CS向上の“鍵”はテクニカルサポート、“専門部隊に任せる”新しい企業連携の形とは
IT関連サービスを提供する企業にとって、製品の操作方法や故障などに関する問い合わせ対応の品質は、ユーザーの顧客満足度(CS)を左右する。この高度な知識とノウハウが必要な“テクニカルサポート”の対応を、外部のプロフェッショナルに委託する動きが、徐々に拡がりを見せている。キャッシュレスや金融機関向けのプラットフォームサービスを提供するネットムーブ株式会社と、同社のテクニカルサポート業務を請け負う富士通コミュニケーションサービス株式会社(以下、CSL)に、業務委託の経緯やメリット、支援体制などについて話を聞いた。
年々高まるテクニカルサポートの重要性
――EC市場の拡大に伴い、製品やツールの機能・サービスが複雑化していますが、こうした状況をどう捉えていらっしゃいますか。
CSL 髙木和博氏(以下、CSL髙木) ITやDXの進化・浸透により、私たちはオンラインでショッピングを楽しんだり、サービスを受けたりする機会が増えました。ただ、便利になった一方で、予期せぬトラブルも増えています。そういった意味では、機器の操作方法や不具合などに関する、技術的なお問い合わせに対応するテクニカルサポートの重要性が高まっていると言えるでしょう。
CSL 菅野展江氏(以下、CSL菅野) テクニカルサポートは、一般的なお問い合わせ対応と異なり、高い専門性や豊富な知識、ノウハウが必要です。お客様にストレスを与えることのない、寄り添った対応も求められます。テクニカルサポートの成否は顧客満足度に直結するため、近年はその対応を専門企業に委託するEC事業者様が増えていると感じます。
――ネットムーブ様はどのような経緯でテクニカルサポートを外部委託されたのですか。
ネットムーブ 長嶋健一郎氏(以下、長嶋) 当社はキャッシュレス決済サービスや金融向けの認証・セキュリティソリューションを扱っていますが、10年ほど前に事業拡大のタイミングでCSL様にテクニカルサポートを委託しました。当時、他社に委託していたのですが、対応品質や精度にバラつきがあり、お客様のコールに十分対応できていませんでした。そこでCSL様に委託するようになりました。
――業務を委託するに当たり、こだわったポイントはありましたか。
長嶋 突発的に入電が増えてもそれに対応できる「応答率」と、お客様にストレスを感じさせない速やかで丁寧な「対応品質」の部分にはこだわりました。これらがおろそかになると、ゆくゆくは重大なクレームにつながるため、重点的な対応をお願いしました。
課題だった「応答率」や「対応品質」が改善
――テクニカルサポートを外部委託したことで、ネットムーブ様にはどのようなメリットがありましたか。
ネットムーブ 宇津木知子氏(以下、宇津木) 顧客の声(VOC)を的確にフィードバックしていただける点も助かっています。パソコンのOSやブラウザのバージョンが違うというようなことが原因で、こちらが意図しないお問い合わせが入ることもありますが、その際も聞き方を工夫してトラブルの原因究明に努めてくださっています。的確なフィードバックがあるからこそ、当社も迅速に改善・改良に取り組めるので、本当に心強いパートナーです。
CSL菅野 現場のオペレーターが気付いた事象を速やかに社内に共有し、クライアントにフィードバックする仕組みができているからこそ、こうした対応ができているのだと思います。ネットムーブ様は当社側の提案にスピード感を持って対応してくださいますし、その結果がCS向上につながっているのでしょう。
――お互いの信頼関係があるからこそ、10年間も関係が続いているのですね。
長嶋 変な話、細かい仕様やサービス内容についてはCSL様の方が詳しいですよね。
CSL髙木 逆に言うと、そこまでしなければテクニカルサポートを外部委託する意味がありません。ネットムーブ様とは毎月の定例会で情報交換をしながら二人三脚でサポート窓口を運営していますので、良い連携が続けられていると感じます。
CSL菅野 当社のオペレーターはテクニカルサポートの経験が豊富なベテラン揃いです。イレギュラーな事象が起きても、ユーザー視点で最適解を提案できることが強みですし、それができるのはネットムーブ様が当社を信頼して業務を任せていただいているからに他なりません。
――テクニカルサポートの外部委託で、当初の課題だった応答率や対応品質はどのように変わりましたか。
長嶋 委託当初、課題であったことがウソのように、今では悩みが解消されました。もう問題として会議やミーティングで議題に上がることもなくなりましたよ。本当によく対応してくださっているので、感謝してもしきれません。
宇津木 すごいと思うのは、どんなに突発的なトラブルがあっても応答率が通常時とあまり変わらないことです。当社サービスにおけるテクニカルサポートはお客様のPC環境ひとつで対応が異なるため、想定外のお問い合わせの増加に対応しづらいのですが、委託先をCSL様に切り替えてからはこうした不安からも解消されました。
CSL髙木 お客様の期待に応えるため、オペレーターは日々研鑽を積んでいます。対応の柔軟性や品質については当社の強みでもあるので、そういったお言葉は励みになります。
コア業務に集中できる環境づくりを
――クライアントの高度な依頼に応えるため、オペレーターの教育面ではどのような工夫をされているのですか。
CSL菅野 事前研修に力を入れています。コールセンター業務の経験がない人の場合は、入社後にPCの使い方や受電に関する基礎研修を行います。基礎スキルを身につけたうえで配配属先の担当クライアントに合わせて必要な知識を習得してもらい、スーパーバイザーの指導を仰ぎながらOJTで業務にあたります。通話は全て録音し、改善に活かすよう工夫しています。
長嶋 委託側としては本当に心強いですね。当社としては、CSL様のテクニカルサポートには全幅の信頼を置いています。
CSL髙木 現場で察知した違和感や、相談内容の傾向の変化など、クレームの「芽」となり得る事象への対応は初動が大切です。イレギュラーなお問い合わせがあった場合は、毎朝のブリーフィングで情報を共有し、クライアント様にフィードバックするように努めています。
――テクニカルサポートの委託を検討しているEC事業者にアドバイスをお願いします。
長嶋 自社でテクニカルサポートに対応するべきかどうかは、その企業の考え方や状況にもよりますが、少なくとも私たちは外部委託をしてほんとうに良かったと実感しています。私たちは“モノづくり”のプロですが、顧客対応のプロではありません。特に高いスキルを要するテクニカルサポートに関しては、無理をして社内で対応するよりも、外部の専門家にお任せした方がより良い結果が得られるでしょう。
宇津木 自社でテクニカルサポート業務をやろうとしたら、人員を揃えて高いレベルの教育を施し、コールを受けるために新たなスペースを用意しなければなりません。人材育成には時間・労力・コストがかかりますし、そもそも一般的なEC事業者は専門スタッフを育成するノウハウがありません。コア業務に集中したいのであれば、事業規模や成長ステージに関わらず、テクニカルサポートは外部の専門部隊にお任せした方が良いと思います。
――CSL様は今後、どのような形でクライアントの事業成長に貢献したいとお考えですか。
CSL髙木 長年にわたるテクニカルサポートの知識や経験に加え、トラブルシューティングのノウハウ、繁閑対応の柔軟性、顧客への提案力などが当社の強みです。オペレーターのパフォーマンス向上のための仕組みも整え、企業と顧客をつなぐプロフェッショナルとして日々業務にあたっていますので、顧客とのコンタクトサービスにて外部委託をお考えの際はぜひ一度お声がけください。