SMAPとECの新法則:「青いイナズマ」で点火する~ドンマイコラム勘違いオムニチャネルな脱線EC~

佐藤 英俊

 ネットショップの教科書に依存し過ぎて失敗する(失敗しながら成長する)人のための、ちょっとやそっとでうまく行かないからってドンマイなコラム。

トランプ vs ヒラリー お得なのはどっち!?(EC事業者目線)~ドンマイコラム勘違いオムニチャネルな脱線EC~
https://www.ecnomikata.com/column/11506/

五輪マークに隠された、EC店舗のブランディング~ドンマイコラム勘違いオムニチャネルな脱線EC~
https://www.ecnomikata.com/column/12034/

1996年:アイドル史上の転換点

 「歌えない」「踊れない」「知らない人のいない」、3「ない」トップアイドルとして疾走してきたSMAP。12月26日、「SMAP×SMAP」最終回が最後の出番と噂されています。

 Sports Music Assemble Peopleからの命名が名前負け、1988年のデビューから時代は歌番組が衰退、コントに活路を見出さざるを得ない雌伏の時でした。その中で、1996年に始まった長寿番組は、そのままSMAP人気を頂点に押し上げた象徴であり続けました。ビストロスマップのレシピ本を家内に贈ったら、苦い顔をされただけで、それらしい皿が並んだ記憶のない、心の木枯らしも20年前。

 同じ時期、森くんの脱退によってSMAPの「顔」がキムタクに移りました。古くは、スーちゃんからランちゃんにセンターが変わったキャンディーズが売れたという例もありました。キムタク人気がSMAPを牽引したのも事実です。1996年放映の「ロングバケーション¹」で、連ドラ初出演、人気に火を点けて不動のものにしました。

 ただ、最大のブレークスルーは「青いイナズマ」だったと思います。それまでの楽曲は、どちらかというと三の線寄りでした。1996年リリースのこの曲が、カッコイイSMAP路線と国民的人気を定着させたのです。全ての発火点が1996年にあり、以後20年間、紛れもなく日本の文化風俗に色濃く彼らの姿が映し出されます。

 点火までの時間が短いに越したことはありません。ECならなおさらです。今日は、8年のような長さではなく、秒単位の話です。

¹Wikipediaによれば、「月曜日はOLが街から消える」と週刊誌などで言われ、このドラマの影響でピアノを習い始める男性が増えるなど「ロンバケ現象」なる社会現象を巻き起こした作品。

10秒:点火時間が雌雄を決する

 店舗での滞在時間を延ばせば、売上が向上します。理由は二つあります。

・商品価値の訴求が行き届き、購買意欲が高まるから
・時間を消費させ、他の店に行く時間がなくなるから

 ただし、後者を意図するのは愚策です。「ショールーミング」は実店舗とネットショップだけでなく、ネットショップ間にも言えることだからです。ここでは、純粋に前者を考えましょう。商品の価値訴求は10秒では足らないでしょう。しかし、大半はその前に離脱してしまいます。

 例えば、商品を手に取ってみる時間は、数秒かもしれません。それでも、お客様のそんな行動に気づけば、お声掛けして価値訴求などの説明を差し上げるチャンスです。言葉を交わしているのに、熊に遭ったような目をして後ろ足でじわじわ遠ざかって行く客は滅多にいません。

 少しの時間、ドエルタイム:dwell-time²を作りましょう。

 10秒間「見せる」ことができれば、「青いイナズマ」が走ります。

 「見せる」で構いません。「読ませる」必要はありません。実店舗って、読ませるものは多くありませんよね。

 ECの商品ページは「カゴに入れる」か否かの分水嶺。そこでの滞在時間は、購買の意思決定を大きく左右します。下図をご覧ください。横軸が特定のページでの滞在時間です。縦軸はそのページから離脱する可能性です。最初の10秒を超えれば、じっくり読んでもらえることがわかるでしょう。

 ²自動車業界では、点火コイルに通電してから実際に発火するまでの時間をさします。Webの世界では、サイト内の滞在時間(Visit Duration)とは異なり、商品ページ限定の滞在時間(狭義には、商品ページからGoogleなどの検索結果ページへ他の探しに戻るまでの時間)をさします。

出典 https://www.nngroup.com/articles/how-long-do-users-stay-on-web-pages/

 次表は、私がお手伝いしているショップさんの生のデータです。サイト滞在時間ですが、10秒未満が多いものの、そこを超えてしまうと61秒以上滞在してくれる買物客の多いことがわかります。

 なお、前提として、サイト滞在時間(店内をうろつく時間)とページ滞在時間(商品を手に取る時間)は、似て非なるものであるという理解も必要です。Googleの検索結果から商品ページへ直接遷移した場合、ページ滞在時間は基本的に長い方がよいと言えます。しかし、トップページに遷移した場合のサイト滞在時間は要注意です。

 ドエルタイムが長いと、Googleの(読む価値のあるページという)評価が上がります³。HTMLタグがどうしたといった紋切り型のSEOアドバイスを無視してでも、ドエルタイムの改善に心砕きましょう。

 ³その昔は、滞在時間2分が閾値と言われていました。

0秒:ドエルタイムさえないIoTの時代

サイト滞在時間が長ければ長いほどいいかというと、実はそんなに単純ではありません。

例えば、Googleの目指す場所はどこですか。目的とするコンテンツをいち早く見つけることです。買い物なら、Google Maps(実店舗)であろうとGoogle Shopping(ネットショップ)であろうと、消費者の買い物にトータル費やす時間を短くすることです。これこそが、Googleが巨額の費用と叡智を投下して目指しているゴールです。

つまり、Googleの究極は(特にECでは)、ドエルタイムさえある程度短い方がよいと考えるはずなので、今後は「ページが長けりゃいいっていうもんじゃない」という観点も重要です。私たちは、既にそれを実践しているサイトを知っています。Amazonです。「1-Clickで今すぐ買う」です。

最たる例は日用品。お試しにちょっぴり慎重でも、定期購入に時間を費やすのは愚の骨頂。「IoTって何だろう?」ってまだ疑問に思っている人も、Amazon Dash Button⁴がようやく(12月5日)日本にも上陸してピンと来たかも。ドエルタイム0秒の世界です。

 ⁴https://www.amazon.co.jp/dashbutton

70秒と200秒の差:Googleの叡智は拝借できる

 欲しいものが容易に見つからなければ、滞在時間は延びます。おかしな話ですね。滞在時間を迂闊に指標にすると、案内の悪さで「改善」できてしまいます。

 買物客の方から声を掛けてくれるコンシェルジュは、EC(サイト内検索)ならなおのこと気軽に利用できます。他方、店員がいないから、仕方なく我慢して探している沈黙の買物客のエクスペリエンスはまるで失恋。リピートしたいとは思いません。

 高機能なサイト内検索エンジンを導入する前にすべきは、検索窓を目立たせることです。コンシェルジュの場所や内線番号が分からなかったら利用されないのと同じです。Googleのトップページを思い出してください。

 このように、Googleが目指す考えは無料で拝借できます。分かりやすい例は、サイト内検索の回数(絞り込みやページネーションの回数)を減らすことです。つまり、欲しいと思われる順に表示してあげることです。

・サイト滞在時間が短いけど購入してくれたら一番いい
・商品ページ滞在時間(ドエルタイム)が短くて購入してくれないのには問題がある

 また、ECでは1回のクリックでもアクションが起こせます。ドエルタイムの長さによってもアクションを起こせます。離脱しようとする買物客に声を掛けるのに時間が要らないのが、実店舗との違いです。

 話は右往左往しましたが、ここでの結論は・・・

次のページへ

やっぱり「(適切な)ドエルタイムを作りましょう」です。

 Alexa Rankに基づき、ECの上位1万店(大手)と、それ未満の9万店(中小)を比較したところ、中小サイトの滞在時間に200秒が費やされたのに対して、大手のそれは70秒に過ぎませんでした⁵。これには二つの理由が挙げられています。

・大手は最適化にお金を掛けている
・リピート客が多いから

 大金を投じずにできることもあります。エンゲージメントとは、単一セッションの滞在時間で量れず、長期的に繰り返し訪問していただけることです。SMAPや実店舗と変わりません。

https://vwo.com/blog/2013-top-ecommerce-websites-analytics-benchmarks/


著者

佐藤 英俊 (Heyday Satoh)

一級小型船舶操縦士。潜水士。座右の銘は「Discover new horizons! - 新しい視野を発見しよう」です。「視野=水平線・地平線」という言い回しが素敵ですよね。しかも、複数形。つまり、水平線は一つではありません。丘に登れば、別な水平線を見ています。一緒に新しい水平線を目にしましょう。

世界で最初の「震度計」を世に送り出したという異色の経歴。その後、IT 系に転じ、日本で二番目に co.jp ドメインを取得。21世紀に入って起業。カリフォルニアに居を構え、日本発のマルチメディア技術をハリウッドと世界の映画産業に浸透させた。モノ作りや新規事業の実体験を活かしてクライアントの支援をしている。

長年の夢、まだ叶っていない夢は、吐噶喇列島を旅すること。

「ABテスタ®」 https://ab-test.jp/
「運営代行.shop」 https://uneidaiko.shop/
「SALEリマインダ」 https://reminder.shop/
株式会社インフォプラス https://infoplus.co.jp/