家族を繋ぐ贈り物、”ぼくのてがたのうつわ”【店長のホンネ】

ECのミカタ編集部

(左)商品が実際に入れられる赤ちゃんの名前入りの箱(右)ぼくのてがたのうつわ(カップ)

全国のネットショップさんを応援する企画「店長のホンネ」第二弾!今回は、赤ちゃんの手形を残せるうつわ”ぼくのてがたのうつわ”を展開する柳原優希さんにお話しを伺いました。赤ちゃん一人一人の手形が違うことから、世界にひとつとして同じものがない”ぼくのてがたのうつわ”。ネットショップを開設するにあたって柳原さんはどんな工夫をされてきたのでしょうか。

優しいぬくもりで家族の時間を演出する”うつわ”

優しいぬくもりで家族の時間を演出する”うつわ”これら二つの”ぼくのてがたのうつわ”をよく見てほしい。一つ一つ赤ちゃんの手形が違うので、うつわはそれぞれにとって世界にたった一つの記念品となるのだ。反対側には、赤ちゃんの名前や生年月日などの記載がなされてる。

ある晴れた風の強い日。私はとあるネットショップさんを取材しようと、埼玉県までやってきた。

そのネットショップさんは、赤ちゃんの可愛らしい手形を残せるうつわ”ぼくのてがたのうつわ”という商品を扱っている。”ぼくのてがたのうつわ”は、赤ちゃんの手形が皆それぞれ違うことから、ひとつとして同じものが出来上がらない。赤ちゃんにとっても、赤ちゃんの家族にとっても、一生に一度の特別な記念品になるのだ。

”ぼくのてがたのうつわ”代表の柳原 優希さんは、そんなうつわを、一人の職人さんと二人三脚で世に送り出した方である。うつわが誕生した背景には、柳原さんの環境の変化があった。

「3年前に第一子となる娘を出産したのですが、本当にわが子は可愛く、言葉にできない感動を覚えました。そして、その子の小さな手が私の指を一生懸命握ってくれたとき、この愛おしい手形を残していきたいと思ったのです。

当時インターネットで販売されている”赤ちゃんの記念品”だと、ガラス製の写真立てに手形を残せるようなものしかなく、値段も2万円前後と安くはありませんでした。なので最初はまず、”飾るだけの記念品”よりも”自分の子供のために使用できるもの”を作りたいという思いがあり、もし作っても、それを”販売していこう”というところまでは考えていませんでした。」

”ぼくのてがたのうつわ”代表 柳原 優希さん

EC店舗さんがネットショップを開こうと思うきっかけはそれぞれだと思う。柳原さんの場合は、”出産”がきっかけで環境が180度変化したことがすべての始まりだった。まだこのときは、”うつわを販売する”という考えがなかったものの、その後、移住した長崎での職人さんとの出会いにより、柳原さんの想いが形となっていく。

「長崎で過ごして行く中で、再び、”子供のために何かを作りたいな”という思いが巡り、陶器のうつわを作りたいと思いました。そこで、幼い子供をおんぶしながら窯めぐりを始めたものの、どこへ行っても普通の主婦が持ってきたアイデアに耳を傾けてくれる窯元はなかなか見つからず、職人さん探しは難航していました。

そんな時に出会ったのが、女性の陶芸家である”美紀さん”。美紀さん自身にも子供がいて、”ぼくのてがたのうつわ”のコンセプトに2児の母として共感してくれました。美紀さんと出会い、試行錯誤を繰り返しながらついに”ぼくのてがたのうつわ”が完成したのです。そこで、完成したうつわの写真をSNSにアップしたところ、想像よりもその反響が大きく、それまではうつわを”販売しよう”と思ってはいなかったものの、多くの人に共感してもらえたことがだんだんと自信につながっていきました。」

自分自身が自分の為に、そして我が子の為に作ったものが多くの人から支持されている、それは柳原さんへ自信を与えた。その自信は、いつしか”ぼくのてがたのうつわ”を多くの人に届けたいという気持ちに変わり、柳原さんは遂にネット販売へと踏み切ったのだ。

まずは、自分でHPを作ってうつわを販売。最初はこれといった宣伝をしていなかったものの、うつわが手元に届いたお客様からは感動と感謝の声が伝わってくる。自分が”良い”と思ったものが、どんどん他人に共感してもらえる。柳原さんは、そんな嬉しい声がいち早く届くECに、実店舗で接客をするよりも多くのお客様に出会えるという魅力を感じた。

そして、柳原さんは商品をECで販売していくと決めてから、モールで販売するのではなく、独自サイトでの販売にこだわった。なぜだろうか。

それは、店舗、そしてうつわの世界観を独自サイトで演出し、お客様にうつわのある生活を想像して楽しんでほしいからだ。うつわがあることで一家団欒の時が演出されたり、離れて暮らすおじいちゃんやおばあちゃんにうつわを送ることで孫を想ってもらう、そんなほっこりとした家族の空間を商品によって作ってあげたいと柳原さんは語る。

”ぼくのてがたのうつわ”を作る機会を、自分以外の誰か(出産祝いや、お誕生日プレゼントなど)に贈りたい場合は、このような可愛らしい招待状(=”ぼくのてがたうつわ”を作るための専用シートと、説明書が入ったセット)を注文することもできる。受け取った人は赤ちゃんの手形を専用のシートにとり、郵送するだけ。サプライズの演出もできるため、プレゼントする側にも、される側にも、とても喜ばれる。柳原さんの優しいこだわりだ。

そして、柳原さんが独自サイトでこだわっているのは世界観だけではない。常に、人間味のあるサイトであることを心がけているのだ。顔が見えないECでは接客がなかなか難しい。だからこそ、お客様からの問い合わせに対しては、軽すぎず、そして堅すぎず、適度な距離をもって早いレスポンスで応えることを意識しているという。

「どんなに商品が良いものでも、接客対応が悪ければ台無しです。例えば、レストランに入った時、料理はとても美味しいのに店員さんの接客態度が悪いと、再び食事をしに行こうという気持ちが薄れませんか。」

相手の立場に立って物事を考えること。それが柳原さんのモノ作りに対する原点な気がする。柳原さんの場合、元々最初は販売するつもりで ”ぼくのてがたのうつわ”を企画したわけではなく、我が子の記念に残したいという気持ちの方が強かった。


だからこそ、美紀さんと相談し、うつわに赤ちゃんのことを考えた優しい生地を使ったり、ラッピングにも特別感を演出できるような様々なこだわりを盛り込んだうえで、お求めやすい価格で提供している。

柳原さんにとっては、利益どうこうよりも、まずは”うつわをもらった相手がどう感じるか”に対する工夫が最優先なのだ。

このプレートには、赤ちゃんの足型も残すことができる。また、今後はお客様の声を参考に”あんよのうつわ”という、赤ちゃんの足型が残せるうつわも考案していくとのことだ。

ただ、そこまでこだわっているにも関わらず、ECだからこその不安も感じているという。”ぼくのてがたのうつわ”は手に取って初めて、丸みのある使いやすいフォルムや、手形のさり気ない凹凸感、優しい桃色の温もりを感じてくれるお客様も多い。そうした実物の良さを、ネット上でいかに伝えていけるかが課題であるとのこと。そんな課題を解消すべく、柳原さんは次なるステップへと踏み出す。

「実際にお客様にうつわを手にとって良さを確認してもらうべく、街のカフェにうつわのサンプルを置かせてもらっています。また、うつわに触れ合いながらもっとママも子供たちも楽しめるようなイベントも開催したいです。後は、うつわを日本のひとつの文化として世界に広めていきたいなとも思いますし、更に多くの人に”ぼくのてがたうつわ”を届けたいです。」

柳原さんが”ぼくのてがたのうつわ”を販売する過程と、これからの展望とで、一貫して共通していることがある。それは、自分が自信をもって世に送り出した商品によって、人と人をつないでいきたいという温かい気持ちだ。

うつわが手元に届いた人にどんな感動を与えられるのか、家族にうつわを作ってもらった赤ちゃんにとってうつわがどのような役割を果たしていくのか、柳原さんは常にうつわを囲んだ家族の未来を想像していた。そうやって相手を想うことは、やはりモノ作りの原点であり、ECの発展に必要な感情なのではないだろうか。

ECはお互い顔が見えない環境であるため、相手を思いやって工夫を凝らすことが、お客様の感動へとつながる。それは、柳原さんがおっしゃったレストランでの接客のお話と同じ。商品が良くても店員さんの接客が良くなければ、リピーターはつかない。

だからこそ、相手を思いやり、感動を届けている柳原さんのうつわを”商品”と呼ぶことに違和感を覚えてしまう。”ぼくのてがたうつわ”は、人と人とをつなぐ”贈り物”なのではないだろうか。


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