 村岡氏
トレンドの変化によって変わる広告
―――今回は「広告」について、BASE FOODの齋藤さん・アライドアーキテキツの村岡さんにお伺いしていきます。早速ですが、D2Cといった新しいフレームワークがトレンドになっている裏側で、広告はどのような変化をしているのでしょうか。
村岡:電通さんの有名なレポートで、デジタル広告の市場は年々伸びているといった調査結果がまとめられています。多くの企業がデジタル広告に出稿しているのは誰しもご存知の通りなのですが、一方媒体側の単価もどんどん上昇していることが近年の大きな変化です。
実際にアライドアーキテクツが支援しているEC企業様の広告単価平均値も2016年から2019年にかけてCPCが130円から220円まで増加。約1.8倍の単価となっています。YOYで110%ずつ広告費が伸びている現状を見ると今後も出稿主の数は増え、平均単価も上がっていくと思われます。
単価上昇ともう1つ、大きな変化が各媒体の広告規制です。例えば、 Googleが発表したCookie規制によって出稿主は広告戦略を変えざるを得ないでしょう。
他の媒体やアフィリエイト市場も厳格化は進んでおり、従来の広告戦略やノウハウで語られていた顧客を刈り取る方法は今後も非常に難しくなっていきます。
新しい広告コミュニケーションを考え、実践していくのはすべての事業者の必須事項でしょう。
齋藤:我々の事業主サイドから見ても、ここ1,2年くらいで単価は上がりやすくなってきている印象です。もちろんその中で最適化だったり、PDCAを回すことで単価の維持やむしろ下げることも可能だとは思いますが、新規参入企業の増加により競争がより激しくなってきており、相対的な単価の上昇は避けられないと感じます。
そのため、広告以外の自然流入を増やすことだったり、あとは広告に投資していた分を一部、購入後の体験に回し、許容のCPAの上限をあげていく動きが必要だとBASE FOODでは考え、実際にそのような施策を行なっています。
村岡:齋藤さんおっしゃった動きはまさに今、ECで成長している企業の共通点として挙げられる特徴です。
やはり広告媒体の変化によって企業の動きはパターン2つあると思っています。
1つ目はより低単価で獲得できる媒体を探す。コミュニケーションハックする従来の延長線上を辿る企業。
2つ目は齋藤さんが言うように媒体費を一部、LTVの引き上げや商品体験を向上させるようなところに投資する企業。
マーケティングの従来費用を媒体費以外、PRやスマートな体験とかLTVに投資する動きはBASE FOODさんは非常に上手いと思います。今後、多くの企業が新しい投資を行う必要がある中で参考になる考え方をしています。
齋藤:今は獲得してからがスタートと言われる時代にもなりましたし、お客様への体験は確かに重要視していますね。
消費者は広告をどう感じているのか
―――事業者側はかなり大きな変化がある広告ですが、消費者側は広告をどのように感じているのか、変化はあるのでしょうか。
村岡:消費者側は結構面白い変化があると感じます。一般的には広告は嫌われているといった言論は多いと思います。しかし、実際にリサーチしてみると、嫌われているのではなく、最早視認しなくなっているといった結果がデジタル広告の領域では出ているみたいです。
多分、多くの人がテレビやスマホ、PC上で触れた広告って、ほぼ覚えてないと思うんですよ。非常に強烈なもの以外は覚えてなくないですか?
―――確かに、印象的なものか、ネガティブな理由だとしつこい広告しか覚えてないかもしれないです。
村岡:そうなんですよ、いい広告ってクリエイティブの質がとても高いのか、企業活動としていい取り組みかのどちらかとだとすると、事業者が意識しないといけないのは、広告は意識されないという前提だと思います。
そうなると企業メッセージをより発信したり、しつこいと思われないようクリエイティブをもっと工夫していく必要がありますよね。最近だとコロナ禍で、企業も様々な取り組みを行っており、消費者からは企業がどうコロナに向き合っているかに対してすごいポジティブな感情持つことが弊社のリサーチでもわかっています。
BASE FOODさんも社会活動に力入れていますが、そのような活動が広告価値をより向上させるのではないかと思います。ユーザーが本当に興味を引くようなあの企業の動きですよね
プロダクトの機能価値は非常に重要ですが、消費者の興味が多面性を持ち始めてるというのは意識すべきかなと思います。
齋藤::そうですね、村岡さんの話は我々も意識しています。BASE FOODの場合はユニークな商品なこともあり、広告で初めて見た・知ったという人も多いです。ただ、それだけだと信頼してもらうのが難しいです。広告の機能性だけで伝えられることには、限界があると思います。
そのためPR施策によって、何かの取り組み・記事で商品を見たことがあるとか、友達がSNSで投稿していたとか、広告以外での接触があって、獲得向けの広告の効果も高まると感じます。
広告だけじゃない接点を増やして、それを広告と一緒に見てもらうことで、その企業、サービスを試してみたくなるのではないか、と考えています。
村岡:BASE FOODはオンラインもオフラインもPRもフィードも、あらゆる施策を360度的に展開している印象があります。ブランド立ち上げ当時から意識されていたことなのでしょうか?
齋藤:私たちの場合はPRが一番相性が良いのでは、と最初から考えていました。世の中にはない新しいものを発信する、それが社会課題を解決していく、かつ身近な「食」の分野で、というのはPRに向いているはず。そのためPRを軸にしながら、新しいカテゴリの商品であることを意識して、「使い方が分からない」という課題が払拭されるように、SNSを通じてユースケースを貯めていく、そして広告でレバレッジする、というのをメイン施策にしようと考えていました。
ローンチの段階では、ざっくりPRとSNSと広告の位置づけみたいな想定をするのは大事だと思います。具体的な戦略はお客様に沢山話を聞きながら、PDCAを回して施策を試すという方向性でやっています。
村岡:PRや広告にはそれぞれ違いや役割があると思うんですけど、BASE FOODさんとしてはSNSにはどのようなことを期待して運用されてるんですか?
齋藤:そうですね。僕達から、商品の特徴を各SNS媒体に最適化して発信するプッシュ型の意味と、お客様が僕達の商品を投稿してくれるいわゆるUGCの2つの役割を果たしていると思います。
その中でもUGCは、お客様の投稿を見た別の人がさらに興味を持ってくれるような、いい循環を作っていきたい。その為に広告とは別に、お客様にBASE FOODを使ったレシピ投稿を促してみたり、リアクションしたり、DMしたり地道な活動を続けています。
あくまでも広告とは別の戦略として位置付けています。
村岡:この話も成長しているEC企業ならではの共通点だと感じます。お客様の投稿を促すような施策は従来、注力されてきませんでした。確かに手間はかかりますし、すぐ売り上げに直結するわけでもありません。
なのでBASE FOODさんのUGCを増やすキャンペーンやイベント開催は新しい投資だと感じますし、僕がBASE FOODさんの話を初めて聞いたときから、ファンである一つの理由ですね。
消費者の目線から見ても、LPで有名な人が体験談が語っていても、InstagramやTwitterに実際に商品を体験した人のクチコミなどの情報がほとんどないと買い控える可能性がとても高いですよね。
齋藤:そうですね。
村岡:消費者は商品を認知した後、必ず調べてから買います。SNSやGoogleの検索で、消費者が買った後の状況を想像できるようにしてあげることは、購入に近づく一歩なのかなと思います。
―――逆にPRについてはどのような考えに基づいて施策を展開されてますか?
齋藤:広告とPRは、情報の語り手が当事者か第三者かが違います。
今は第三者からの情報がブランドの信頼度や認知に大きくつながります。気をつけているのはプロダクトの主観的な情報を流すのではなく、世の中やメディアがどんな文脈、コンテキストを求めているか、その視点で考えることです。一方、広告は自分のプロダクトをいかに魅力的に見せるかという話で、PRとは異なります。
その上で、BASE FOODが関われる社会との接点を、多方面的に出していくことがPRにおいては大事だと考えています。例えば今回コロナ禍で、BASE FOODが栄養バランスのいい主食としてアプローチをすることは、在宅ワーカーへの貢献になります。他には、たんぱく質が30g含まれているので、アスリートの栄養改善に貢献できる、などBASE FOODの商品特徴と世の中の接点のパターンを出して、定期的にアプローチすることを日々の活動として取り入れています。
BASE FOODの施策
―――BASE FOODが実際に行なっている施策も変化があるものなのでしょうか。
齋藤:そうですね。様々な施策を展開していますが、ちょうど今は、パンやパスタを商品として売るのではなく、食生活の改善プログラムとして一か月間BASE FOODを食べる、という企画を行っています。実はこの企画もSNSを使っています。
これは定期的に実施している企画で、一回の参加者が約200名いるのですが、TwitterやInstagramに日々のBASE FOODの記録を載せてもらいながら、みんなで目標達成を目指すという企画です。
単に自分がモノを買って使うだけじゃなく、SNSを通して他の人の使い方が分かったり、Twitterに載せると管理栄養士からコメント貰えたりと、商品の購入から体験へ昇華させることで、単純に商品を消費するより楽しい、プロダクトサービスを体験できる場になっていると思います。
同じ興味を持った人とつながれる場を提供していくことは、獲得と体験価値両方を高めていける施策だと考えています。
村岡:その企画への参加者って既存のお客様じゃなくて、毎回新規ユーザーを募っているんですよね?
齋藤:そうです。新規のユーザーを募ります。OBもたまに参加しますけど、基本的には新規の方が多いですね。
管理栄養士からのフィードバックが貰えたり、仲間と目標達成を目指せたりするので、例えて言うならダイエットプログラムに近いです。
また、通常価格の20%オフ、1ヶ月約7000円で購入できる設定にしているので、価格面でも好評です。過去に何度か開催していますし、記事として取り上げていただいたこともあり、信頼性も徐々に高まっています。ユーザーの方からも、コスパがいいといった評価をいただけていると思います。
村岡:この企画の後ってどうしてるんですか?定期購入に転換すると思うんですけど。
齋藤:そうですね。ただ定期への移行は強制にはしてないです。
企画は企画で終わります。そのあとに、参加した方には定期購入のお知らせを行いますが、通常の転換率の2倍くらいは高い結果が出ますね。
村岡:すごいですね。
しかも一度体験して、ある程度習慣化されている方が多いから、定期からの離脱もしにくそうですよね。
齋藤:そうなんです。この企画経由のお客様はLTVが凄く高い。企画の1ヵ月間でいろんな食べ方を学んでいて、効果を実感した上で定期購入を選択していただいているので、離脱しにくいんです。他の入り口からのお客様に関しても、同じような効果を実感してもらえるように、様々な施策を検討しています。
村岡:そういう意味だとBASE FOODさんは、入り口の期待値をどうコントロールするか、結構重要だなって僕も思っています。
BASE FOODさんの商品が美味しくないという意味ではないのですが、単に美味しいパスタやパンを食べたい人の期待値だけだと定期は難しいと感じます。
齋藤:まさにそれが凄く大事です。期待調整によって、その後の継続率は全然違います。
村岡:そうですよね。特にD2Cブランドは多いですが、定期購入・サブスクリプションなど、商品やブランドを消費者のライフスタイルにどうマッチさせるか、プロダクトや機能提供というよりも、商品をライフスタイル化させる、そんな広告コミュニケーションが重要になっていくと考えています。
BASE FOODさんの企画はまさにライフスタイルに馴染みますよね。一見BASE FOODさんはフードの領域ではありますが、今のお話やお取り組みを見ているとパーソナルトレーニングするくらいだったらその費用を食に充てようという、ジョブの入替をしていて。このあたりの広告の考え方やコミュニケーションの取り方はサブスクしている、いないに限らずD2C企業が広告成果を高める為には再現性のある訴求手法かなって思います
齋藤:BASE FOODの購入目的は非常に幅が広いです。例えばダイエット目的で利用する人や、筋トレ目的で利用する人、自炊の時短を目的とする人など。
年齢や性別が同じ属性のユーザーでも目的によって違う。なのでBASE FOODに訪れていただいた方々の目的をきちんと把握して、入り口の段階からいかに目的別のコミュニケーションを取るかが大事です。そうすることで、顧客毎に正しい期待調整を取ることができるようになります。
―――ある程度顧客と接点を取ってからでないと難しいように感じたのですが、期待調整ができるまでにはブランドローンチからどれくらい時間がかかりましたか?
齋藤:定期的にアンケートを行なっているのと、購入していただく度に聞くようにもしているんですけど、3ヵ月くらい見ると、解約率や平均購入個数、購入後のモチベーション、継続したい意図が割と把握できます。
顧客の声をうまく拾い上げる為に
―――顧客接点のタッチポイントがとても多いですが、顧客の声を聞くときに何か気をつけていることはありますか?
齋藤:何が欲しいですかという質問はしないようにしています。聞いても、本当にお客様が欲しいものは作れないと考えています。ただ、プロダクト・サービス改善につながる意見を聞くのは重要です。
ユーザーの方は分かると思うんですけど、かなり素直に聞いています。実際にプロダクト、サービス改善につながっているので、「サービスがどんどん改善しているところがいいところだと思います」といったレビューもあります。
他にはSNSだとUGCは意識するようになりました。
―――UGCって従来のSNSのコミュニケーションと何が明確に異なるんですか?
齋藤:UGCについては村岡さんから。
村岡:そうですね、UGCの概念自体はここ2,3年で有名になってきました。略さず言うと、ユーザージェネレーションコンテンツと言います。概念自体はブログ時代のCGMと似ていて、要するに口コミレビュー全般指すものです。
これまでのSNSユーザーコンテンツは、確かにあったらいいし、話題になることもありました。ただその情報がSNSのメディア上だけで完結されていることが凄く多く、施策としては後回しにされていた印象です。それよりは、LPの改修やサイト更新に力を入れていた企業がほとんどでした。
では、なぜ今UGCの重要性が話題に挙がるようになったかと言うと、冒頭に説明した媒体の入札価格が上がり始めていること、消費者の対広告に対しての意識が変わってきている領域で、ブランドからの一方的な広告コミュニケーションを続けることは機会損失になっており、新たなコミュニケーション手法が必要になったからです。
僕らが展開している「Letro」によるUGC支援も同様なんですけど、企業が行うマーケティング施策と組み合わせてUGCを活用しようという動きは増えています。実際、消費者の立場に立っても、SNSやYouTube、Googleで日常的にレビューを見る時代になり、購入の最後の後押しになる情報もUGCになり始めています。
BASE FOODさんにも導入いただいていますが、購入一歩手前のページでUGCをECサイトやランディングページ上で出すことによって、本来であれば1回離脱してSNSで口コミを見る為に離脱していたユーザーが、その場で購入の意思決定できるようになるので分かりやすくCVRが改善されます。
齋藤:実際に使う写真はユースケースが多いです。プロダクトの特徴だけじゃない事例は、実際に利用するシーンを一番想像させることが出来ると思うので、購入に結びつけるコンテンツとして活用しています。
あと私たちの場合、お客さんがSNSでUGCコンテンツを投稿することもサービスの一環として捉えています。BASE FOODにはコミュニティアプリもあり、そのような場で自分のレシピに誰かがコメントをしてくれる、これ作ってみようみたいな。そういった1つ1つのやりとりに、ブランド体験価値を感じてもらう。そこまで繋がることを目標に、UGCを育てています。
―――BASE FOODでは体験価値を向上させる為に、どのようなことを行なっていますか?
齋藤:ブランドとお客様のタッチポイント全てに楽しさを付随できるように、積み重ねをしているといった感じですね。
物流から全てのプロセスを、一個一個きちんと棚卸して、ここはもっと改善できるのではないか、と意識し続けることで、質の向上を目指しています。
村岡:顧客とのタッチポイントでいくとコールセンターの位置付けは重要になると思います。従来の大手EC企業様は基本コールセンターとかは外注されているイメージがあります。ただ、そこで得るお客さまの声は基本クレームやネガティブな対応をしているので、なかなか顧客の声として活用されていない印象があります。
一方、先進的な企業やベンチャー企業は、外注されている会社さんももちろん一定数いますが、内製で始められる会社さんも結構いるように思います。
ポイントとしてはネガティブな情報だけではなく、実際長く使っていただいている方に、アプローチする台本を用意されていたり、必要があればマーケティング部や広告周りの方がCSだったりとかコールセンターと連携している会社さんは少しずつ、増えてきたような印象です。
―――外注パートナーさんとの付き合い方は大事ですよね。消費者からしたら、コールセンター窓口の人もブランドの人と変わらないと思うので。BASE FOODさんは外注パートナーさんとどういうお付き合いをされていますか。
齋藤:コールセンターは弊社も外注しています。
やっぱりネガティブな内容とか、なにか問題が起きたときの問い合わせも多いです。しかし、ネガティブな問い合わせを「捌く」のではなく、ピンチの対応次第で、その人が逆にファンになってくれる可能性があると捉え、むしろチャンスの場だとも思っています。そのためパートナーさんとは、きちんと台本やBASE FOODの求める対応を共有・教育した上で対応を行なっています。
他にも最近ではSNSにもお問い合わせをいただくことも多いので、専属のSNSチームが素早く問題解決できるように仕組み化しています。
村岡:BASE FOODさんのように展開する為には経営・事業責任者レベルが各接点をどういう場所として捉えているかが凄い重要だと思いますね。コールセンターを外注してても、勝機の場として捉えているのか、クレーム処理の場として捉えているのかでその企業の成長曲線は変わると思います。
SNSのリアルタイム性は便利な反面、炎上リスクもあります。
特に少し前にはツイッターの負の部分がスポット的に報じられてこともあったので、中途半端なことを発信して事故を起こすのが怖いと考える人が責任者レベルで多いのではないでしょうか。
BASE FOODの特異点はどこか
―――村岡さんは齋藤さんとも親交があり、さらには他にも様々なブランドとお付き合いがあると思います。その村岡さんから見て、BASE FOODさんが他ブランドと違うのはどのような点だと思いますか?
村岡:BASE FOODさん以外のD2Cブランドにも言えることですが、お客様を中心にサプライチェーンを統合管理していくことを理想の形として目指されていると思います。個人的には、D2Cだけではなく、今後全てのビジネスがそういう形になっていくのではないかと思っています。
その中でBASE FOODさんはマーケティングが素晴らしいなと思います。
お客さんを中心に置きながらBASE FOODさんのブランド訴求、世界観の訴求、さらにはお客さまに刺さるユースケース訴求から商品体験の設計まで、戦略的に一気通貫で整理されている印象です。ここまで網羅的に展開しつつ、デジタルやオフラインの施策を組み合わせるのはとても難しいと思います。
オフラインで一定の世界観を作り、デジタルのコミュニケーションで接点を作り購買に持っていく。ブランド戦略とマーケティング戦略が、表裏一体になっている状態ですよね。
PRや広告の話とマーケティングの話はまさにここに集約されています。PRとマーケティングをうまく一本線で繋いだ上で、商品開発、事業フィードバックされているのはBASE FOODさんの特徴でもあり、大きな強みになっているのではないでしょうか。
ここに至るまでにはPRやオフラインなどの非デジタル領域への投資をしっかり行なってきた結果が出ているのだと思います。数字が見えない領域なので難しい投資だったと思いますが、しっかりと結果が出ていることは特徴だと感じます。
齋藤:褒めていただいてありがとうございます。ただそんな表裏一体ってほど綺麗ではないですよ。(笑)
BASE FOODのマーケティング方針として、「簡単で、美味しくて、体にいい主食」を作って、文化的に広めるという指針を置いています。
ここの文化的に広めるという点は特徴的だと思っています。、BASE FOODをとにかく売りたいというよりは社会に定着させていきたい、そのために文化的に広める、という指針をもっています。
特に食文化を作ることは、Webマーケティングで個人に対して1:nみたいな関係性だけだとなかなか難しいと思います。その為、n:nのように、人から人に伝えられるUGCや、パートナーの飲食店と一緒に広めていくことを構想しています。
そして構想を実現する為に、デジタルマーケティングだけではなく、PRや飲食店とのコラボ、オフィス導入など、ブランド体験の場を広げながらも、常にサービスを改善してお客様から応援してもらえることを目指しています。
その結果、BASE FOODが食文化を構築できるといいなと。その最初のきっかけがPRやSNSになりますね。
―――ありがとうございます。今はECは非常に始めやすい環境ですが、ブランドローンチしたばかりの事業者はどのような点に注意しながら顧客とのタッチポイントを作って、UGC育てていくべきなのでしょうか。
齋藤:個人的な意見ですが、最初に購入してくれる100人とか、そういう方々を凄く大事にする。そして100人の周りから徐々に広めていくべきなのかなと。
D2Cブランドの立ち上がりは、プロダクトやサービス改善を行いつつ、認知を広めていく必要があります。より長い目線で、そして一緒にブランドを作っていただけるお客様を中心に広めていく。広告とかではなく、ユースケースが広げられるような施策も行なったほうがいいと思います。
村岡:齋藤さんの仰った通りだと思います。
今後のECは基本、デジタルマーケティングがうまくないと伸びないです。デジタルこそ、スモールインして最初のお客様を可視化できるようにしておくことは中長期的に見るとものすごく重要です。仕組みだけ整えられれば、資金がなくてもブランド立ち上げの段階からできることだと思うので。
2020年以降のマーケティングはどう変わる
―――広告や顧客接点の作り方が大きく変わっているなか、マーケティング全体で見ると今後はどのような変化があると考えていますか?
齋藤:基本的には顧客体験の価値を向上するマーケティングにフォーカスすることで、結果UGCが生まれ、広告を含めたブランド全体のパフォーマンスに繋がると思います。
その為には、お客様ごとに最適化されたパーソナライズコミュニケーションが必要になります。今後はより、深いレベルの対話を心がけていこうと考えてますね。
村岡:僕も顧客体験が全てだと思います。
その為にはプロダクト力は絶対に必要です。商品単体ではなく、広告もマーケティングも全てがプロダクトに集約されます。いかに良いプロダクトを作り続けられるかが、2020年以降、多くの事業者にとって課題になると思います。
さらには、媒体をハックして抜け道を作り、売り上げを上げる時代ではなく、顧客と真のコミュニケーションを追求していく必要がより求められます。商品作りからマーケティング、PRまでを経営レベルが一気通貫で意思決定できる組織体制の企業は強いのではないでしょうか。
―――媒体攻略の優先度が下がっている背景には、冒頭の広告が視認されにくくなっているといった理由があるんですか?
村岡:もちろん消費者側の課題もありますが、一番は媒体側のテクノロジーが凄く進んでいるのが原因です。例えば、より信頼性の高い情報が上位表示検索になるようなGoogleのアップデートは頻繁に入っていますよね。
Facebookも入札するタイミングで安くなりやすい方法とか、動画のほうがCPMが安いとか、色々あります。これらってとても大事なことではあるのですが、改善率には限界がきます。媒体側がいいインターネット広告の市場を作り出そうとしているのならば、僕達はそれに従い、正しい情報をいかに充実させるか、に尽きると考えています。
だからこそ、D2C事業者様は顧客タッチポイントを大切にして、プロダクト全てを充実させる必要があるのです。