持ち前の商品開発力とコミュニティ構築ノウハウで異例のEC事業が誕生。株式会社コルクが目指す未来とは

小林俊也(kobayahi toshiya)

MD事業部プロデューサー志賀遊大氏(左)とEC運営チームの皆様

株式会社コルクは宇宙兄弟やシュガシュガルーン、ドラゴン桜などの作品を手がけるクリエイターのエージェント会社だ。作品の編集以外にも作品オリジナルグッズをECサイトで販売などしている当社は、他の出版社の作品も扱う異例のECサイトを開店した。

その背景には、当社が培ってきたファンコミュニティの形成・運営ノウハウや、作品の世界感から商品開発をするリアライズという概念、企業として掲げているミッションが密接に関わっているという。当社の事業について取締役副社長 黒川久里子氏とプロデューサー 志賀遊大氏にお話を伺った。

異例の協業を実現した株式会社コルクの実態

取締役副社長 黒川久里子氏 遠方のため今回はビデオ参加

ーー御社は宇宙兄弟などを手がけている小山宙哉さんや、ドラゴン桜やインベスターZで有名な三田紀房さんを抱えている編集プロダクションやクリエイターエージェントの立ち位置ですよね。ざっくりな概要で恐縮ですが、他の出版社さんと作品を扱うという出版業界では異例のECサイトを立ち上げるとお伺いしました。まずは御社事業内容をご説明お願いします。

黒川氏:弊社コルクは「物語の力で、一人一人の世界を変える」というミッションと掲げている企業です。確かに作家さんを世に広めるエージェントという一面もありますが、物語を「生み出す」「届ける」「広げる」という3つの軸で活動しています。そのため、一般的な編プロやエージェントというよりは、作家さんが作った物語の力で新しい世界を構築していく会社となります。

具体的な支援例としては、作家さんの執筆活動や編集のお手伝いなどはもちろんの事、メルマガ、SNS、YouTubeなどの媒体を使ったコミュニティ作りやWEBやリアルイベントでの販促支援。商品の企画、製造から販売など物販事業の支援。作家さんのECサイト制作、運用など多岐にわたりますが、完結に言うとミッションやビジョンに添っての柔軟な支援をしているという事なんです。

他にも、新人作家さんが書く力や物語をつくる力ができるように、代表の佐渡島が直接講師をするスクール事業も行っております。

ーーそういった事業の中で、他社の作家さんをご支援するのはなぜでしょうか?

黒川氏:私たちは世の中に素晴らしい作品がまだまだ沢山あると思っていますが、その作品全てが弊社に集まっている訳ではありません。しかし今まで我々が宇宙兄弟ないし、様々な作品でやっていたことと同じように、作品の素晴らしさを商品やイベントなどで現実にすること、弊社ではそれをリアライズと呼んでいるのですが、そんなことをそういった作品でもやりたいと考え、今回のコルクストアという他社作品の商品を扱うECサイトを開店しました。

コルクストアはこちら(https://corkstore.jp/

ーーリアライズ、特徴的な表現ですね。

志賀氏:モノづくりは基本的に発案者の思いがベースになると思いますが、作家さんの頭の中に顕在させている作品の世界感やストーリーを現実にしたら、もっと作品を楽しめるんじゃないかという起点でやっています。

作家さんの頭の中から作品という形で取り出すのも1つの編集の形だと思いますが、作品や作家さんの中から、世界観を抽出することも編集の形だと我々は思っています。作品の中に閉じ込めている世界や、本質的な力、感動など、形になっていない心の動きを現実の世界に取り出してくる。これが我々の言うリアライズで、作品作りを作家さんと一緒にやっている我々だからこそ、できる事だと思っています。

リアライズの真髄 ファンと共に作るEC

せりか基金HP(https://landing-page.koyamachuya.com/serikafund/

ーー具体的なリアライズの事例として挙げられるものはありますか?

黒川氏:『宇宙兄弟』で行ったせりか基金が分かりやすいかもしれないです。せりか基金というALSという身体が動かなくなる病気を研究し、治療法を見つける寄付団体があるんですけど、宇宙兄弟の中でシャロンというキャラクターがALSを患っていて、せりかというお医者さん兼、宇宙飛行士のキャラクターが治療薬を開発するっていう物語があります。物語中では未来にに治療薬の元となるような発見をしましたが、それを現実世界に追いつかせるために、『宇宙兄弟』寄付金を集めて研究者の人に対して寄付をして研究を進めるという事を実践しています。これもリアライズの一つの形だと思っています。

物販寄りの話ですと、エナのヘアピンがという商品がファンの方から大変ご好評いただことがあります。それも作品の中に出てくる、エナというキャラクターが実妹からもらったヘアピンで、気持ちをピシッとさせたい時や、自分を奮い立たせる時にそのヘアピンが武器となる。このストーリーをリアライズするために商品を実際の物にして、ファンの方にお届けしました。

このようにただキャラを貼るようなグッズというよりは、感情が動くところを抽出して現実に出来るかを意識しています。

ーーすごく面白いですね。リアライズしていく時は何がきっかけになるのでしょうか。

志賀氏:我々が監督しているものに関しては、割と最初の段階からこれが伝えたい、これが作品でも鍵になるといったイメージが結構あります。それを元に企画をしていくことが多いですね。

考える元となるのは、この感動を!この湧き出てきた想いをカタチにしたい!という想いを拾っていくことです。作品の中に自分にとって大切なシーンがあって、その時に自分の中で何が響いたのか。それを丁寧に扱うことが最初のきっかけと言えると思います。

最初のイメージをカタチにする段階でも色々悩みますが、SNSなどでコミュニケーションを取りながらファンの方の声を参考にしたり作家とのコミュニケーションでアイディアが膨らむことも多いです。

ーーファンクラブやコミュニティの作りにかなり力を入れているみたいですね。もっと詳細にお伺いしたいのですが、宇宙兄弟を例としてどういったコミュニティがあり、コミュティ毎にどんな役割を果たしているのでしょうか?

黒川氏:雑誌連載や単行本を追ってくれる何十万人ものファンが感想を呟いたり、感動した気持ちを投稿してくれたりするので、SNSは大きな意味でファンとの繋がりがあり、コミュニティとしてまず最初にあると思っています。

そして、オープンなSNSの次に無料のメルマガがあります。そこでは新商品情報をいち早く手に入れることができたり、メルマガ限定でしか読めない連載裏話を読めます。このメルマガ購読者を「コヤチュー部」というファンクラブと定義しています。

オープンなSNSでは基本的にスタッフのツイートや単行本や商品販売の情報などがメインなので、さらに深く小山先生自身の情報や作品の裏話が知りたい人に向けて、月額500円のコヤチュー部プレミアムというファンクラブを作りました。

そのコヤチュー部プレミアムはラジオが聞けたりなどマニアックな情報を受ける事が主体のコミュニティですが、ファン同士のコミュニケーションをとりたい方の為に、コヤチュー部オンライン部室という月3,000円するコミュニティが更にあるんです。

オンライン部室だとファンの皆様が「宇宙兄弟の1巻を100万部達成させるぞ」などの目標を掲げ、その施策をファンが考えるといったことまである熱狂ぶりですよ。

連載や単行本を読んでる人、ツイッターフォローしてる人、無料メールマガジン登録者、コヤチュー部プレミアムのご参加者、コヤチュー部オンライン部のご参加者、といった様々なコミュニティがある中で、すべての人に向けて物販が存在しているといった感じです。

ーーなるほど、かなり綿密に組み立てられているんですね。

黒川氏:そうですね、どれもこれもファンの皆様と一緒に作っていき、今振り返ると一人の作家さんが中心となって、たくさんのファンとの繋がりが生まれたと思います。今までは作品がどれだけ好きでも、本を買う以外「好き」を表す行動があまりなかったと思いますが、作品が好きで、もっともっとっていう気持ちが集まれる場所を作っていきたい。そういう思いで作られています。

ーーEC事業者の中には集客施策や、購買率を上げるためにお客様の声、いわゆるUGC(User Generated Content)を活用している事もありますが、そういった狙いはあるのでしょうか?

黒川氏:結果としてコミュニティの人たちが広げくれた、結果としてハッシュタグで投稿してくれた。といった事はありますが、そこに狙いはありません。でも、熱狂している人たちが次の人たちを連れてきてくれるので、コミュニティの中の人から自然に広がっているということは体感しています。

志賀氏:本当に刺さる商品が作れた時にコミュニティでお知らせすれば、この商品いいよねとSNSの反応がとてもよくなりますね。

でも、拡散してくださいとか、このハッシュタグつけてとか、インフルエンサーの仕込みとかは、個人的にそのコンテンツに熱がない感じがするのでやりたくないんですよね。そのため僕らは、基本的に今いるお客さんにどれだけ熱狂してもらえるかで色んなものを考えています。

弊社の商品は受注生産品が多く、期間限定で販売して販売期間が終了した上で配送するので、購入から2か月かかってしまう事もあります。その期間があってもより宇宙兄弟を好きになって楽しんでお届けを待ってもらえるように、単純な配送をするのではなくお届けのダンボールとテープを宇宙兄弟仕様するといったことも行っています。

これは、少し待ちの期間があって期待値が膨らんでいた分、こんな特典あるんだ!とか、包装がこんなにかわいい!ってとても喜ばれましたね。そうやって感情のハッスルが最高点に達したタイミングで広めたい、共有したい。そうやって自然にできたコンテンツは心から嬉しいし、やって良かったといつも思います。

コルクストアオープン 今後の展望

MD事業部プロデューサー志賀遊大氏

ーーコルクストアをオープンして所感はいかがでしたか?

志賀氏:好きな作家の商品を目的にコルクストアにいらしたお客さんが別の作家の商品も買う「あわせ買い」のケースが比較的多く起きています。これは、しっかりとサイトを作り込んで記事やコラムなども出しているので、サイト上で購入意欲が高まるということが起きているのではないかと思っています。

また、これまで商品化が少なかった為か、小説家(平野啓一郎氏、品田遊氏)の商品が人気ですね。作品の持つ世界観を商品に落とし込むこと。先程お話したリアライズが上手く伝わったのではないかと思っています。

ーー今後とも様々な作品をコルクストアに取り入れて、御社の仕組みやノウハウを活用して広げていくと思いますが、作家さんの選定基準などはあるのですか?

志賀氏:感覚的な話になりますが、作品をとにかく好きだったり、一緒に広めていきたいと思えるような作品とご縁があったらまずはご一緒したいですね。

ーー最後になりますが、色々な作品が御社に集まった先に御社が目指している物は何でしょうか?

黒川氏:最初にお伝えした弊社ミッションの通り「物語の力で、一人一人の世界を変える」事です。リアライズやコミュニティ作りはいわゆる手段であって、そういった事を通して一人一人の人生が良い方向にいけば良いなと思っています。

例えば宇宙兄弟を読んで宇宙飛行士にならなくても、自分がやりたかったことや、諦めていたこともう一回やってみるきっかけになる。作家さんが生み出した作品がそういった人生の分岐点になる世界の実現を目指したいです。

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記者プロフィール

小林俊也(kobayahi toshiya)

新規事業開発室所属。ECサイト・EC支援事業者両社向けに価値のあるサービスを開発できるよう日々奮闘しています。

何かご要望あればお気軽にお問い合わせください。

mail :t.kobayashi@ecnomikata.co.jp
Twitter:@ecnomikata_tk

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