ユーザーに愛されるEC事業のあり方

小林俊也(kobayahi toshiya)

株式会社コルク EC運営チームの皆様

株式会社コルクは漫画『宇宙兄弟』などの作品を手がける作家のエージェント会社だ。作品作りの支援だけではなく、作品オリジナルグッズの企画や製造、ECサイトでの販売などを網羅的に行っている。

今回はその特質的なEC事業を知る為に、商品企画担当 佐々木 咲氏、EC運営担当 大野みお氏、カスタマーサポート担当 中谷祐子氏に普段行っている業務内容を伺った。

ユーザーとのコミュニケーションで生まれる商品

商品企画ご担当 佐々木 咲氏

ーー本日はお時間いただきありがとうございます。今回のご取材で御社の商品企画ノウハウやEC運営の現場などざっくばらんにお話いただければ幸いです。流通に添ってお伺いできればと思いますので、まずは商品企画についてお願いします。

佐々木氏:こちらこそお時間いただきありがとうございます。私は商品企画として、物語を実際に手に取ることができる商品に落とし込み、つくり、お届けするまでを仕事にしています。

企画の軸にあるのは、作品の世界観を肌身で感じ取り作品の多様な魅力を発見する「作品の読み込み」です。私は編集者のように実際に作品をつくる立場ではありませんが、素晴らしさを読み逃さない、最高の読み手でありたいと思っています。

たとえば、漫画『宇宙兄弟』というひとつの作品にも色々な魅力がありますよね。作品テーマにある宇宙や天体が好きな人、キャラクターの魅力に惹かれる人、夢を目指してひた走る兄弟や仲間に熱を感じる人など、読者の数だけ『宇宙兄弟』に感じている魅力があります。

そういった中で、作品のどの魅力を日常でも体験したい・してほしいのか、作品のどの魅力を切り取って商品にするのか、そういったことを考えてアイデアに繋げていきます。

そのため企画は、何のアイテムをつくるか?からスタートするのでなく、作品の魅力や、読者の感情が動く場面を考えることから始めます。

そう考えると、ひとつの場面からでも切り取り方次第で、アクセサリーや雑貨、アパレルなど、アイテム広く展開ができます。心に残り、身につけているとちょっと勇気が出るような作品の力を、日常でもいろいろな形で携えることができるといいですよね。

ーーなるほど、ありがとうございます。その切り出すポイントの選び方はどのように決められているんですか?

佐々木氏:作品ごとに切り口は変わってきますが、『宇宙兄弟』では5年ほど前からグッズを販売しているので、魅力もアイテムも新しいものを常に出したいと思っています。ひとつの魅力を追い求めるのでなく、いろいろな魅力をデザインすることで、この作品はこう読むべきだ、この作品の魅力はこれだ、など決めつけることをせず、読者それぞれに読み方があることを肯定したいです。

また、連載中の作品の場合は決してネタバレにならないようにしたり、単行本をもっと楽しめるヒントを仕込んでいたり、届いて初めて分かるような、小さなサプライズも意識しています。

ーー具体的にはどのような商品を企画してますか?

佐々木氏:限定販売のプレミア感がある商品を主にしながら、他にも手に取っていただきやすくグッズの一歩めとなるような商品も展開しています。その中には、読者の方から「こんな商品が欲しい!」といただいたアイディアをアレンジして実現した商品もあったりと、読者とのコミュニケーションをヒントに商品を企画しています。

最近では、『宇宙兄弟』をせっかく好きになって、こんなに熱く読んでいるのだから、宇宙のことをもっと身近に感じたいという思いがあります。その思いが先日結実したのが『宇宙兄弟』38巻新刊記念セットです。光学機器メーカーのビクセンさんと国立天文台さんが一緒に開発された組み立て望遠鏡を特別に『宇宙兄弟』パッケージで販売したのですが、多くの天文初心者の読者のみなさんと月を気軽に、でも美しく見る体験を共有できてとてもうれしい取り組みでした!

商品の提供を支える運営とカスタマーサポート

EC運営ご担当 大野みお氏

大野氏:コルクの考える商品の企画は、物語の象徴的なシーンや、登場人物の想いを抽象化して、私たちの生活の中にごく自然にあるもの、例えばTシャツ・アクセサリーなどにそのストーリーやメッセージを込めていきます。生活の一部に溶け込んで、作品を側で感じられたり、ちょっと背中を押してくれたりする。そんな商品の企画を佐々木さんが軸となって進めてくれています。

ーーなるほど。そうやって生み出された商品はどの様な流れでお届けされるのでしょうか?

大野氏:私が担当しているのは、WEBで販売するにあたっての進行管理と実際のECの運用、受注の管理、委託している倉庫との発送の連携などです。簡単に言いますと、佐々木さんが作るもののバトンを受け取って、そこからの販売とお届けまでです。

ーー商品ができあがった後の運用をほぼ全てですね。。ECサイトはどのように作られていますか?

大野氏:一番最初のECサイトはSTORESで運用していました。運営をしていく中で、取り扱う商品のバリエーションや数、ECサイトで表現したいことが明確になっていき、現在はfutureshopを利用させていただいています。また、並行して先日立ち上げたコルクストアというECサイトはShopify使って実装をしています。

商品をどう感じていただくか、もしもまだ読んだことがない作品があったらどう出会っていただくことができるか試行錯誤中です。複数のクリエイターの商品を取り扱わせていただいているので、お客様がサイト内で回遊し新しい発見をしていただけたらなと思っています。

ーー今後、ユーザーの購買状況や流入の導線状況をみて改修を進めて行く前提なんですね。

大野氏:そうですね、そういった改修のスピード感も期待してShopifyを使っているので上手くツールと向き合いながら運用していきたいと思っています。

コルクストアは約1か月ほどの構築期間で自社内でデザイン、エンジニアリングを行いましたが、今後も社内で思いついたことをECサイトに反映しながら、物語をもっと楽しんでいただくために、企画だけではなく運用面でもチャレンジをしていきたいです。

カスタマーサポートご担当 中谷 裕子氏

ーー御社のカスタマーサービスも一般的なECサイトとは違っていそうですね。ユーザーのお問い合わせなどはどのように対応しておりますか?

中谷氏:問い合わせの内容としては、注文内容や住所変更、お届けメールについてなどのよくあるお問い合わせや、販売期間に間に合わなかったけど、どうしても買いたいとか予約販売ならではの内容などさまざまありますね。

そういったご連絡をなるべく迅速に丁寧にお答えし、お客様に不安なお気持ちにさせないよう心がけています。

また、私たちが販売している商品は、受注生産の数量限定で替えが効かない場合も多いです。お客さんは作品の絵が書いてあるパーカーが欲しくて買ってるんじゃなくて、好きな作品の世界に近づきたくてパーカーを買うという方なので、ファンの方がどういう気持ちであるかをよく考えてお返事をすることは気を付けていますね。

ーー主にどういった経路からのお問い合わせが多くありますか?

中谷氏:主にメールです。メールが届かない方には電話をさせていただいたりしていますが現在はリモート勤務になっていますので、ほぼメールで返信させていただいています。

1日大体10件程度のお問い合わせ数ですが、限定の受注生産商品の販売直後と、発送直後には2〜4倍くらいに増えます。お客様のストレスにならないようなるべく早めにお返事することを心がけています。

ーーお問い合わせがきた際は、初回購入の方、2回目以降の購入などお客様の属性を把握した上で対応してますか?

中谷氏:そういった属性をお問い合わせでは紐づけてはいないのですが、よくお問い合わせいただく方は覚えていたりします。作家さんによっては海外の方からもお問い合わせをいただき嬉しく思っています。

予期しないトラブルやお問い合わせもありますが、何か問題が起きたときはチームに共有してみんなで判断をしていますのであまり不安になることはなく、気持ち的にはチーム全員で同じ視点や価値観をもってカスタマーサポートをしています。

他にも、私はカスタマーサポートと兼任で、漫画に文字を入れる写植という業務も行っていますので、作品がより近い存在になっているところはあるかもしれません。

ファンが喜ぶためのEC運営

ーー商品点数やSKUなども多いと思いますがどの様に管理していますか?

大野氏:弊社は、発送業務を外部委託しておりまして、委託先が自社で開発しているWMS(倉庫管理システム)の機能ですべての在庫で管理しています。

なので、倉庫さんとどう連携してご購入いただいた商品をお届けしていくかも大事になってきます。

ーー梱包部分などどういったお取組みをされていますか?

大野氏:商品の特徴や物語によって、お届けの方法を工夫しています。その商品がどうお客様のもとに届いて欲しいかというところまで考えて、段ボールの規格やデザインの作成、入庫まで自社で行っています。

例えば、オリジナルの化粧箱をオリジナルのサイズでご用意し、商品のデザインと同系統の緩衝材を使い、特典やお手紙、商品によっては香りをつけて。最後にオリジナルのテープを巻いて梱包したりしています。

ーーとても面白いですね。でも、通常の発送フローに載らないので物流の現場は大変そうですね。

大野氏:そうだと思います。長期にわたり発送をお願いさせていただいているのですが、私たちの実現したいことを現場の方がしっかりとご理解くださり、梱包や発送に関してより良い体験となるご提案をいただくこともあります。垣根なく意見交換ができ、同じチームとして動いていただけていることに大変感謝しています。

コルクのEC運営チームが目指す未来

ーー最後に、皆さんが目指していることは何でしょうか?

佐々木氏:作品がもっと読者の日常にあり、作品を「読む」以外の形でも楽しめるような広がりをつくりたいです。

コルクで今一緒に働いているメンバーには、EC出身者は誰もいなくて、出版界の人も少ないくらいです。でも、それぞれが何らかの作品に力を借りてきた。そんな物語が好きな人たちの集まりです。

私自身、コルクに入るまでは、作品を読んで感動したときに、もっと作品を楽しみたい、もっと作品を好きになりたい、もっと作者に還元したい!と思っても何をしたらいいかわからなかったんです。そういった「好き」のやり場のなさが私にとってはすごく大きかったので、自分が携わるチャンスがある作品では、そのやり場のなさを誰かに感じさせたくありません。読者がもっと日常的に作品を楽しめる世の中を作れると良いなと思っています。

大野氏:佐々木がかなりまとめてしまいましたね(笑)社内にある強い意志や熱をできればそのままお客様にもちろんお届けしたいし、商品を開けた時にそういったものが伝わればいいなと思いながら働いています。

ファンの方が作品を好きであると同じくらい、私たちも作品が大好きなんです。少しでもできる事を増やして、お客様に新しいものを手に取っていただける場所が作れたらと思います。

中谷氏:お客様は作品に熱い思いを持っている方が多いので、商品が届いて感動しましたとか、箱がかわいいすぎで捨てられませんというようなご連絡をいただくととても嬉しいしやりがいを感じます。作品が好きで、それが人生の励みになってくれる。そこからグッズやイベントなどを通して広がり、さらに人生が豊かになる人が増える。そんな素敵なサイクルがこのコルクから生まれたら素敵だなと思います。

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記者プロフィール

小林俊也(kobayahi toshiya)

新規事業開発室所属。ECサイト・EC支援事業者両社向けに価値のあるサービスを開発できるよう日々奮闘しています。

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mail :t.kobayashi@ecnomikata.co.jp
Twitter:@ecnomikata_tk

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