調査データで読み解く、ファッションレンタルの課題〜20代女性の70%以上が知っているものの利用率は3%と判明〜

小林芽久未

株式会社テスティーでは「EC×若者」をキーワードに若年層調査・分析を実施し、若者の意識や消費行動を読み解きます。日々のサービス運営やマーケティングなどにおいて少しでも読者の皆様のお役に立てたら幸いです。

TOPICS
・20代男女のファッションレンタル認知度と、「レンタル」のイメージ。
・月額のレンタル制が多い中、若者のファッションアイテムの購入頻度とは
・アイテム別!ファッションアイテムの購入平均金額

第1弾 【若年層調査で判明したECにおけるイメージ写真の重要性】
https://www.ecnomikata.com/column/16176/
第2弾 【ライブコマースに見る次世代ECのカタチ】
https://www.ecnomikata.com/column/16728/

ものを持たない「シンプル生活」「ミニマリスト」という言葉が浸透し、車や自転車、家、オフィスにまでシェアリングサービスが広まっています。

ファッション業界においても、新たなライフスタイルを提案するサービスとして「ファッションレンタル」が登場。

スタイリストがコーディネートを提案する「air Closet」や、新品の服をレンタルすることができる「メチャカリ」など、メンズ、レディース問わず、スーツやドレス、バックに至るまで様々なファッションアイテムをレンタルできるサービスが続々と登場しています。

今回は20代のファッション事情を紐解く調査の第3弾として、【ファッションレンタル】をキーワードに20代男女1,189名(男性580名、女性609名)を対象に調査を行いました。

20代男女のファッションレンタル認知度と「レンタル」のイメージ

まず、ファッションレンタルの認知度を調査しました。
その結果、20代男性の52.1%、20代女性の72.4%がファッションレンタルを「知っている」と回答しました。

一方、ファッションレンタル認知者のうち「レンタルしたことがある」と回答した人は20代男性で4.3%、20代女性で3.3%と実際の利用率は1割に満たないことが判明。

そこで、ファションレンタル認知者を対象に「知っているが利用したことがない理由」を聞きました。

>服を借りる概念がない 21歳女性
>レンタルより購入したいから 20歳女性
>汚したら怖いから。 21歳男性
>返却に手間がかかりそうだから 24歳男性
>日常使いの服をレンタルするのは抵抗がある 25歳女性
>面倒な気がするから。 借りる値段が高そう。 25歳女性
>男性物があるかわからない 27歳男性

「サービス内容がよくわからない」「汚したら大変」「面倒」「日常的に着る服を借りるのに抵抗がある」といった声が挙がりました。
普段使いの服を借りて返却することに対しその一連の流れを手間に感じる点や、汚してはならないという責任感を伴う点が実際の利用に至らない理由と言えそうです。

また、ファションレンタルを利用したことがない人を対象に「ファッションレンタルを今後利用してみたいと思うか」を尋ねたところ、20代男性で10.2%、20代女性で15.5%が「機会があれば利用してみたいと思う」と回答。今後の利用意向も1割程度にとどまる結果となりました。

「機会があったら利用したい」と回答した人を対象に、「どんな場面で利用したいと思うか」について尋ねました。

>記念日やイベントなどがあったとき 20歳女性
>彼女とのデートの時 22歳男性
>着用したいものがあるが値段が高すぎるときなど 27歳男性
>高級ブランドを購入するか悩んでいるとき。 20歳女性
>結婚式やパーティー 28歳女性
>デートや会議など 27歳男性
>お洒落したい時 25歳女性

男女ともに「結婚式などの冠婚葬祭時」との回答が最も多く集まりました。男女別で見ると、男性からは「デート」や「会議」、女性からは「パーティー」や「高級ブランドの購入検討」のタイミングでファッションレンタルを利用してみたいという声が挙がりました。

特別なシーンで身に着けるファッションアイテムをレンタルしたいという意向が強く、日常的に身に着けるファッションアイテムをレンタルするという考えがあまりないことがわかりました。

一方、最近では女性向け高級ブランドバッグの定額レンタルサービス「Laxus(ラクサス)」 や、男性向け高級ブランド時計の定額レンタルサービス「KARITOKE(カリトケ)」のように、日常的に身に着けるバッグや時計において高級なものをレンタルするサービスに注目が集まっています。

これらサービスのように、日常生活の中でちょっとした贅沢やちょっとした特別感を得られるアイテムを取り入れることがファッションレンタルサービス拡大の一手になるかもしれません。

月額のレンタル制が多い中、若者のファッションアイテムの購入頻度とは

現在あるファッションレンタルサービスの多くは月額制となっています。そこで、20代男女のファッションアイテムの購入頻度を調査しました。

すると、20代男性の42.2%、20代女性の54.5%が「月に1回以上」ファッションアイテムを購入していることが判明しました。

一方、20代男性の約6割、20代女性の4割以上が「2〜3ヶ月に1回」「半年に1回、またはそれ以下」と回答しました。

ファッションアイテム別の平均購入金額は?

最後に、20代男女がファッションアイテム1点の購入にかける金額について調査しました。(小数点以下、四捨五入表記)

ファッションアイテムの中でも購入金額が最も高かったのは、男女ともに「ジャケット・コート」で7,000円台となりました。

20代男性においては「バック」「シューズ」にかける金額も「7,000円台」と比較的高い傾向が見られました。

トータルコーディネートで購入した場合、20代男性は平均30,742円、20代女性は平均28,572円と男女ともに平均約30,000円かかることになります。1シーズンにどのアイテムをどの程度購入するかは人それぞれですが、月額10,000円以下で数種類のアイテムをレンタルできるファッションレンタルサービスを上手く併用することで、出費を抑えながらオシャレをより楽しめるようになるかもしれません。

また、ファッションレンタルサービスで様々なアイテムを試し、気に入ったものを購入するという利用方法も考えられます。この使い方が普及すれば、せっかく購入したのに使わないアイテムや購入したことさえ忘れ、タンスの肥やしになってしまうアイテムなど、もったいないアイテムや無駄遣いを減らすことにつながると考えられます。

まとめ

・ファッションレンタル認知度は男性の半数以上、女性は7割以上。そのうち利用経験者は1割以下。
・ファッションアイテムの購入頻度は、20代男性の約6割が「2〜3ヶ月に1回以下」、20代女性の約6割が「月に1回以上」
・ファッションアイテムにかける平均金額は、20代男性で「6,148円」、20代女性で「5,714円」。「バッグ」や「シューズ」は平均購入金額が高い傾向。

考察

既存のファッションレンタルサービスの中には新品のアイテムをレンタルでき、かつそのまま購入できるサービスや、「キズ・汚れ保険付き」のサービスもあります。また、1アイテム数百円でレンタルできるサービスもあります。そういった中、「レンタルより購入したい」「汚したら大変」「借りるのは高そう」といった声が多いという現状を鑑みると、サービス内容の認知を拡大し、ファッションレンタルに対する思い込みを正すことが今後の利用意向向上の鍵になると言えそうです。

メルカリをはじめとするフリマアプリの普及により、若年層の間でリユース(中古品の売買)は日常的に行われるようになりました。しかし、日常的にモノを「レンタル」するという行為に対しては抵抗感があるのかもしれないということが今回の調査を通して見えてきました。メルカリのように市場を牽引するサービスが登場することで、ファッションレンタルを日常的に利用するという概念も一般化する可能性がありそうです。

衣料品の廃棄量が年間100万トン以上とも言われる日本においてファッションレンタルサービスが拡大することは、無駄の削減や「エコ」にもつながるのではないでしょうか。

以上、若年層男女のファッションEC利用調査第3弾「ファッションレンタルに関する調査結果」をお送りしました。


著者

小林芽久未 (Megumi Kobayashi)

平成4年生まれ。

株式会社テスティーの広報・ライターを担当。
若年層リサーチに特化したTesTeeにて、調査メディアの運営に携わり
女子高生や女子大生、10〜20代男女を対象に多様なジャンルにて調査を実施。
若年層マーケティングに助力するため、イマドキの若者の実態を発信している。

■企業情報
【株式会社テスティー】https://www.testee.co

■事業内容
・スマートフォンアンケートアプリの開発・運営
 「Powl(ポール)」https://static.powl.jp/lp/
・プログラミング不要のチャット型ツールの開発・運営。
 「Fast Sonar(ファストソナー)」https://fastsonar.com
・若年層/アプリに特化したモバイルネットリサーチ事業の運営
 「テスティーリサーチ」https://www.testee.co/research
・リサーチ結果を紹介するメディアの運営
 「TesTee Lab(テスティーラボ)」https://lab.testee.co