ヒット商品「deleMO(デリーモ)」で台湾進出。Artemisが拡大を目指す海外戦略
日本で累計100万本を突破しても、まだ人気が衰える気配さえ見せない除毛剤「deleMO(デリーモ)」。その大ヒット商品をひっさげて、2018年春から台湾への進出を果たしたのが株式会社Artemisだ。台湾で本格的な販売をスタートしてからまだ日は浅いが、感触は上々だという。
プロダクトの秀逸性もさることながら、EC展開にとどまることなく、現地での直接流通にも力を注ぐ該社の海外戦略について、統括責任者 山本 潤一氏と、EC事業部 統括責任者 志水 宏晃氏にお話を伺った。
これまでにない“スプレータイプ”というコンセプトで、爆発的ヒット商品に成長した「deleMO(デリーモ)」
―Artemisの事業概要と、ヒット商品「deleMO(デリーモ)」についてお教えください
山本 当社は、2014年からEC事業の展開をスタートしています。取扱い商材としては、サプリメントなどの健康食品系商材や、コスメ系商材、さらには機能性インナーなどが中心です。スタート時は、メインのターゲットとしては、20代~30代の女性層を設定していたのですが、実際には40代、50代のお客様も多くいらっしゃって、幅広い年齢層にご好評をいただいています。
志水「deleMO(デリーモ)」は、2016年から販売をスタートさせている商品で、スプレータイプの除毛剤です。その当時は、除毛剤というとチューブタイプの商品が多く、「deleMO(デリーモ)」のようなスプレータイプというものはほとんどありませんでした。クリーム状の除毛剤であるチューブタイプは手が汚れるということがありますが、スプレータイプだと手を汚すことも少ないですし、塗りムラができにくいという使い勝手の良さがあります。そこが受け入れられて、それほど大掛かりな広告展開などをしていなかったのですが、大ヒット商品となりました。
山本 初期の頃はネット販売のみで、複数の独自ドメインや、楽天市場、Amazonといったモール展開で販売していたのですが、今年の春からはリアル流通でも展開するようになり、ドン・キホーテさんでも取り扱っていただいていますが、売れ行きも順調で、すでに累計販売数は100万本を突破しています。
中国EC展開の不調を糧に、ビジネススキームを刷新して、台湾へ進出
―今年、台湾への進出を果たされました。
山本 はい。昨年あたりから、同業者の方や、当社とお付き合いのある広告代理店の方などから“台湾が狙い目”だという情報は聞いていたのですが、なかなか具体的な展開には至らず、実際に台湾でのスタートしたのは今年の春です。
実は当社は、海外展開は初めてではなく、2016年の後半頃から中国への越境ECを展開していました。関係先から“中国のECが伸びている”という情報は聞いていましたし、ちょうど「deleMO(デリーモ)」がヒットし始めている時期でもあったので、市場の大きい中国で「deleMO(デリーモ)」を販売しようということになったのです。
しかし、予想に反して、中国での展開は苦戦を強いられ、ずっと不調でした。要因としては、中国は規制の変化が激しくて、ある時期には問題がなかった有効成分が急に輸入禁止になるなど、不測事態が続いたことが大きかったですね。また、プロモーションについても、日本での成功体験がまったく生かせないという特殊事情があり、思うように売れませんでした。
そんな事情もあって、“台湾が狙い目”と聞かされても、進出に躊躇したという経緯があったのです。しかし、そうした状況の中でも、台湾での販売展開をサポートしてくれる協力会社さんと出会えたことや、日本での広告展開をサポートしてくれている株式会社インタースペースさんが台湾の広告を取り扱っておられるということで、事前の準備をしっかり整えることができました。おかげ様で、中国進出の場合と違って、万全の体制で台湾進出を果たすことができました。
志水 台湾では、協力会社の現地法人がECサイトを立ち上げて販売展開しています。受注のたびに商品を日本から送る越境スタイルではなく、現地に商品を在庫しての展開です。広告展開については、インタースペースさんにお願いしており、日本でも有効なプロモーション手法であるフェイスブック広告を活用するなど、広告事情については中国と違って、日本での成功体験を生かせる環境があるので、助かっています。
まだローンチしてから日も浅いのですが、すでに反響は大きく、感触は上々です。台湾では「deleMO(デリーモ)」を含む4つの商材を販売していますが、やはり「deleMO(デリーモ)」が好調です。
ただ、「deleMO(デリーモ)」が好調な背景として、ローンチのタイミングが春で、夏に向けて除毛商材が受け入れられやすい時期だってことも大きく影響していると考えています。これから冬に向けては、除毛剤市場は落ち着いてくると思いますので、今後はさらに商品ラインナップを増やすことで、台湾での成功を確実なものにしていきたいと思っています。
山本 また、当社の海外戦略としては、ネット販売に限定するのではなく、リアル販売も積極的に展開していきたいと考えています。そのために、現地での展示会などに出展して、流通経路を確保・強化しています。展示会で知り合ったバイヤーさんなどが当社の商品を扱ってくれることが決まるなど、展示会出展の効果も着実に出ています。
リアルとECのシナジー効果を狙った戦略で、東南アジア進出を加速
―今後も、海外展開は加速させていく方向性でしょうか
山本 今後、海外展開は加速させていく予定です。すでにタイやマレーシア、インドネシアなどの展示会や物産展などにも積極的に参加するようにしていますし、現地の流通も確保できつつあります。当社の海外戦略においては、台湾のみならず、東南アジア全域での展開は特に重要なテーマだと位置づけています。
また、海外の展示会などで商品販売を行ったりもするのですが、商品を高くご評価いただくと、「この商品はどこで買えるのか」というご質問をよく受けます。台湾の場合は、ECサイトがあるので、「ネットで買えます」とご案内できるのですが、現状、他の地域ではそうした体制が整備されていません。そういう意味では、リアル販売を促進するための流通の確保も重要ですが、商品認知・販売チャネルとしてのEC展開も重要だと考えていますので、その両輪をうまく回していきたいと考えています。
中国での越境ECでは苦戦しましたが、台湾でひとつの成功体験をもつことができました。その成功体験で蓄積したノウハウをさらに広げて事業を拡大すべく、東南アジアでの展開を加速させていきたいと思います。