進化を先取りお菓子の価値を変えた”新杵堂”【店長のホンネ】

ECのミカタ編集部

 今年も、もうすぐお中元のシーズンがやってくる。大切なあの人へ、感謝の気持ちとともに何を届けるかもうお決まりだろうか。全国のEC店舗を応援する企画「伊達が行く!店長のホンネ」第5回目。今回はお中元にも必ず喜ばれる、栗菓子や創作スイーツを製造・販売する、株式会社新杵堂(しんきねどう)(以下、新杵堂)にお話を伺った。新杵堂は岐阜県中津川市に本店をおく。取材に対応していただいたのは、新杵堂グループ代表取締役社長田口和寿さんだ。

【伊達が行く!店長のホンネ】

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伝統を継ぐ者が感じた危機感、東京で受けた衝撃とは

 新杵堂は昭和23年に、田口和寿さんの祖父が個人経営で創業した。

 「現在も本社がある岐阜県中津川市は、当時、栗の名産地であり50社程の同業社が存在していました。それは、今後未来は『売りたい商品を売る店舗スタイル』ではなく『お客様のご要望にあわせた商品とサービスを融合して提供し、お客様にお選び戴くスタイル』であると危機感を感じていました。
 
 それは同業社はもちろん異業種企業もお菓子やサービスを販売する激戦時代の幕開けを意味しているとも考え、『先代や2代目のよさを継承しつつ大胆な経営改革が必要』だと痛感しその覚悟を持って継承する事をまだ高校生の時に決断しました。」

 つまり田口さんは、新杵堂を継ぐという決意はあったものの、お菓子や付随サービス価値を上げていかないと、新杵堂に未来はないと感じていた。

 そして、田口さんは高校を卒業したあとすぐに上京し、地元中津川新杵堂で販売している同等商品が100円で売られているのに対し、東京の有名店では同等商品が数倍で販売されている現実に愕然とした。

 なぜ同等のお菓子で数倍の価格差=価値が変わってくるのか。この現実は田口さんにとって衝撃的で、新杵堂にも東京と同じ価値のお菓子を作ってゆく努力が絶対的に不可欠であると希望にもなった。

 その後、田口さんは、宮内庁御用達の菓子店で5年間の住込修行を行ったあと、1995年になるとアメリカのニューヨークへと修行のため飛び立った。

 大きく踏み出したニューヨークへの一歩。そこでの光景もまた、田口さんに大きな衝撃を与えた。

NYで見たECの可能性と新杵堂の未来

株式会社新杵堂 3代目代表 田口 和寿さん

 田口さんが見たニューヨークには何があったのか。そこには、急速に発達するインターネットと、それに伴い、大きく進化を遂げていたアメリカ国民の生活があったのだ。

 インターネット環境が整っていることで、アメリカ国民は実店舗まで買い物をしにいくという選択肢のほかに、当時からすでにECを利用することができた。そして、インターネットで購入した商品はすぐに家まで配達される。今だからこそ、日本においてもECや即日配達が当たり前になってきてはいるが、当時の日本でこの仕組みは考えられないことであった。

 そして1998年になると、田口さんはニューヨークにいながら、当時日本で楽天株式会社が運営を開始しだしたモール「楽天市場」へ出店を行った。すると、まだそのころ日本で一般的では無かったECで、お菓子+サービス=付加価値を提供することでメディアに取り上げられ、田舎にある会社の存在価値が向上し、お客様に見ていただく機会が増え売上が順調に伸びたのだ。それは、日本でもECが流行るのではないか、というECの可能性を確信した出来事であった。

 2000年、田口さんはニューヨークでの経験と、確かな自信を持って日本へと帰国したのであった。

経営のプロとタッグを組む、お菓子作りのプロの施策

 日本へと帰国した田口さんは、新杵堂へと戻り大きな経営改革を断行した。個人経営だった新杵堂を抜本的に変革させるため、銀行系ベンチャーキャピタルや提携企業および多くの個人投資家に出資という形で財務面を強化し株式会社新杵堂を新創業した。翌年に本社工場を個人経営時代の50倍以上の広さのある規模にして拡大し、製造面でも衛生面でも戦っていける体制を整えた。

 そして上京し、ニューヨークにまで飛び立った10年間の中で学んできたことは、新杵堂を更に進化させるものであった。

 「まず、お菓子が美味しいという理由だけで、商品が売れるわけではありません。私たちはお菓子作りのプロとして、もちろんこだわりをもってお客様へと商品を届けますが、事業運営のプロではないのです。なので、そういった経営のプロである各業界のトップの企業とアライアンスを組むことで、お客様に新杵堂のお菓子を知ってもらう、お菓子の価値を上げる、そんな取り組みを積極的に行っています。」

 アライアンスの例として、ゲーム会社と提携し新杵堂のお菓子をゲームポイントして提供したり、旅行会社のパックツアーの景品で新杵堂のお菓子を提供したり、様々な企業とコラボレーションをすることで新杵堂はその人気を確立していった。

 また、日本のお菓子を世界にも伝えるべく、新杵堂は止まることなく海外へと進みだしている。しかしその過程で、新杵堂自体が海外で店舗を立ち上げているかというとそうではなく、海外のレストランでデザートとして新杵堂のお菓子を提供するなど、ここでもやはり経営のプロである企業とタッグを組み、新杵堂のお菓子の価値と認知を広げている。こうして新杵堂は、お菓子作りに集中できる環境を作っているのだ。

新杵堂本店

 そして、新杵堂が人気を集めている要因はそれだけではない。徹底した品質管理、お客様の要望に耳を傾けたサービスの数々、即日配送への対応など、最も良い商品を最も良い状態やサービスでお客様へと届けることへのプライドが、新杵堂が信頼を得ている理由なのだ。

 「新杵堂の強みは、お客様のニーズにいち早く応え、こだわりを提供し続けて、ご満足いただける事が他にあればすぐに取り組みを開始し、動き出すことができることです。特に、商品のおいしさを全員が感じられるということを大切にしていて、そのためにはお客様の声が何よりも全てなのです。

 お客様のお声を戴くためにEC販売は必要不可欠なツールであり、その手法もめまぐるしく変化し続けていますから、私たちは常にウオッチし続け挑戦する志が必要であると考えています。」

 そうしてお客様の声に耳を傾けながらも、YouTubeやLINE@を使い、お客様へと新杵堂の想いを伝えることにも力を入れている。その方法に賛否両論はあるものの、まずは挑戦してみなければわからない。そういった姿勢が、新杵堂を更なるステップへと導いているのだろう。

 田口さんは、10年前には”お菓子”だったものを、”新杵堂のお菓子”というブランドに位置づけ、その価値を与えた。そして、今日もお菓子作りに全力の愛情を注いでいる。


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