【第4回】クレーム殺到から学んだ、コトを売る姿勢

古屋 悟司

究極の安売り。締め切り16時の即日発送。この二つを武器にして花を売り上げ会社は急成長。

しかし、神様は僕に試練を与えた。

売上7割減。花を仕入れるお金もない状況から、ビジネスモデルを大幅に変更し、モノを売らずにコトを売るを実践。

その結果、約18カ月でV字回復を果たしたが、その道のりは平坦なものではなかった。

花農家さんとのつながり、市場との連携、管理会計の恩恵。全てが複雑に絡み合い価格競争から抜け出すことに成功。

ゲキハナという名の花屋はカゲキなシゲキを受けながら、カンゲキを売る花屋に生まれ変わった。

全10回。すべてを惜しみなくあなたにお伝えしようと思います。僕に起こったウソみたいなホントの話を。

【第1回】川上から川下まで、全ての場所が儲かる価格で仕事をする
https://www.ecnomikata.com/column/10461/

【第2回】「モノを売らずにコトを売る」の全ては、悪徳訪問販売で学んだ
https://www.ecnomikata.com/column/10779/

【第3回】売上7割減!から生まれた「三方良し」のビジネスモデル
https://www.ecnomikata.com/column/11145/

それは、母の日のお叱りの電話から始まった

それは、母の日のお叱りの電話から始まった

花屋の最大繁忙期である、母の日の出荷が全て終わり、残すところ輸送事故の対応のみとなった、母の日当日の日曜日。朝9時に出社して、事故対応の電話業務を僕はしていました。すると、1本の電話が・・・。

「なんなのこれ!ちっとも花なんて咲いてないじゃない!母の日が台無しよ!」

「え?え?どうなさったんでしょうか?」

僕は電話口で怒る狂うお客さんをなだめつつ、話をお伺いする事にしました。

話を聞くと、「ちょこんと芽が出た球根が植わっているだけで、華やかさも何もあったもんじゃない!」という内容でした。(それが上の画像です。芽がちょこんと出た状態でお届けしています。)
説明書やページには、その状態で届く旨を明記していましたし、今回母の日で販売した「アマリリス」というお花は、その状態で街でも販売されています。むしろ、咲いていたら市場価値はさがり、花市場では値段がつかなくなります。

咲くと、とても綺麗な八重咲きで、その魅力を余すところなく伝えたページ。母の日にふさわしい鉢花だと、お母さんに送るお客さんにも好評でした。

なのに、このお母さんは完全にキレてしまっているのです。

「ま、沢山売れればそういう事もあるか。」と、思いながらも、丁重にお詫びと説明をし、電話を切りました。

また1本の電話が。

「なにこれ?花じゃない!なんなのこれ!」また、同様のお叱りです。
先ほどのお母さんへ説明した内容と同じことをご説明させていただき、お詫びをして電話を切りました。

曜日は変わって月曜日。朝から同様の電話が鳴り止まない状態。

そんな状態が、1週間以上続きました。その時は、僕も、母の日は、普段花を買わない人が多いから、こう言ったお叱りも増えるし、仕方ないと思っていたのですが、それにしても多すぎます。100件近い同様のお叱り。レビューはもちろん大荒れ。なんだかんだと、全てご対応し終わるまでに、1ヶ月半ほどかかりました。

弱みを強みに

弱みを強みに

母の日終了から2ヶ月が経った7月のある日。ちょうど仕事もヒマになる季節なので、母の日のお叱り殺到の件を思い出し、どうやって改善していこうかと考えました。業界の当たり前をお客さんに押しつけ、「こういうもんだ」と言い切ってしまうのは簡単です。でも、せっかくの母の日、「日本中のお母さん達に喜んでもらおう!」と思ってやっている仕事ですから、なんとかしたい一心でした。

このアマリリスというお花。芽がちょこんと出てから、1週間から10日ほどで蕾が開き、とても大きな、そして見事な花を咲かせてくれます。そして、芽が出て茎が伸びるそのスピードがとても速いんです。1日に2センチ以上伸びる事もあるほど。

芽が出てから花が咲くまでの期間を、お母さん達に楽しんでもらう事ができれば、お叱りの電話はゼロになってくれるんじゃないだろうか。そんな仮説を立てました。では、何から始めようか。ここから改善がスタートしました。

まず、母の日ギフトは、ご注文されるお客さんは、息子さんや娘さんです。一緒に住んでいる事は稀で、どちらかというと、遠く離れたお母さんに喜んでもらおうと花を購入してくれています。

一方、お母さん達は、普段会えない息子さんや娘さんから、母の日に届くお花を毎年心待ちにしています。ですから、期待値が非常に高い状態です。「今年はどんなお花で私を楽しませてくれるの?」というくらいの期待と言えば伝わりますでしょうか?そんなお母さん達が、泣いて喜ぶ状態にしなくてはなりません。

最初に考えたのが、ご注文者である息子さんや娘さんへのパーミッション(許可)です。ページ内で、「芽が出たしょぼい状態で届きます。」という事を理解していただく必要があります。ですから、お届け時の画像へその説明と、1日に2センチも伸びる事があると記載。成長が早いから、箱の中でぶつからないように、小さな状態でお届けしている旨を付け加えました。
これにより、配送に気も使っていると言う強みも感じていただけます。

次に、実際に受け取るお母さんへのご対応として、同梱している説明書を改善して行こうという話になりました。僕らとお母さん達の接点は、商品と梱包と同梱物しかありません。メッセージを伝えるには同梱している説明書しかないわけです。

丸一日を費やし、説明書を書き上げました。その枚数は原稿用紙にして16枚。6000文字を超える大作です。このコラムよりも文字数は1.5倍ほど多いです。何を書いたのかというと、次の項目です。

・ 届いたときの状態
・ 咲くまでの期間
・ 咲くまでの育て方
・ 咲いた後のお世話の仕方
・ 翌年の咲かせ方

文字面だけを見ると、何とも機械的ですが、ここでデメリットをメリット(楽しみ)に変えていきました。

芽が出た小さな状態で届く
→育てる楽しさがある

咲くまでに10日ほどかかる
→毎日の成長が目に見えてわかる楽しさがある

咲くまでの管理の手間
→お水やりは肉じゃがを作る時と同じで、お醤油ひと回しくらい

咲いた後の処理がわからない
→マメ知識として、茎を残して花だけとると、球根に栄養が蓄えられるという裏技をお教えする

翌年まで葉だけの状態でつまらない
→観葉植物のようにツヤツヤの葉を楽しめる

そして、硬い文章形式ではなく、このコラムのように口語調を織り交ぜたり、長い文章を飽きずに読んでいただくために、お母さん達の身近にある物事に例えながら、花好きなお母さん達が楽しめる説明書を作りました。

この説明書。たまたまネットショップの金髪のセンパイがアマリリスをご注文された際にこっそり同梱したところ、「これサイコーじゃん!」とお墨付きもいただき、自信を持って、母の日に同梱する事にしました。

ドキドキの翌年の母の日

万全の対策を敷いて、母の日がやってきました。売れ行きも前年の1.5倍ほどの好調ぶり。理論的に考えれば全く問題なしの状態ですが、昨年のお叱りの数を考えると、不安では無いとは言い切れない気持ちでした。

いつものように、母の日当日の日曜日に出勤をし、輸送事故対応をしていたのですが、アマリリスに関してのお叱りが全く無い。月曜日になっても、火曜日になってもお叱りは全くありませんでした。

しかし、母の日を超え、数日たったある日から、アマリリスに関しての電話の内容は違った方向に向きました。

「あら、あなたが店長さん?綺麗な花が咲いたわよ!本当に見事!」
「あの説明書。すっごくわかりやすくて、何度も読んじゃったわ!」
「このアマリリス、他の色はないの?もう1鉢ほしいのよ!」

喜びのお電話が1日に数件ですがかかってくるようになりました。そして、アマリリスの絵を描いてくれたハガキや、写真を撮ってみたという封書まで、お母さん達がわざわざ贈ってくれました。その全てに、喜びの言葉が、所狭しと書いてありました。

改善は大成功。良いレビューが続々と記載され始めました。
その後、アマリリスは当店の看板商品となり、他店でも少しだけ安く販売されていたりしますが、なぜかウチのアマリリスだけが売れていくという状態になりました。

また、年を追うごとに、リピーターさんが増え、
「母が今年は違う色が欲しいと言っているので、違う色にしました。」
「母が気に入っているアマリリスを今年も贈ります。」
など、母の日のお買い物時に、僕らへコメントを残してくださるお客さんも増えていきました。

伝えるのではなく、伝わる

この件を通して学んだ事があります。
お客さんは、母の日用であれ、誕生日用であれ、自分のお庭用であれ、花を買っているのではなく、花を楽しむために買っています。一見、一部のマニアの方の場合は欲しい花があり、花自体を買っているように見える事もあります。
でも、普通の方も、マニアの方も、「花を通して楽しみたい」「送り先の方に喜んでもらいたい」という気持ちは変わりません。花自体を買うのではなく、自分の楽しみや、送り先の方の楽しみのために対価を支払っているのだと僕は理解しました。

これは、腹を満たすためだけに、食事をするのではないというのと全く同じだと考えています。日本は豊かになりました。贅沢を言わなければ、ほぼ全ての「モノ」は手に入ります。しかし、「楽しいコト」や「思い出に残るコト」、「飛び上がるほど嬉しいコト」には、対価を支払う以前に、当たりハズレが大きかったりします。

この、当たり外れの判断は人それぞれ違っていて、ある人には当たりだけど、ある人にとってはハズレだったりします。それぞれの人にとっての興味関心、趣味志向が多岐に渡るようになった現代では、商品が持つ「無言の魅力」だけでは、満足してもらえない時代になったと感じています。

ただ、その時に、「とある視点」を持ってもらう事によって、当たりだと感じていただけるような気がしてなりません。全ての商品が提供している価値や体験を、「こういう角度で見てもらえると、きっと楽しめるはずだよ」と、手引きする事が大切だと痛感しました。

そして、伝えただけではダメで、相手にちゃんと伝わって、始めてその価値を実感していただけるのではないかと思います。ですから、伝え方1つで、今ある商品は、とても良い体験を提供する商品に生まれ変わるのだと思います。

次のページにて、大好評だった実際の説明書が。

おまけ

今回ご紹介させていただいたお話の「アマリリスの説明書」。
Web版がありますので、ご興味のある方は、下記リンクからお読みください。
http://www.rakuten.ne.jp/gold/gekihana/sodatekata/ama.html

次回のお知らせ

最後までお読みいただきありがとうございました!!


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http://item.rakuten.co.jp/gekihana/column/





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次回のお話は・・・。

「農家さんとともにコトを売り、一つの商品が売れ筋に育つまで」

です!!
11月1日(火)の予定です!お楽しみに!!
(@^^)/~~~ばいばい!


著者

古屋 悟司 (Satoshi Furuya)

1973年東京生まれ。
あとりえ亜樹有限会社代表取締役
V字回復研究所 所長
「さしすせそ」がうまく言えない東京育ち。
大学卒業後、トヨタのディーラーに就職。新人賞を獲得後、さらなる収入アップのためにブラック企業へ足を踏み入れる。
訪問販売業で荒稼ぎするも、自宅が火事になり全てのやる気をなくし退職。
2002年再起をかけ花屋ゲキハナを開業。2004年楽天市場へ出店。
倒産の危機を経験し、三方よしを学ぶ。
その経験を生かして書いた会計本『「数字」が読めると本当に儲かるんですか?』は、国内外で高い評価を得てロングセラーに。台湾で翻訳され、中国でもその予定あり。
好きな食べ物は、ラーメンとカレー。
現在、「V字回復研究所」を立ち上げ、会う人と会社を元気にする活動をしています。


花屋ゲキハナ
https://www.gekihana.jp/

V字回復研究所
https://furuyasatoshi.com/

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