宇宙兄弟 漫画とアニメの世界観がECを成功に導く

石郷“145”マナブ

 小説やマンガなど、作家が生み出す作品や作家の才能、つまりはコンテンツ。時に、僕らはここに価値を感じて、お金を払っている。スマホなどで様々な広がり方ができるこの時代で、作家や作品の可能性は最大化し、読者(=ファン)を魅了し接点を作り、気持ちを高める事で、価格にとらわれず商品が売れている一つの事例がある。2回に分けそれについて追ってみたい。

宇宙兄弟とEC論
【前編】宇宙兄弟 漫画とアニメの世界観がECを成功に導く
【後編】ECは恋愛でいう“都合のいい人”?(コルク佐渡島氏) 来週金曜日公開!

「宇宙兄弟」の力、小山宙哉さんの才能、佐渡島庸平の発想の結晶

 皆さんは、コルクという会社をご存じだろうか?この会社は講談社の編集者だった佐渡島庸平さんが、これからは編集して出版するだけではなく、優れた作家にエージェントがつくことの意味を説き、立ち上げた会社だ。そうやって、作家はその可能性を最大化し、その最大化によって、出版社もまたそのメリットを享受できる、とする。既に「宇宙兄弟」の小山宙哉さんの他、三田紀房さん (インベスターZ、ドラゴン桜他一部作品)、安野モヨコさんらのエージェントとなっている。

 僕は、この動きをすごく面白いと感じていて、例えば、僕らが何気に目にする「漫画本」だって、根底にあるのは、作家が生み出す作品や作家の才能、つまりはコンテンツであるのだ。僕らはここに価値を感じて、お金を払っている。紙で印刷された「漫画本」は、たまたまそれらの才能などが紙に印刷されて形をなした「モノ」の一つにすぎない、と思うのだ。

 つまり、コンテンツ自体の価値を高めようとするのが、コルクのやろうとしていることで、作家や作品の可能性を最大化し、ファンの気持ちを高める「モノ」は本以外にもきっとあるだろう。だとしたら、彼らはきっと、ファンの心をくすぐる第二の「モノ」を、ネット通販で、今までにない形で、仕掛けてくると思った。そして、やはり、やっていた。

小山宙哉さんの描く価値を前面に。価格競争はない。

小山宙哉さんの描く価値を前面に。価格競争はない。

 小山宙哉さんの描く「宇宙兄弟」のオンラインストアでは、パグ犬の「アポ」が描かれたTシャツが販売されている。これは、ファンなら「あぁ!」と気付くであろうシーンをモチーフをしたイラスト。そして、用意していた999枚はあっという間に売れた。

 イラストについてだが、下記を見てほしい。『宇宙兄弟』7巻の65話『月のウサギ』のシーンだ。

 この場面は、登場人物である日々人(ヒビト)が日本人初の月面の第一歩を踏み出す直前を描いたもので、ムッタからヒビトへのビデオレターを送る、というものだ。Tシャツの絵柄が、この中の一コマをモチーフにしていることにお気づきいただけるだろうか。今までのグッズにみられるような、わかりやすく主役だけが大きく描かれているのとは一線を画している。けれど、上記のような反響なのだ。

 また、その販売と並行して、歌手カサリンチュとコラボ企画を実施し、登場人物せりかの応援ソング『あと一歩』というCDを作成し、そこに、カサリンチュと小山宙哉さんの対談、せりか作画風景等、ファン垂涎の小冊子をつけ、こちらもネット上で販売する。さらに、先ほど、出てきたTシャツ企画ともこれらがリンクしており、応援ソング『あと一歩』のムービーに、Tシャツ購入者が出演できる。



 こうする事で、それぞれの付加価値が、サイト内での企画を通して相互に高め合い、その商品は、伝説の商品となる。これが、また、次仕掛けるであろう企画の盛り上がりの伏線になってくる。買えなかった人は、どこかこの盛り上がりに取り残された感も出てきて、次こそはという気持ちが湧いてくるのは言うまでもないだろう。

 一つ一つの取り組みがファンの好奇心をかき立て、コンテンツが持つその価値を最大限、引き出す。だから、どんなモノが生まれようとも、価格を超えた価値となって、ネット通販に見られるような価格競争はここにはない。一番安いものに巡り会えるばかりがネット通販の醍醐味ではないと思っていて、そうじゃない売り方のヒントはここにあるように思うのだ。

 そして、僕は、すごく感覚がよく、センスに溢れたやり方で、コンテンツの価値を高める、コルクの代表取締役社長 佐渡島庸平さんの考え方が気になって、直接、話を聞いてみることにした。(参考:コルク 佐渡島社長のインタビューへ)


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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