サービス拡充が続くeBay。越境ECはもっと安心で楽しくなる
「eBayでつながる、世界が広がる」
これは2021年9月5日まで関東圏のJR線車両内で流れていた、「eBay(イーベイ)」の電車内ビジョン広告のフレーズだ。世界中と取引する楽しさを訴求した明るいメッセージは、多くの人の目に止まったことだろう。
この動画広告がリリースされた背景には、「人々の暮らしを豊かにしたい」という想いがあった。コロナ禍で変化した市場、進化するeBayのサービス、そして売り手と買い手にいま伝えたいことを、イーベイ・ジャパン株式会社 マーケティング&オペレーション部 部長 ヒックリン ジェームス氏に伺った。
動画広告で世界とつながる楽しさを訴求
まずは実際に放映された動画を見てみよう。
日本人男性がeBayでカメラを出品。商品はやがて海外のバイヤーの目に留まり、売れたら箱に商品とメッセージカード、そして折り鶴を封入し、空輸で購入者のもとに届けられる。越境ECにおける一連の流れが、ポジティブなトーンで描かれている。
インテリアに日本を表すダルマが配置されたりと、随所に散りばめられた遊び心は、イーベイがグローバルで展開するクリエイティブの特徴でもある。
ヒックリン氏:「折り鶴は日本文化や、おもてなしの心を表現するアイテムです。実際にこういった同梱物は、海外のバイヤーにとても喜ばれます。
今回の商品として登場したカメラは、日本の海外向け取引でトップ5に入る人気ジャンルです。日本には一眼レフなどのデジタルカメラだけでなく、フィルムカメラやアフターパーツなどの在庫も多く、海外からのニーズが高いです」
このような大規模な動画広告を出稿するのは、イーベイ・ジャパンとしては初の試みとのこと。車両内にモニターがない路線には、ポスターを掲載した。
感染対策のため、ヒックリン氏らマーケティングチームは撮影ディレクションをリモートで実施。ビジュアルはもちろんのこと、シンプルで力強いメッセージが伝わるよう、コピーにもこだわった。
広告の主目的は、サービスのブランディングである。越境ECは売り手、買い手、商品で成り立っている。eBayのマーケットプレイスを利用することで、人と人がつながる楽しさをしっかり見せることにこだわったそうだ。
これまで同社が出してきた広告は、どちらかと言えばセラー獲得を意図したものがメインだった。だが今回はeBayというマーケットプレイスそのものの魅力を表現。eBayを知らない人たちからの認知度を高めるだけでなく、すでにサービスを利用している人たちを応援する狙いも含まれている。実際に現役のセラーからも、SNSでかなりの反響があった。
ヒックリン氏:「コロナ禍にあっても、電車に乗って通勤・通学されている方は多いでしょう。こんな時代だからこそ、見た人にハッピーを届けられる動画にしたいと考えました」
成長する越境EC市場。高額取引も増加
2021年もコロナ禍による巣ごもり需要は世界中で続き、越境EC市場は成長を続けている。
ヒックリン氏:「イーベイ・ジャパンは大企業、中小企業、個人事業主から個人まで、全ての人をサービスの対象としています。昨年からは個人向けのサポートを強化していますが、それに伴い市場全体も伸びています。中でも日本の商品は、世界中のバイヤーから注目されています」
eBayにおいて近年特にホットなのがトレーディングカード。もともと貴重なカードは高額で取引されるが、第三者によるスコアリングは信頼度が違う。真贋鑑定とグレーディングを行うサービス「PSA」が高評価を付けたものは、価格が数倍になるものも。これまで売買の中心だったコレクターだけでなく、現在では投資家たちも取引に参加しているという。
ヒックリン氏:「eBayでは真贋保証サービスをローンチするなど、お客様が安心して利用できる環境づくりに取り組んでいます。また、これまでは1回の取引における決済金額の上限は100万円でしたが、新しい決済システムを導入し、100万円以上の商品を販売できるようになりました」
その影響もあり、腕時計やカメラ、ギター、カーパーツなどの高級商材が盛り上がっている。セラーにとっては、今まで以上に出品できる商品の幅が広がり、大きな売上を稼げるようになった。人の移動が制限され、国内需要が冷え込む中、海外市場にはチャンスが眠っているといえる。
真贋保証や機能改善で、安心して取引できるサイトへ
イーベイ・ジャパンではユーザーがより使いやすく、より安心して売買できるよう、機能のアップデートや新サービスのリリースを随時実施している。
先述の真贋保証サービスもそのひとつ。
2,000ドル以上の腕時計を売買する場合、取引が成立したら、セラーはeBay運営の鑑定所に商品を送付。そこで鑑定士が商品をくまなくチェックし、独自の鑑定カードとセキュリティタグを付けてバイヤーに発送する。返品時にバイヤーが偽物にすり替えるのを防ぐため、返品の際も鑑定所を通過する仕組みになっている。鑑定費用は全てeBayが負担、配送はもちろん保険付きだ。
ヒックリン氏:「海外取引において『本物を買える』という安心感は非常に大きいです。リスクを大幅に抑えることができるため、いま中古の高級時計の市場が盛り上がっています。先日はロレックスの腕時計が600万円で売買されていました」
現在、日本向けの真贋保証サービスは腕時計ジャンルのみの取り扱いだが、海外では高級バッグやスニーカーなど他の商品ジャンルも対象になっている。今後のサービス拡充に期待したい。
他には今まで一部のセラーだけに開放されていた日本語サポートだが、本年7月に日本語の問い合わせチームを海外に増設しセラーポータル(セラー専用の管理ページ)から全セラーが利用できるようになった。英語が苦手でも気軽に海外取引にチャレンジできる。
そのセラーポータルは、2021年の夏にVer.5.0をローンチ。サイトのデザインをリニューアルしたのに加えて、セラーのステージに合わせて情報を出し分けしたり、検索のファンクションを強化するなど、利用者が求める情報を探しやすくなった。これらの改修は、ユーザーへのアンケートやヒアリングによって集めた声をもとに行われた。
面白いリリースでいえば、トレーディングカードにおける、コンディションのガイドラインを制定。カードの角やフチ、汚れなどの9項目をそれぞれ5段階でスコアリングし、それを表示することで、セラーとバイヤーの商品状態への認識祖語を減らすのが目的だ。
ヒックリン氏:「最近ではロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手の活躍により、トレーディングカード市場でもランキングが急上昇しています。フットワークが軽くトレンドがすぐに価格や売れ筋に反映されるのも、個人セラーが多く活躍するeBayならではの特徴ですね」
充実したサポートで越境ECを支援
現在イーベイ・ジャパンでは、11月末のサイバーウィーク や年末商戦に向けて、さまざまな準備を進めている。さらに新規のセラー向けのサポートプログラムを強化し、ウェビナーを定期的に開催するなど、教育コンテンツの充実にも取り組んでいる。
ヒックリン氏:「当社では現在ブランディング、認知拡大、セラー獲得、サポートの全てに力を入れています。日本国内でECを運営しているけどまだ越境に着手したことがない、またはノウハウがない事業者様など、そういった方々をサポートできる環境を整えたいです。越境ECは想像以上に簡単で、言語の壁もなく、日本よりも高く売れる。そんなストーリーをどんどん生み出していきたいですね」
売買市場としての日本は、いま世界から注目されている。品質に優れた日本の商品は、eBay全体の中でもとりわけ人気があるそうだ。商品の売り場を探している事業者は、ぜひeBayへの出品を検討してみてほしい。
ヒックリン氏:「『全ての人の生活を豊かに』というのが当社の目的です。これまで以上にサポートを充実させ、売り手も買い手も安心して取引できる環境を整備して、eBayファンを増やしていきたいです」