【後編】受注:注文が1日10件まで(受注管理ソフトなしの場合)

長山 衛

前回、受注の考え方についてお伝えしましたが、今回はさらに掘り下げて実務を考えていきましょう。

効果

1日10件の注文時にしか出来ないことが二点あります。一つは、工数の見極め力を培う事。もう一つは各種メール内容のブラッシュアップ化です。一定の注文規模になってからも出来る事ではありますが、じっくりと考えて進められる期間は限られています。

例えば、サンクスメールに「店長の携帯電話番号を掲載する」など。私が受け取った事のあるサンクスメールには「店長直通携帯番号があり、いつでもご連絡して下さい」という内容がありました。そのおかげで、この店舗は何かあっても絶対大丈夫だという安心に繋がりました。実際にどれほどの電話がかかるか分かりませんが、注文件数が増えてからは試すに試せない内容ですよね。そして、工数を見極めることが出来るようになります。この時期に試行した内容は、後の運営に非常に効果が出てきます。

受注処理を流れ作業にするような店舗は、その他運営においても作業になりがちです。成功店舗こそ、受注処理で苦労を重ねている分、その後の成長に繋がっております。

作業ボリューム

1日10件の処理であれば、どんなに遅くても午前中には作業が終了するでしょう。慣れると30分もかからない作業ボリュームになります。でも、これはあくまでも受注処理の話です。実は、受注担当者に是非やって頂きたい内容があります。

私が過去に実践していた内容を一部ご紹介します。

【A】受注処理後にお客様のコメントを集計
【B】ネットショップの巡廻

【A】受注処理後にお客様のコメントを集計
ご注文時の備考にお客様からコメントを頂いたら、その内容を全て集計します。多くはお届け日やギフト対応に関するものになると思いますが、同じ質問が多ければ、逆説的に商品ページ等での見せ方として伝わっていない可能性を考えましょう。例えばお届け日の注釈の場合、プルダウンに情報を入れ込むことで、注文時に見てもらえる可能性は高まります。将来的に受注が増えた時の効率化を考えても、ぜひお客様のコメントを把握し、対策を進めましょう。

【B】ネットショップの巡廻
ネットショップのページ制作される方は、店長や専門のWEBデザイナーの場合が多いと思います。制作した人であれば、商品特徴を理解出来ますが、実際に顧客対応するのは受注担当者になります。新商品が増えても、情報共有されていなければ、スムーズな対応は困難となります。そのために新商品リリース時には商品ページチェックを実施し、そして顧客視点で気になる点をフィードバックしてもらう仕組みが有効的です。制作サイドでは気が付かない情報に気が付くことは多々あります。

私の場合、ガッツリとした商品ページを制作したのですが、チェックでは「情報過多で少し分かりにくい」という指摘を頂いて、情報の精査と可読性を高めたページに修正した事もあります。結果として、分かりやすさは高まり、ひいては訴求も高まり売上貢献に繋がりました。他者視点を取り入れることは制作においてとても重要です。

費用

1日10件であれば、1日辺り0.5人工~1人工で収まります。仮に時給1,000円とした場合、1日4,000円~8,000円となります。1ヶ月20営業日で計算しますと、80,000円~160,000円となります。この費用を考えますと、1日10件以内の注文数であれば受注担当者を雇用するのは難しいかもしれません。

但し、中長期的に考えますといずれは専任を雇用するため、当初からの雇用について一考すると良いですね。どのような体制も最初に出来ない事がいきなり出来る事はないため、段階的にしっかりと準備を進めていくことを推奨します。


著者

長山 衛 (Mamoru Nagayama )

現役ECデザイナーとして撮影からデザイン制作を前線で行い、
楽天市場等で数多くの優秀賞を受賞。ECおせち販促師として
各種メディアに取り上げられ、著書に『食品ネットショップ10倍売るための教科書』(日本実業出版)、
他「日本ネット経済新聞」にて「売れるデザイン演出テク」コラム連載(2012年5月~)。
EC運営者のスキル認定資格「ネットショップマスター認定講座」のカリキュラム監修担当。
経済産業省後援事業「ドリームゲート」認定専門家。
またアーティストとして、さくら水産のテーマソングを作詞作曲しカラオケ化。

企業URL:http://www.netshop-soken.co.jp/