常に変化を繰り替えるEC市場では、2022年以降は大きなパラダイムシフトが進行する!?

ECのミカタ編集部

常に変化を繰り替えるEC市場では、2022年以降は大きなパラダイムシフトが進行する!?

ECを取り巻く環境は、目まぐるしく変化を遂げていく。その変化は、テクノロジーがけん引することもあれば、消費者自身の行動変容によってもたらされることもある。いずれにしても、その変革に対応できなければ、EC事業者に未来はない。本特集で今後のEC事業者のあるべき姿を考察するとともに、特に本号では、重要性を増す「集客」「接客」について考察していくこととする。

日本のEC業界、30余年の変遷をたどる

―PCの普及とインターネット利用者の増加が、ECビジネスを後押しした

日本におけるECの黎明期は、1990年代後半といわれる。

1991年にバブル経済が崩壊したといわれ、日本経済はリセッションに直面し、長らく低迷することになる。そして、後に1990年代の約10年間は、「失われた10年」と揶揄された。

こうした時期に日本のEC市場は立ち上がったのである。

その背景には、PCの低価格化が進み、ビジネスシーンはもちろん、一般家庭にもPCが普及したことと、インターネットの利用人口が大きく増えたことがあるようだ。

1996年にはショッピングモール「楽天市場」がオープンし、2000年には米国で急速な成長を遂げていたAmazonが日本に上陸し、EC市場は一気に活性化していくことになるのである。

―2000年代以降、順調に拡大し続ける日本のEC市場

2000年代に入り、EC市場は成長基調に乗ったが、ECに不慣れな消費者の中には操作ミスなどのトラブルも増えた。その対応として「電子消費者契約法」が2001年に施行され、さらに消費者の間に個人情報の漏洩リスクに関する意識が高まったことを受け、2005年に個人情報保護法が施行されるなど、ECの成長に伴う各種の法整備なども進んだ。

これは、市場拡大に伴う成長痛といっても過言ではないかもしれない。

―スマートフォンの普及で、ECは新たなステージへ

2008年にiPhoneが日本で販売され、翌2009年に日本国内初のAndroid搭載スマートフォンが発売された。

スマートフォンの世帯保有率は2010年時点で10%に満たなかったが、2019年には8割を超えた(総務省「令和2年版 情報通信白書」より)。このようにスマートフォンが情報端末の主役になっていく過程では、ECもスマートフォンを主要媒体として事業展開の変換を余儀なくされていったのである。

PC経由とスマートフォン経由のEC市場をそれぞれ比較すると、2015年に27.4%だったスマートフォン経由市場は、2020年には50.9%と、EC市場の半分以上にまで普及している。

―コロナ禍を背景に、ECは新たな成長ステージへ

そして2020年1月以降、日本はコロナ禍に見舞われた。外出を制限されることが多くなったことに伴い、ECが爆発的な成長を遂げることとなった。

リアル店舗の売上低迷を受けて、ECに進出する小売店も増えた。EC市場における競争ステージも、パラダイムシフトの様相を呈しているのである。

データでたどるEC市場の変化

データでたどるEC市場の変化

―2020年からは、市場成長スピードが加速する

経済産業省の「令和2年度 産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)報告書」によれば、物販系のBtoC-ECは、2013年以降着実に市場を伸ばし、EC化率も毎年着実に高まっている、2019年までは、毎年1ポイントに満たない伸び方であったのに対し、2020年は、前年の6.76%から8.08%と、1ポイント超の伸び率であった。

金額規模でいっても、2019年の100,515億円から、122,333億円と、121%もの飛躍的な伸びを示した(過去数年は対前年で108%前後の伸びが続いていた。※図1参照)。

コロナ禍の影響もあるが、今までとは明らかに違う伸び方をしている。2022年も同様に大きな伸びを示すだろうことは想像に難くなく、そうなれば、EC市場での競争も激化していくことは明らかで、新規顧客獲得競争が激化し、既存顧客の抱え込み戦略がより重要性を増すことだろう。

―“スマートフォン主流”が今日の顧客理解のキーワードとなっている

経済産業省の「令和2年度 産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)報告書」(図2)によれば、スマートフォン経由のEC利用率は、2020年でEC全体の50.9%。もはやPCなどの利用を上回り、金額ベースでも6兆円を超えているのである。

わずか数年前には、“モバイルフレンドリー”などが提唱され、Webサイトをスマートフォンでの閲覧に最適化すべき、といわれていた。しかし今日では、スマートフォンを接触デバイスの主流として、商品の見せ方や接客の方法などを最適化することが重要になっている。対象デバイスすら、大きくパラダイムシフトしているのである。


―コロナ禍を契機に、ECの売れ筋商品分野も変化を余儀なくされている

2019年時点では、物販系BtoC-ECの売れ筋商品分野は、衣料・服装雑貨等が19,100億円で1位であった。次いで生活家電・AV機器等が2位、僅差で食品・飲料・酒類が3位であった。対前年比の伸び率も、107%~110%程度であった。

ところが2020年では、生活家電・AV機器等が23,489億円で1位となり、衣料・服装雑貨等が2位、次いで食品・飲料・酒類が3位となった。「巣ごもり消費・プレミアム消費」というキーワードが2021年ごろから注目されているが、こうした消費者の購買嗜好やマインドを把握しないと、ECビジネスの成長はあり得ない時代になったということを、改めて認識すべきだろう。

マーケットの変化に対応するには、業務フローを見直さねばならない

―成長のために、“今”の実態を把握することが、スタートとなる

ECに限ったことではないが、多くの企業は、“問題なく業務が回っている=うまくいっている”と考えがちだ。

しかし、企業を取り巻く環境が大きく変革している状態にあっては、“問題なく業務が回っている=旧態依然”であり、環境変化に迅速に対応した競合企業に顧客を奪われることにもなりかねない。

たとえばDXへの取り組みが際たる例だ。旧態依然の企業は、紙の書類と印鑑という業務システムに疑問を感じず、“回っているから問題ない”と考える。しかし、隣の競合はDXを推進し、ペーパーレスに移行することで、業務フローを大きく改善した。その他にも、多様なDXに取り組むことで、業務フローそのものが大きく改善し、間接部門のコストを大幅に削減でき、その分を新商品開発に投下し、ある時、斬新な新商品のリリースによって、事業を大きくグロースさせた。そういうことが現実になる時代である。

EC市場や、ECを取り巻く環境は、コロナ禍の影響もあって、急速にパラダイムシフトを起こしている。

その状況下では、“回っているから問題ない”は、将来の“負け”を意味する。

まずは、現状の業務フローを見直して、リ・エンジニアリングすることから始める必要がある。

―ECビジネスを構成する要素を俯瞰しつつ、各ファンクションを市場環境に最適化させる

一口にEC事業といっても、取り扱い商材や、狙っているターゲット層などによって、業務フローや改善ポイントは千差万別であろう。

ただ、基本的なフローについては大きく変わるものでない。ここでは一般的なECの業務フローをベースに考えたい。

一般的なECの業務フローは、およそ図4の通りである。
ビジネス展開においては、①事業計画は必須である。EC専業である場合は、経営計画と同義となる。マーケットやターゲット層の設定、中長期の数値計画などを具体的にまとめ、常に行動指針とするものである。

事業の全体像をプランニングできたら、次に重要なのは②商品開発である。実際に商品開発を行うに際しては、やはり市場(ターゲットとなる消費者)についての理解が重要となる。ここを明確にすることで、“どんな商品開発が有効か”がある程度見極められる。

また、ターゲットが明確になれば、③どんなECサイトにすべきか(クリエイティブ)、⑤どんな集客方法が効果的か、来訪したユーザーに対して⑥どのような接客をするとCVが向上するのか、といったことも、ターゲットを軸にプランニングすることができる。

サイトで購入に至らなかった見込み顧客を⑧どう追客するか、あるいは購入に至った顧客に対して、⑦迅速に商品をお届けするためのバックヤードの効率化も必要だろう。

また、さらなるアップセル・クロスセルを促進するために⑧どう追客プロモーションを展開するか、ということも考えなければならない。当然に④CRMも重要な施策となる。

本来であれば、こうした各ファンクションを一つずつ取り上げたいが、今号では、特に重要な「集客」と「接客」についてクローズアップする。

ECビジネスの根幹となる「集客」の変化に注目せよ!!

さまざまな規制ルールの変更、テクノロジーの革新による消費者の行動変容や競争環境の変化など、EC事業者の「集客」に関する対応にも、大きなパラダイムシフトが求められる時代になってきている。

EC事業者の意識しておくべき「集客」を巡る環境変化について触れていきたい。

―統合型検索エンジンの台頭と、SEOルールの変更をチェックする

2010年7月、グーグル株式会社とヤフー株式会社が、日本における検索情報での提携を発表した。ヤフーが検索サービスにおいて使用している「検索エンジン(インターネットに存在する情報を検索する機能)」と、「検索連動型広告配信システム(検索キーワードに連動した最適な広告を検索結果と併せて配信するシステム)」をGoogle Inc.の使用するエンジンおよびシステムに切り替えたのだ。

従来は、検索エンジンごとにSEO対策を施すなどしていたものが、統一的に処理できるという点では効率改善につながるが、グーグルのアルゴリズムで上位表示のルール・条件などが変われば、迅速に対応することが必要となった。

―インターネット広告の急拡大と、インターネット広告費の高騰問題

2014年以降、日本における広告費全体のうち、インターネット広告が占める割合は年々大きくなってきている。

2019年と2020年を比較すると、広告費全体は大きく減少しているにもかかわらず、インターネット広告は2019年を上回っている(図5)。

ECへの新規参入が増えたことで、インターネット広告の需要が高まっている。またECに限らず、大手企業などもTV媒体などに代わる効果的な広告媒体として利用が進んでいるという背景もあり、インターネット広告の出稿単価が高騰する傾向も出てきている。

しかしその一方で、EC事業者にしてみれば、インターネット広告の効果が低減する傾向も散見されるようになってきている。

EC事業者にとって重要な指標であるCVRはもとより、インプレッション数、CTRなども低迷し、費用対効果に見合わない、という事業者も出てきている。

数年前から、「新規顧客獲得よりも、既存顧客の優良顧客化」が重要なEC戦略だといわれるようになってきたのも、こうしたインターネット広告の相対的な費用高騰が背景にあるようだ。

もちろん、既存顧客は一定の割合で離脱していってしまうものだ。その分を補えるだけの新規顧客の獲得も並行して実施しなければならない。

そのため、単純なインターネット広告の出稿という方法に限定しない集客方法などを工夫する必要に迫られているといえよう。

―コンテンツマーケティングが注目され、オウンドメディアが乱立した

コンテンツマーケティングとは、いわゆる広告ベースの集客ではない。ターゲット顧客に有益な体系的情報(コンテンツ)を発信することで、ターゲット顧客を商品広告に頼らずに集客する手法である。

例えば、家具などを販売するEC事業者がインテリアコーディネートなどについての情報(コンテンツ)を発信することで、家具を含むインテリアに関心のある消費者を誘客する。インテリアコーディネート関連情報から、自社の商品に誘導するような導線が設定される。

こうした情報を自社のECサイトに掲するケースもあるが、そもそもが「自社ECサイトへの集客」が目的であることから、ECサイトとは別に情報専門サイトを立ち上げることでコンテンツマーケティングを展開するEC事業者も多く存在する。この場合の専門情報サイトが「オウンドメディア」といわれるもので、自社が所有するコンテンツサイトというわけだ。

自社商品と親和性の高い、幅広いコンテンツ提供ができれば、潜在顧客を集客することが可能になる手法である。

―薬機法の改正により、規制が強化された

薬機法の一部が改正され、2021年8月1日から新たに課徴金制度が加わった。新設された課徴金制度では、虚偽・誇大広告を行った企業などに対し、該当商品売上高の4.5%を課徴金として納付することを命じることが決定している(課徴金対象期間中の該当商品の売上が対象)。

正式名称を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」という「薬機法」は、その対象となる商品の幅が広く、化粧品や医薬部外品、さらには“医薬品的な効果効能を標榜した”場合は健康食品も対象となるとされている。

関連商材を持つECにとっては、万が一にでも“違反”という事態になった場合には、大きく損失を被ることになるので、細心の注意が必要だ。


―サードパーティーCookieの規制が本格化する

ネット上での既存顧客や潜在顧客などの行動をトラッキングすることで、広くユーザーの情報を分析・活用できるサードパーティーCookieは、EC事業者にとって集客の肝であったといっても過言ではないだろう。

そのサードパーティーCookieは、今後は使えなくなるのである。

Cookie情報も保護すべき個人情報であるという観点から、日本でも2022年4月に改正個人情報保護法が施行され、一定の規制がスタートする。

そのため、これまでサードパーティーCookieを集客に活用していた企業は、そもそもの集客戦略を転換せざるを得ない。既にこれに代わる多様なサービスなども登場してきており、早め早めの対策が不可欠な状況になってきている。

―集客工場の鍵は変化への迅速な対応

目まぐるしいほどに新しい技術やツールが導入され、SNSサービスが多様化し、それに伴って消費者行動の変容が著しい現代。

EC市場はなおさら変化が激しい。そのEC市場で優位性を発揮し、事業を成長に導くためには、市場の変化や先進のテクノロジーを駆使した新サービスなどを使いこなせなければいけない。きちんと必要な情報を収集し、その中から自社に最適なサービスやツールを選び取ることで、自社ECの競争力を高めていくことが、これからの成長のためには必須の条件だといえよう。

時代は、パーソナライズ化された接客へシフトしつつある

―レコメンドエンジンは「あって当たり前」の時代に

ある商品を閲覧していると、「この商品を購入した方は、こんな商品も」とアップセル・クロスセルを促すレコメンド。昨今のECサイトで、あって当たり前といっても過言ではないだろう。

しかし、どのようにしてレコメンドするかは、以前のレコメンドエンジンと、昨今のレコメンドエンジンでは、必ずしも同じではない。

かつては、自社の顧客の商品購入履歴などを元データとして、A商品の購入後に、B商品を購入している顧客の割合が高ければ、それをレコメンドしていた。

しかし昨今では、単に誰がどんな商品を買ったかの関連性だけではなく、その顧客はどのページ(どの商品)を見たか、どのような回遊経路をたどってその商品の購入に至ったのかなど、個々の顧客の行動履歴なども解析して、レコメンドに反映させている。

Web接客について考える際、個人のアクションをきちんと把握・分析できているかどうかが、レコメンドの精度を上げるポイントになってきている。

―リアル店舗とシームレスに連携して顧客ニーズに対応するオムニチャネル

リアル店舗とEC、どちらも展開している事業者なら、「オムニチャネル」は重要なキーワードになっていたことだろう。

しかし今日では、オムニチャネルですら、十分ではないといわれている。

昨今、このような事業者に求められるのは、OMO(Online Merges with Offline)だ。

オムニチャネルは、リアル店舗とECを明確に分けて考えた上で、それらの全てのチャネルを統合して、顧客との接点を多元化しようという考え方・戦略である。ある意味で“企業の都合”が優先されるチャネル統合といえるかもしれない。

これに対してOMOは、デジタルデータに基づいて、オンラインとオフラインを融合させ、顧客のあらゆる体験(UX)をどのように最適化するか、という視点でサービスを開発することを意味する。

ユーザーは、スマートフォンから目的の商品にたどり着き、もっとも便利な近隣の店舗での商品受け取りを設定し、自分の都合に合わせて、商品を取りに行く。もちろん、決済もスマートフォンで完結している。

リアル店舗とECを融合させるなら、OMO戦略をデザインし、それにふさわしい接客の仕組みを取り入れなければ、今後の競争には勝てなくなるだろう。

―スマートフォン起点のUI・UXを革新することがZ世代を吸引する

生まれた時からインターネットでの情報収集が当たり前で、最もトレンドに敏感になる年頃いわゆる「Z世代」は、スマートフォンがデジタルツールとして日常に存在し、これでほとんどの消費行動が完結する。

ECにおいても同様に、スマートフォンで商品を探し、スマートフォンで購入するのが当たり前の世代である。

スマートフォンにおける顧客体験(UX)を期待以上のものに設計し、かつ簡便でスピーディな操作性(UI)を備えていないと、Z世代には響かない。

当然に接客も、スマートフォン上で最適化されていなければならない。

―Web接客ツール/MAツールの活用が必須の時代になった

顧客体験をどうやって期待以上のものにするか。この課題に有効なのがWeb接客ツールである。

また顧客を理解して売上向上施策を効率的に展開するのがMAツールだ。

競争が激化している昨今のEC市場においては、競合間の顧客の奪い合いが激しくなっており、来訪してくれたユーザーをどうやってもてなし、顧客になってもらうかが、重要な顧客戦略になっている。
Web接客ツールというと、チャットボットなどが代表的だが、昨今はAIによる高度な接客が可能となっているものも少なくない。

さらに進化したAI型のチャットボットの場合、顧客がサイト内をどう回遊したか、これまでの購買履歴などに基づいて、かなりパーソナライズ化されたコミュニケーションが可能になっているものもあるため、自社ECにマッチした接客ツールを積極的に導入したいものだ。

MAツールは文字通り、マーケティングをオートメーション化してくれるツールだ。多様なコミュニケーションツールを駆使して、顧客のアップセル・クロスセルを促進することができる。新規顧客の獲得以上に、既存顧客のナーチャリングの重要性がいわれている状況では、ぜひ使いこなしたいツールといえよう。

―ライブコマースなど動画コンテンツを活用するECが勢いを増している

YouTubeやInstagramなど、動画を有効活用できるSNSツールが多様化したことで、ECでも誘客・接客に積極的に動画コンテンツを導入する動きが活発化している。

化粧品であれば、メイクアップのコツを発信したり、アパレル系であれば、着こなしを動画で紹介したりするなどの活用がなされている。

商材による向き・不向きはあるものの、動画コンテンツやライブコマースなどと親和性の高い商材を扱っているのなら、ぜひ活用を検討したい。

―SNSの多様化とともにユーザー・コミュニケーションは変化する

前述したとおり、SNSツールが多様化している。LINEやFacebook、YouTubeやInstagram、Twitterなどなどは、ECにかかわらず人々の生活に浸透している。

多くのEC事業者が、自社のターゲットを洞察した上で、複数のSNSを顧客接点として活用して集客を促進していることだろう。

ところが、どのSNSから流入してきたかにかかわらず、サイト流入後のコミュニケーションを含む接客は画一的であることが多い。

SNSには、それぞれに特徴があり、ユーザーの利用動機も異なれば、そこでの情報接触の温度感や、そもそも目的が異なっていたりする。

そのため、こうしたデジタルチャネルから自社のECサイトへ流入させたのなら、それぞれのSNSの特性にマッチした接客を施す必要があるはずだ。しかし現実には画一的な接客になりがちで、CVRが向上しないという弊害を生んでいる。

最近では、そうした流入チャネルごと、顧客ごとに個別性の高い接客・コミュニケーションを実現してくれるAIチャットボットなども開発されている。

より個別性の高い接客が必要だと感じたら、そうしたツールの導入も検討すべきだろう。

―パーソナライズ化が、これからのECの成長キーワードとなる

しばらく前から、EC業界では「パーソナライズ化」が事業成長のための重要なキーワードとして注目されてきた。
かつては、スポーツ用品メーカーが、デザインや色あいなどをサイトで自在に組み合わせて、自分だけのオリジナルのスニーカーを購入できるというサービスを展開し、注目を集めた。ある意味で、パーソナライズ化の走りといえるかもしれない。

しかしこれからのパーソナライズ化は、顧客の体験(UX)自体をパーソナライズ化していくことになるだろう。

既に触れたが、顧客の購買履歴やサイト内の行動を解析・分析して、極めてスピーディに接客内容を変更するようなAI接客ツールも存在する。

まさに、個々の顧客ごとに、どんなレコメンドをするか、どんなコミュニケーションをするか、をAIによってパーソナライズ化しているのである。

どのページへ行っても、いつも「何かお困りごとはありませんか?」と表示される接客と、サイトに再訪問した際には、「先日ご購入いただいた××は、いかがでしたか?」「ご満足いただけましたか?」と実際の購買行動などに基づいたコミュニケーションをとる接客と、どちらが優れたUXか…。比較するまでもないだろう。これからのECでは、間違いなく、「パーソナライズ化」は重要なキーワードとなるはずだ。

―サードパーティーCookieが使えない時代の顧客情報管理

多くのEC事業者が活用していたサードパーティーCookieが今後は使いづらくなる。

しかし一方で、自社サイトでのCookieデータ、いわゆるファーストパーティーCookieは、まだまだ活用が容易である。

既に触れた「既存顧客のナーチャリング」の重要性が高まれば、こうしたファーストパーティーCookieも活用の余地が広がることは間違いない。

それと同時に、全てのEC事業者が顧客情報管理のありようを見直して、どのようなデータを、どのようなシーンで活用するのか。改めて戦略的に考える必要があるだろう。

ECのミカタ通信vol.23 ~変化を遂げたEC市場!今後の”あるべき姿”とは~

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本記事は、2022年3月31日に発行された冊子「ECのミカタ通信vol.23」に収録されています。
EC事業者皆様の、今後の”あるべき姿”を追求するテーマの第一弾として、特に「集客・接客」について多くの取材記事を掲載しています。
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