【体験レポート】年商3~4億を約10年間継続させるEC戦術

自社メーカー化を加速させる正しいBPO

株式会社船井総合研究所(以下、船井総研)は、定期的な会員制の限定セミナー「EC•通販経営研究会」を運営している。同経営研究会は、業績の向上を本気で目指すEC•通販会社経営者のための実践的な業績アップ勉強会。
年間6回開催されるこの定例会では、実際にECにおいて成功を納めている事業者のノウハウ講演を受ける事ができる他、繁盛店が自店、楽天市場、Yahoo!ショッピング、Amazonその他などのモール別で実際に利用している帳簿や、実際に配信しているメルマガのレポートなどがもらえたり、繁盛店への秘訣が集積した貴重なデータを手にする事ができる。

2015年度の第2回となる今回は、「モノつくり」というテーマでアジェンダが組まれている。メーカーや卸から仕入れる型番商品だけでは、結局のところ価格競争になってしまうため、商品力を磨くことが難しい。自社をメーカー化し、商品開発のフローまで内製化する小売りの方が、そうでないただの小売りと比べ圧倒的に良いモノを押し出すことができる。むしろ今後はそうしていかないと生き残っていく事は非常に困難であるとし、そのための市場トレンドの熟知と商品力•企画力アップが、今回の「EC•通販経営研究会」の大きな目標である。
そのプロセスにおいて、自社メーカー化に必要不可欠とするBPOについての重要性にも注目する。コア業務のみ集中して行い、ノンコアの部分の業務は全てアウトソースでまかなうという、贅肉を削ぎ落としたタイトな運営スタイルを提唱する。

2015年第2回「EC•通販経営研究会」アジェンダ

•第一講座「オリジナル商品でカテゴリートップになる方法&中国でのものづくりについて」
講師:株式会社サンタリート代表取締役 松永淳氏

•総勢約30企業によるテーマ別情報交換会

•第二講座「まとめ講座&今こそ考えるべきBPOの可能性について」
講師:株式会社船井総合研究所 白神孝幸氏

年商3~4億を約10年間継続させるEC戦術

年商3~4億を約10年間継続させるEC戦術登壇し講演を行う、株式会社サンタリート代表取締役、松永淳氏


第一講座では、株式会社サンタリート代表取締役の松永淳氏が登壇し、「オリジナル商品でカテゴリートップになる方法&中国でのものづくりについて」と題した講演で繁盛店のノウハウとオフショアアウトソースをする際の心構えなどを紹介していく。

株式会社サンタリートは、楽天市場の黎明期である約10年前にレディースファッションとしてEC参入を果たし、様々な市場要因を研究しフレキシブルな業態変化を繰り返すことで、約10年に渡り年商3~4億円を記録している老舗ネットショプ。現在ではオリジナルブランド「COMON GOLF」を立ち上げ、幅広いアパレル分野で業務を展開している。高い検索結果シェアを獲得しており、楽天市場内の「ゴルフウェア」検索結果で上位10位商品中5商品ヒットするなど、独自の着眼点に基づいた数々のノウハウを確立している。

松永氏は、「波がありつつも常に堰堤した売上げを確保できているのは、長期間販売可能なオリジナル商品を提案し続けているから」と語った。自社の実例を織り交ぜつつ解説を行い、5つのポイント別に「サンタリート流高検索結果シェア獲得法」として実績を総括する。

1:売る商品を決める
在庫量、販売期間の長さ、検索上位表示の可能性、価格競争力、キャッチコピーの力、という5つの視点から俯瞰し、オリジナル商品の強みを提唱。原価率30%以下を徹底し、そのレートで勝てる市場を探していくことが重要とした。

2:始めほど広告を使う
検索結果上位や上位ランキングを獲得できると、無料でアクセスが得られる。中でも、同社の年商の約50%を占めている楽天市場においてはジャンルサムネイル広告が効果的と語る。

3:露出を増やし続ける
ショップ内で露出が高まることにより、一番商品だとお客さんに錯覚してもらえる。売れ筋買い物カゴを限りあるアクセスで育て、育ったカゴは手放さない。色で作ればずっと使えるので、色展開で半永久的にカゴを使い回す。

4:カテゴリーページの強化
楽天市場の場合入り口は商品ページなので、そこから入った客を帰さない。しかし、購入する消費者はカテゴリーページを見ている。大切なのはコンセプト提案、写真でコンセプトを見せるなどし、カテゴリーページを強化する。

5:品揃えの強化
高い商品検索シェアを獲得するためには、同一ジャンル内で複数の商品を提案しなければならない。自分が使いたいと思える、消費者目線での商品開発を行うことが重要。

以上、5つのポイントを押さえた上で、「ものを作る」ことを考える。生産地としてオフショアアウトソースをする際の注意点を喚起する。同社が選んだ中国で徹底したポイントは、足を使い現場を見て、現地スタッフとのコミュニケーションを徹底するということ。ルートが完成するまでは極力自分で動き、工場で使われてるミシン一つに至るまで理解を深める必要があると語った。基本的なコミュニケーションがある程度取れるレベルでの現地語の理解も、合わせて必須と説く。

BPOについては、後半の第二講座内でさらに詳しい解説があるとし、松永氏は講演を締めくくった。

会員企業による成功事例発表会

会員企業による成功事例発表会テーマ別に分かれディスカッションを行う参加事業者達


続いて、船井総研のコンサルタントをファシリテーターに迎え、事例発表と情報交換のディスカッションへと進行する。全参加企業がテーマ別4グループに別れ、自社の現在の取り組みと今後のアクションプランについての発表や成功事例の共有などが行われる。約二時間半の間、各グループで熱心なディスカッションが展開された。
その後、各ファシリテーターが登壇し、ディスカッション内容の全体共有を行う。商品力と売り場力と集客力と接客力という切り口で展開されたグループから、これからECを立ち上げる企業が多いグループまで、現状分析と今後の戦略などをしっかりと練り込めた企業が多い印象を受けた。

月商、アクセス数やコンバージョン率まで、各社のコンフィデンシャルデータの裏付けから共有される成功事例はまさに活きたノウハウ。ここまで具体的な数値を出しつつしっかりと深堀りを実現し、さらには具体的なアクションにまで落とし込めている勉強会はなかなか他に類を見ないのではないだろうか。

5年10年先を生き抜くための経営戦略BPO

5年10年先を生き抜くための経営戦略BPOBPO戦略を解説する株式会社船井総合研究所 経営支援本部 白神孝幸氏


第二講座では「今こそ考えるべきBPOの可能性について」と題し、船井総研の経営支援本部より白神孝幸氏が登壇し講演を行う。
BOPとは、ビジネスプロセスアウトソーシングの頭文字をとったもので、業務の一部を企業に委託することという定義がされている。海外への業務委託は、人材確保、スピードアップ、ローコスト経営を目指す一つの経営戦略として昨今盛んに取り入れられるようになってきていると白神氏は語る。

国内EC企業を取り巻く状況として、「価格競争にも耐えうる体制の構築」「国内市場の成長と集約」「WEB系人材の確保」「長期的な国内市場の飽和」「これからのECサイト運営のあり方」などのポイントを戦略戦術で鑑みた場合、レベルの高い外注業者へのアウトソースの重要性が浮き彫りになるという。多くの事例があり、レベルの高い運営実績を持つ成都インハナ•インターネットサービス株式会社を例に、その重要性を説いた。

なぜ今BPOなのかというと、コア業務に集中していくということが一番の目的であるとする。これからのサイト運営では、「商品力」「売り場力」「接客力」の3つの力を重視し競争力を付けていく必要があり、コア業務としてやるべき以外のノンコア業務をレベルの高い外注業者に任せ、浮いた時間でそれら競争力を付けるための力を高めていく。ノンコア業務である「現在•過去の仕事」を超効率化するかなくすかし、コア業務である「未来の仕事」に資源を集中させていくための一つの手段として、BPOは非常に有効であるとした。

では、実際BPOがどうなのかというと、まだまだうまくいかなかったり失敗する企業も中にはいるという。
BPOで失敗する企業のポイントは2点が考えられ、一つは信用関係を築けないことによる過剰チェックコストによるもの、もう一つはマニュアル化ができていないことによる体制作りの不備。これらの課題をクリアするため、失敗を糧に挑戦を繰り返す粘り強さも必要であると、白神氏は語った。

以上をふまえ、BPOを学ぶための現地視察が企画されていると発表。経営戦略にBPOを視野に入れている事業者への参加を呼びかける。実際の作業風景を目にすると、現地スタッフのPCスキルの高さに驚かされるという。日本国内でアルバイトを雇い一から教えるよりも遥かに作業効率が良く、日本人スタッフでないとできないのではと思うようなクオリティの商品ページなども作成していたとのこと。次回視察は5月25~27日と告知を行い、講演を締めくくった。

次回「EC•通販経営研究会」に向けて

白神氏の講演をもって、今回の「EC•通販経営研究会」の全てのアジェンダは終了した。最後に参加者全員が集まり。一日の感想と次回までの自社の課題を発表し合い、イベントは幕を閉じた。

毎回必ず自社の課題等を持ち寄り共有し、具体的な解決策についてのアドバイスやミーティングなども行える「EC•通販経営研究会」は年6回、2ヶ月に一度開催される。自社だけでは見えない広い視点を持つためにも、一度参加してみてはいかがだろうか。考えてもみなかった課題が見え、解決策への近道を見つけられるかもしれない。


次回の開催情報はこちら
http://www.funaisoken.co.jp/site/study/100655.html



取材/文/写真:島名タスク