『D2C』における物流の重要性を解説!EC事業者が意識したいポイントとは?
ブランドを保有する企業やメーカーが、ECを通して直接消費者と繋がり、売上を増やしていくD2Cビジネスが加速している。
株式会社エスプールロジスティクスが開発した新システム「Synapse」は、WMSデータを視覚化、分析が可能でD2Cビジネスで生じがちな課題をクリアにできるという。
このシステムの詳細や、D2Cビジネスにおける物流の重要性、EC事業者が今後意識したいポイントについて、同社の副社長で執行役員の小林正憲氏に伺った。
WMSデータを定点観測することで、商品や売り方の盲点に気付ける
――現在EC業界で話題になっているD2C。物流面ではどのような点を意識すべきでしょうか。
「D2Cを成功させるには、直接消費者と繋がるという、荷主側の覚悟が必要です。通常のEC販売であれば、荷主と消費者との間に流通事業者や商社が入って販売や流通の戦略を考えることができました。
しかし、D2Cでは荷主が消費者に直接アプローチしていく必要が生じます。そのためにはバックヤード部分から商流を把握することが欠かせませんが、それをせずにやり始めてしまう荷主も非常に多いように感じます。
マーケティング部門を持たない荷主が、消費者に買ってもらうところまで考えるのは難しいと思います。
弊社では様々な企業の物流を取り扱う中で、返品率などのデータを定点観測・検証することで、マーケティングや流通に関する課題を洗い出し、解決に導けることに気付きました。
たとえばあるアパレル荷主の事例では、1商品の返品率だけが高いことがわかり、ECサイトのレビューを調べてみたところ「袖が細すぎる」「腕がきつい」といった内容が多かったため、「袖周りのセンチ数を説明に入れては」とご提案し、返品率が改善したことがあります。
このように、物流現場からしか見えないデータが、売り方の大きなヒントになるのです。
そこで弊社では、WMSデータをぜひ多くの荷主のD2Cのマーケティングに役立てていただきたいと考えました」
返品率、返品の多い地域などを可視化すれば、ピンポイントな施策が打てる
――そのためのシステムを自社で開発されたそうですね。
「これまでも一部のクライアントとの定例会で、返品率や、入荷予定数と実際入荷数の差異、在庫などのデータを取りまとめたものをお見せしながら、改善点をご提案してきました。しかしデータをまとめるためには、取引先ごとにWMSデータをいただいてエクセルに変換するなど、時間と手間がかかっていました。
そこで弊社のWMSシステムからデータを取り込むことで、内容が一気に視覚化できるシステム「Synapse」を開発しました。
Synapseで閲覧できるデータは、返品に関しては商材ごとの返品数推移、理由内訳、返品金額、返品コスト、都道府県ごとの返品数マップ、決済ごとの返品率など。返品以外に、入荷と出荷に関するデータも出すことが可能です。
こうしたデータを見ながら、たとえば後払い決済のお客様からのキャンセル率が高ければ後払いをやめてみるとか、三大都市以外の地域で返品率が高ければ、その地域でおかしな口コミが回っていないか調べるなど、返品を防ぐためのピンポイントな対策を打つことが可能となります。
Synapseの利用法は2通り。いずれも弊社の倉庫をお使いいただいた上で、月1回の定例会などで弊社がデータをお見せする場合は無料です。自社でアカウントを持ち、経営資料としてリアルタイムな動向をチェックされたい場合には、月額5万円でご提供します。
操作はシンプルでとても使いやすいツールですが、導入時は開発担当者と責任者が使い方のレクチャーをさせていただきます。お使いいただく中で、機能を足して欲しいなどのご要望があれば、順次お応えしながら精度を高めていく予定です。
Synapseの導入がおすすめなのは、月1000件以上の出荷がある、成長初期の企業様です。この段階からデータを蓄積しておくことで、大きく成長してからの余分なコストの発生を抑えることが可能となるからです」
定期リピート通販に適したWMSシステムで、同梱設定や事務の自動化も
――エスプールロジスティクスさんは定期リピート通販に適した最新技術を積極的に採用されています。
「WMSシステムは同梱設定や、今後の事務の自動化が可能であり、なおかつ他システムとのAPI連携ができるものに統一しています。初回、2回目、3回目と同梱物や特典を変えることなども詳細に設定できますし、データを可視化しながら、不動在庫の無駄が生じた際なども逐一ご報告できますので、定期リピート通販企業様にぜひお使いいただきたいですね。
当グループ会社を活用した施策も可能です。たとえばSynapseの返品数マップで一部地域の返品率が低いことがわかれば、当グループ会社のキャンペーン部隊を使ってリアルのキャンペーンをし、顧客の獲得まで行うこともできます。
さらにデータに基づくロジスティクスとしての立場を強く意識している点も、弊社の強みです。
日本ではまだまだロジスティクス=物流+ノンデジタルのイメージが強いかもしれませんが、欧米ではロジスティクスの中に蓄積データに基づくデジタル×アナログマーケティング、SCMのようなITシステムによる調達、製造、販売、消費の一括管理、デジタルキャンペーンなど調達、製造、消費までの一連のマネジメントが含まれています。
AIロボットやマテハンの発達により、物流の装置産業化はこの2020年代に飛躍的に進むといわれています。
今の物流企業は「1個処理していくら」で収入が成り立っていますが、将来的には、センター通過フィー費を少しいただけるとしても、多額の物流費は見込めなくなるかもしれません。
そうなると物流作業としての機能としては差別化が無くなり、出荷が速いとかミスが少ないなどのことはより当たり前となり、プラスαでロジスティクスとしての付加価値が必要とされるでしょう。
弊社は以前から任された物流をこなすだけではなく、お客様の「ロジスティクス部」として、物流現場で得られたデータの可視化×分析を行うことで課題を解決していく姿勢を大切にしています。
それは特別な事ではなく、本来あるべきアウトソースの定義に立ち返っていくことだと考えています。
最高サプライチェーン責任者CLOを育成し、多くの企業のお役に立ちたい
――今後の展望をお聞かせください。
2030年までに、企業の調達、生産、販売までのプロセス全体の財務分析ができるCLOを社内に増やしていきたいですね。
欧米では企業のトップと言えば、最高経営責任者のCEO、最高執行責任者のCOO、最高サプライチェーン責任者のCLOの3者です。
人間で言えば、CEOが脳で、COOは行動を起こす体、CLOは血液の部分だといえ、CLO、すなわち血液部分は直接目に触れることは少ないですが、成長には欠かせない存在です。
日本ではまだその認識が薄いのですが、何年か遅れて必ずそういう時代がくるでしょう。
その時代になってから慌てても、物流に精通した人を雇うのは難しい。
そこで弊社とCLO契約していただき、担当CLOが定例会に伺ってデータを分析しながら施策をご提案できるようにすれば、専任スタッフを一人雇うよりも、ずっと効率的でお得だと思います。