Shopifyが広げたEC市場の裾野…国内カートの役割は?

ECのミカタ編集部

座談会参加者(前列左より) MIKATA株式会社 小林亮介、GMOメイクショップ株式会社 田村淳氏、株式会社イーシーキューブ 梶原直樹氏、株式会社フューチャーショップ 山本大介氏、(後列左より)W2株式会社 戎井亮一氏、株式会社ecbeing 斉藤淳氏、株式会社エートゥジェイ(メルカート) 座間保氏、カラーミーショップ by GMOペパボ 外山佳季氏

新型コロナウイルス禍の影響もあり、「Shopify」「STORES」「BASE」などの新興系ECプラットフォームが注目を集めた2021~2022年。国内カートシステム各社は「応戦」しているのかと思いきや、この状況を前向きに捉えているようだ。
今回ECのミカタ編集部では、「MIKATA FESTA」を機に株式会社イーシーキューブの梶原直樹氏のリクエストを受け、カートシステム7社での座談会を企画。「Shopify」が与えた影響から現在の国内市場についてなどまで、2023年のEC業界について、それぞれの思いを聞いた。前編はShopifyが与えた影響、現在の国内外のEC市場の違いについて。

ECの裾野を広げたShopify ただし合う合わないがある

──2017年に日本に参入したShopifyが、2021年は新型コロナウイルス禍によるEC事業参入企業の増加を受けて特に注目を浴び、2022年も各所で話題となっていました。実際のところ、Shopifyはやはり今も、国内EC市場に影響を与えているとお考えですか?

梶原(EC-CUBE) 勢力図に一石を投じた面はあるかと思います。ただ私たちとしてはShopifyを敵視しているわけではなく、Shopifyが入ってきたことによってEC業界全体が活性化した面に注目しています。ECカート黎明期から運営されている国内カートが多い中で、良い意味での刺激にもなりますし、世界に目を向けるきっかけにもなりました。また、彼らはコミュニティの作り方に長けているので、その点はコミュニティ活動を行う当社としては、参考になりますね。

山本(futureshop) Shopifyは、当社にとってはコンペティター(競争相手)色が強い存在です。とはいえECの裾野の広がりはあり、個人でECビジネスを始められる方も増えて、業界全体としては良かったのではないでしょうか。また、Shopifyはいろんなアプリケーションを開発しているサードパーティーやパートナーさんを巻き込むビジネスモデルですが、非常に洗練されていると思います。同業他社様ではSalesforce、EC-CUBEも似ていますね。

田村(MakeShop) 言うなれば完成品ではないものを出して、それを補完してくれるパートナーさんたちにマーケットを開放し、開発ベンダーや制作会社が活躍できるフィールドをあえて残しているというか。ただ私自身はShopifyをカートベンダーというよりペイメントの会社だと思っています。カートで稼がなくても、大きなGMV(流通取引総額)をつくり、いくらでも稼げる構図を用意していると思います。

戎井(W2) PR力に長けているのもShopifyらしさ。ECカート=Shopifyという構図を描かれているお客様は少なくないですよね。お客様からは(当社が)Shopifyとどこが違うのかという質問が増えました。私たちとしては自社の強みを一層明確にする機会を得たともいえるかと思います。

外山(カラーミーショップ) 確かに日本参入から1年ほどでシェアが広がり、Shopify特化の制作会社ができるなど、業界内では1つのトレンドになりましたよね。海外サービスとして「越境ECならShopify」と考える事業者さんも多いのかもしれません。

座間(メルカート) ユーザー様が「越境をやりたい」という思いをお持ちの時に、国内ベンダーとして、いかにそれを掬い取っていられるかという点は気にしなければいけないかなと思います。

斉藤(ecbeing) その点、Shopifyはグローバルな連携が充実していますよね。それと、「アマゾンキラー」といった呼ばれ方などは、ブランディングの上手さだなと思います。ただ現状で言えば、日本のECにも「合う会社」と「合わない会社」がハッキリあるというようにも感じます。

「効率よく買う」だけではない「日本の買い物文化」を強みに

「効率よく買う」だけではない「日本の買い物文化」を強みに

──国内のEC事業者が越境での展開を考える際に、もちろん海外ベンダーの強みはあるとは思いますが、ただそもそも国内外では「買い物文化の違い」があるとも伺いました。この点はいかがでしょうか。

梶原(EC-CUBE) そうですね。過去より、日本では海外に比べるとショッピング自体を楽しむ文化がより強いと言われていました。実際に海外のモールやサイトでは「早く届けます」「安く売ります」といった効率性が重視されるのに対し、日本らしいショッピングを楽しむような文化や体験の場をECサイトでも表現できないかとずっと考えていますね。

小林(ECのミカタ) 梶原さんがおっしゃるとおり、効率性を求めて追求しているのが海外勢だとしたら、日本人はショッピングを楽しむ文化を持っていると思います。これまでの実店舗が持ってきたおもてなしの考え方を、日本のEC事業者が実践していくことが、強みになると思いますね。ウインドウショッピングを楽しむように、ECでもそういうマーケットが展開される。加えてそのお店のファンになってもらうことですね。この点に関しては、日本のほうが上手なのかなと思っています。

山本(futureshop) futureshopのサービスという意味でいうと、ショッピングがエンターテインメント化しているという認識はありますね。機能的にもライブコマースを充実させ、従来のECサイトの中で検索して買うという体験から一歩進んだ体験ができるよう、サービス改善をすすめているところです。

斉藤(ecbeing) 日本のリピート通販系は海外勢と比べるとかなりきめ細やかですよね。定期購入系、リピートに特化したようなソリューションは海外ですと大味で、クーポンも割とシンプルなものばかりの印象があります。日本は「あなただけが使えます!」というものまであり、ファン化という観点では売り方やサービスが大きな違いを生んでいると感じます。

小林(ECのミカタ) メルマガの作り方とかも日本ならではというところがあって、One to Oneの対応も多い。これも日本文化の強みという気がしますよね。

戎井(W2) 最近の日本のEC市場でのパーソナライズやレコメンドなど、リアルでやってきたことをECにも転化するようなツールの増加を見ると、新たな文化が生まれつつあると思います。「頒布会」がECの方で持ち出されて本格化したりとか、お客様の事情や好みなどに合わせてレコメンドしたり、リアル接客をECでも実践するツールやサービスがより増えつつあります。それこそが日本ならではと思います。

外山(カラーミーショップ) 実店舗とECでの接客の境目が薄くなってきていると感じています。これは日本ならではの接客がECショップを作るときにも現れているということ。海外にはない日本の強みですよね。

座間(メルカート) ショッピングは「買う前が楽しい」「待ってるときが楽しい」「買ったこと自体が楽しい」という、それぞれ違う3つの体験があり、この3つの分け方に対しての最適な機能がまだ出てきていないと、提供側として感じています。もっとエンドユーザーをワクワクさせるようなECカートのシステム作りを今後していかなければいけないと感じています。

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