サイズや形状がバラバラな商材の出荷も機械化! 余剰人員でチェック体制の強化や社内教育も

野中 真規子

株式会社スミレ・ジョイント・ロジ 代表取締役CEO 山口 耕平 氏

通販向け自動梱包機専門メーカーの株式会社シプソル(以後、シプソル)は、物流業界での経験豊富なメンバーが、物流コスト削減に効果的な梱包作業の自動化を、現場に合わせてフレキシブルにサポートしている。今回は、同社の機械を導入して効率化に成功したという株式会社スミレ・ジョイント・ロジ 代表取締役CEO 山口 耕平氏に、シプソルの自動梱包機の魅力やサポート体制などについて伺った。

出荷量の急増と、労働人口の減少にともない、機械化を決意

――まずは株式会社スミレジョイントロジさんの事業概要を教えてください。

平成3年に創業し、当初は運送業を行っていましたが、15年前からEC通販物流業に切り替え、現在はBtoBとBtoCの物流業務を行っています。

取り扱う商品はファンシー雑貨、フィギュア、アパレル、文具、イベント什器、工業用部品までと幅広く、サイズも手のひらに乗るメモ帳から、高さ2m×長さ5mの工業用機械などさまざまです。

――シプソルさんの自動梱包機を導入する前の課題はどのようなものだったのでしょうか。

以前は人海戦術で受注から出荷まで行っていましたが、ECの需要が増えて、1日100件から1000件、2000件、3000件と出荷量が急速に伸びていく中で、効率化の必要に迫られていました。また当社で扱っている商材は形状やサイズがバラバラ。入荷のたびに出荷の作業フローを構築し、準備をし直す手間がかかり、リードタイムを伸ばさずに対応するためには、自動梱包機を導入する必要があると感じました。

またいろいろな機械メーカーに話を聞く中で、「機械化をしてもさほどメリットは出ない」と言われることもありましたが、労働人口が減少する中で、早いうちからスタッフが機械に慣れるための教育を行っていく必要があるとも感じ、導入を決めました。

商材や業務フローの特徴に合わせて、予算内で機械を最適化

――数多くの機械メーカーがある中で、シプソルさんを選んだ理由は何でしたか。

何年もかけて、ダンボールの組立やシュリンク、ベルトコンベア、仕分けなどいろいろな機械を調べ、見て回りました。大型で億近くの金額が必要なものや、少量多品種でサイズや形状もいろいろな取り扱い商材に対して、設定に都度時間がかかるなど、機械にこちらが合わせなくてはならないようなものは、当社には合わないと判断しました。

そんな中、2020年5月に、シプソルさんの自動梱包機をネットで見つけてコンタクトを取ったところ、すぐに担当の方が訪問してくださいました。「ありのままの要望を聞かせてください」と言ってくださったので、当社の取り扱い商材の特徴や現状の物流フロー、どこをどう効率化したいのかをざっくばらんにお話ししたところ、希望の予算内で最適な機械を構築してくれることになりました。予算は5000万円超も覚悟していましたが、3000万円強と、だいぶ抑えることができました。

――導入はスムーズにできたのでしょうか。

はい。設計の段階で、当社の過去の事例から、商品ごとのサイズ感、強度などをシプソルさんに情報共有し、全体の中でもウエイトを占めている複数の商材にサイズ感を合わせてくれたり、資材の質も検討してくれたりなど、導入メリットが最大限出るように調整していただきました。商材のラインナップがいろいろあるので、かなりわがままを言いましたが、これまでお話しした機械メーカーの中で一番思いを汲み取っていただけたと思います。契約から稼働までは3〜4ヶ月くらいでした。導入したのは「ランダム封かんライン」で、既存のシュリンク包装機に送り状を貼る機械もつけました。

社内的にも、機械導入に際して現場スタッフの共感を得ることに注力しました。どこの物流現場でもそうだと思いますが、スタッフとしては機械導入のメリットが出るとわかっていても、そのぶん自分の仕事が減ってしまうという懸念があると思います。

しかし全てを自動化した大量生産工場の機械とは違い、物流ラインの機械では必ず人の手はかかります。機械をどの速度で稼働させるか調節したり、商材が転がり落ちたときに拾ったり、エラー時に取り除いて復旧させたり、資材の補充や交換をしたりなどの作業は人間でないとできません。ですから当社では、機械を入れることで工程が減りスピード上がるというメリットをスタッフに説明しつつ、誰も解雇しないという宣言をしました。

送り状の発行やチェック作業が大幅減!社内教育の時間が増えた

――導入後はどのような変化がありましたか。

送り状を機械が自動的に出してくれるので、送り状の発行作業がなくなり、現場への受注投下スピードが早まり、送り状と納品書の付け合わせ作業もいらなくなりました。

また当社の物流業務はチェック項目が非常に多く、以前は上流から下流までスタッフが多く携わっていました。人が多く関わるほどにミスが増えていく可能性も増えるわけですが、機械の導入後は、ある程度の部分を機械に任せることで、余剰スタッフをクオリティチェックに充てられるようになりました。その日に届いた商材について、作業フローや人数を考えなくてはならない範囲も狭くなり、時間に余裕ができたので、社内教育やコミュニケーションの機会も増えました。

取引先企業にも、機械導入によって生産効率が上がったことをお伝えできるようになったことはメリットでしたね。

――トラブル時のサポート体制についてはいかがですか。

遠隔カメラを設置しているので、シプソルさんに電話で問い合わせれば、ミスやトラブルの原因がすぐわかり、スピーディーに回復できています。

大手の機械メーカーでも、もちろんメンテナンスサポートはやってくれますが、都合が合わず、半日、1日とかかることもある。しかし長く機械がストップしてしまうことは当社にとって死活問題です。その点シプソルさんでは遠隔で指導やサポートをしていただけるので、現場スタッフだけで復旧できることも多くあります。

とくにトラブルがなくても、一定の出荷量を超えた段階で点検にも来ていただけるので安心です。

物流現場が本当にやりたいことを形にしてくれる会社

物流現場が本当にやりたいことを形にしてくれる会社

――シプソルさんへのご要望や、機械化を検討しているEC事業者さんへのメッセージはありますか。

当社の商材は多品種でサイズや形状もいろいろあるので、機械化した現在も、最終的にはものを箱に入れるために人の手が必要です。今後この業務の精度をさらに上げ、高速化するために、ロボットアームのような機械も設計していただけると嬉しいですね。

現在シプソルさんには2つめのレーンの構築をお願いしています。期待通りにものを作ってもらえるという信頼感があるので、2つめの導入を決めるのは早かったです。

ここ10年くらいいろいろなメーカーの物流機械を見てきましたが、機械に物流現場が合わせなくてはならないものがほとんどでした。その点、シプソルさんは、物流現場が本当にやりたいことを、形にしてくれるメーカーだと思います。

――ありがとうございます。今後の展望をお聞かせください。

コロナ禍もあり、通販需要が伸びている現状の中、どこの物流企業もそうだと思いますが、人の確保とリードタイムの短縮、業務の精度を上げていくことは課題となっています。とくに2025年に労働人口が減っていくと言われている現状で、できるだけシプソルさんとも協力しながらよりいっそう自動化を進めていきたいですね。

また今後、いろんな企業が自動化をはかるようになると、機械に対して今とは違うレベルの要望も出てくるでしょう。せっかく機械を入れてもトラブル時の操作や原因究明などがわからなければ、安定稼働をさせることはできません。そこで当社では自社の経験を生かしながら、機械に対する人間の経験値を上げる教育にも注力し、知見を増やしながら、次の時代へのニーズに応えていけたらと考えています。

梱包機の相談はこちら


記者プロフィール

野中 真規子

ライター。著書(電子書籍)『片付けられない、という「思い込み」をなくして、今すぐ片付けるための本』(ハウスキーピング協会)が好評発売中。ECのミカタにおいては、ECサービスのお話から伝わる本質的なメッセージを受け取り、拡散することが歓びです。

野中 真規子 の執筆記事