【第14回】県民性も?EC運営者が知っておきたいアクセス解析のツボ
タキシード、燕尾服、モーニングコート、フォーマルスーツ・・・
メイドインオオサカの紳士礼服を製造販売するフォーマル専門店ノービアノービオ。1952年に礼服の生地問屋として創業、今は製造から小売(ネットと実店舗)まで手がける、いわゆるSPA企業ですが、小さな小さな町工場です。
バブル最盛期、従業員230人 年商65億円、紳士礼服メーカーとして業界2位。バブル崩壊後、従業員20人、負債45億円、在庫は倉庫に14億円分。
年商65億から負債45億円、約100億円のジェットコースターを下りきった頃、服の「フの字」も知らない素人だった僕は楽天市場店のスタッフとして、この会社にやってきました。
順調に伸びていた頃、相次ぐ大手の参入で再び窮地に。首の皮一枚すらちぎれそうなとき、次々と訪れた出会いと気付きと・・・たくさんの先達に出会い、学び、SNSを使ってV字回復。
SNSは次々にピンチをチャンスに変えてくれました。
これから記させて頂くことは特筆すべき秀でたスキルなど何もない普通の僕がやってきた、「今日から誰にでもできるお話」です。
このお話を通じ、皆さんのお店のコンバージョン率+0.1%~に少しでもお役に立つことができればと、経験した全てをお伝えしていきたいと思います。
【1~11回のガイド付きまとめ】
https://ecnomikata.com/column/20041/
【第12回twitterはお店が「探す」「引き出す」に使えるSNS】
https://ecnomikata.com/column/20125/
【第13回】検索エンジンの今を捉え、得意領域で検索獲得を
https://ecnomikata.com/column/20362/
サイトの健康診断をしていますか?
タキシードや燕尾服、ニッチな商材を扱う当店は、EC出店序盤、特にモールで苦戦を強いられました。
外部リンク、衣装提供の訴求、O2Oなど自社サイトならではの集客販促方法でレッドオーシャンを抜け出すことができ、自社のペースで運営をすることができているのではないかと思います。
モールとは違う、自由であり難しい自社サイト。知識が無いなりにポチポチと数ヶ月掛けて起こした自社サイトは、それはそれは可愛いもので、そのサイトを荒らしたいい加減なリスティング広告コンサルタントと戦ったりと思い出は尽きません。
その当時のことは、
【第4回】お客さんの「教えて」に向き合うコトでアクセスも売上も伸びた
https://ecnomikata.com/column/18406/
にて触れていますので、ご参照ください。
自社ECサイトを育てていく中で必要不可欠なのが、グーグルアナリティクスなどのツールを用いた解析・分析ですよね。
集客販促のお手伝いのご相談を頂く際、まず始めに見させていただくのもアナリティクスとサーチコンソールです。
サイトのお手伝いは入院、手術、治療、リハビリの流れと似ていると思います。まずはサイトの現状を見て、そのお店のSWOT分析を行います。強み (Strengths)、弱み (Weaknesses)、機会 (Opportunities)、脅威 (Threats)ですね。
アクセス解析はサイトの健康診断みたいな感じですね。そこから、競合大手が多数いるジャンルでは、「灯台下暗し」を探します。渋滞している大通りではなく、空いている抜け道を探す感じですね。
抜け道が見つかるとその道を整備していく作業に入ります。人間ドックで血管の詰まりがわかれば、その治療をして血流を良くしてあげる感じですね。人間も血の巡りがよくなると肩こりや偏頭痛から開放され、顔色も良くなったり体調も良くなりますよね。サイトも同じだと思っています。
しかし、ご相談を受けるサイトさんの何割かで
「グーグルアナリティクスってなんですか?」
「どうやったら見れるんですか?」
「入っているみたいですが見たことありません」
このようにおっしゃる方がいらっしゃいます。
アナリティクスを実装していないサイトも多く、サイト制作者に問い合わせて頂くと
「言われてないので入れてません」
「入ってはいますよ。見たい時に言ってくれれば」
と、呆れるようなケースもしばしば。中には設置場所が間違っていてデータが何年も計測されないままで気づいていないということもありました。
アナリティクスをサイト構築の一つの作業としか見ておらず、制作会社のアカウントで導入、クライアント側に共有していない、伝えていない。そもそも入れることを依頼されていないので、入れていないと開き直る制作業者さんもありました。
サイトをお家に喩えると、ページを作ってもアナリティクスやサーチコンソールが導入されていないというのは、配線工事がされていない、断熱材が壁に入っていないレベル。そんなお家の住心地は相当悪いはずですからね。サイトも同じです。
このコラムをお読み頂いている皆さんの中に、よもやアナリティクスが入っていない、見ていない方はいらっしゃらないとは思いますが、「え?」となった方はすぐにチェックして、サイトの健康診断してくださいね。
働くけど稼がない営業マンと効率よく稼ぐ営業マンを見極める
EC界の兄貴分・ゲキハナの古屋さんのコラム第2期は先日最終回を迎えましたが、「お金の話をタブーにするのはやめよう」という視点でありながら、決して理想論にならず、経験談を礎にしたコラムはとても身につまされる連載でした。
とても温和で丁寧な語り口調の古屋さんのコラムは、ぜひ社内全員で読んで、それぞれの解釈を共有してみることをオススメします
https://ecnomikata.com/column/20476/
この章ではゲキさんと同じお金にまつわることについて触れますが、僕なりの捉え方でサイトのコンテンツ側でお話をしたいと思います。
自社では、ECサイトの外にオウンドメディアを立ち上げてECサイトに導線を貼っていました。
アナリティクスで見るべきところは本当に様々で、指標にしている数値も人それぞれなのですが、オウンドメディアで集客をしてきた僕から、ここを見て頂きたいなと思う点をご紹介します。
アナリティクスは腰を据えて観始めると泥沼になって、何時間でも眺めてしまうこともしばしば、という方も多いのではないでしょうか?
とはいえ、業務がいくつもある中でアクセス解析を専門に行うスタッフさんを擁している企業は決して多くないと思います。
アウトソーシングするというのも一つの手です。しかし、それも経費として出て行ってしまうもの。当社もかつてはそうしていましたが社内に中々ノウハウが蓄積されて行かないんですよね。
ですので、僕がECサイトをお手伝いする際は社内に担当者を据えて頂き、二人三脚で学んでいく手法を取っています。
アクセス解析の見方、捉え方、考え方、ひらめき、それをコンテンツで実行していく方法を考え実践する。ブログの添削なども行います。
社内に熟知している人がいれば、少しずつではありますが、絶対に自社に基礎体力として備わっていきます。何より怪しいコンサルタント会社に引っかからなくて済みますね。
これも自分の経験談から来るもので、そのことは、冒頭でリンクを貼った【第4回】で同じくご紹介していますので、ご参照くださいませ。
オウンドメディアで集客している場合は、上図のように「すべてのトラフィック」→「参照サイト」で自社のメディアをクリック。
言い方はキツイですが、ここを見ると
「動くけど営業成績の悪い営業マン」
「既存客に強い営業マン」
「新規客に強い営業マン」
「クロージング力の強い営業マン」
が透けて見えてくるわけですね。
上図のブログ経由のアクセス・売上データでご説明すると、
1:アクセスはNO.1 新規の獲得率は約69%と高く、売上も少しある。
2:アクセスは【1】と遜色なく新規獲得はNO.1しかし1件も受注なし。
3:新規は低いが、1人辺りの滞在時間と閲覧ページが飛び抜け売上も出している。
4:こちらも【3】同様、新規は低いが、売上はダントツの稼ぎ頭。
ということで、2は呼び込みができるが、売上に繋がっていないコンテンツで、3や4は、何度も読み込み、売上に貢献しているということがわかります。
同じブログでも、新規と馴染み、呼び込みとクロージングの得意不得意が明確に出てくるわけですね。この辺りを把握すると、自店がお客さんから求められている、より良いコンテンツの答えが透けて見えてくると思います。
あくまでそのメディアからやってきてそのまま注文に至った数字なので、一度離脱したり、後日再訪して受注などもありますので一概に言えませんが、大きな指標にはなると思います。
【アクセス解析の見方、捉え方、考え方、ひらめき】
を養う上で最も簡単で成果に繋げやすい箇所ではないかなと思います。
サイト内にコンテンツを収納している場合、特集やカテゴリページを作り込んでいる場合は「ページの価値」を見るとよいですね。
「ページの価値」は、アナリティクスの「コンテンツ」→「サイトコンテンツ」→「すべてのページ」で見ることができます。日本円で表示するには通貨の単位を設定しておくことをお忘れなく。
ページの価値を見る時にECサイトでは「購入完了」「注文完了」が最も高くなり、「買い物かご」「カートの中」など購入の途中にあるページが高くなります。
ですので、「目標達成」まで距離のあるトップページとカートの中の系統のページを比較するのではなく、同じような階層、つまり特集やカテゴリページ同士で比較するということが大切ですね。
ECサイトでも意外と出ている県民性
様々なECサイトのアクセスデータを拝見していて、面白いなと気づいたのが都道府県別データです。アクセス数、受注額はやはり人口に比例しますので、ECサイトのみでお店をされている方は意外と見ていないケースがあります。
当社は大阪と東京に店舗があるので、020の上で地域データは欠かさずに見ていました。また、ブライダル業界の商材を扱っているので、同業者のサイトのお手伝いも多いのですが、上図はブライダル系のECサイトです。
アクセス数、受注数、受注額ではなく、コンバージョン率順に並べてみると特徴的なデータがありました。都市部ではなく、地方においてCVRが高い傾向にありました。
もしや?と思い、統計データで「結婚式の1組辺りの平均予算」と照合すると、ECサイトの上位10県のうち5県で一致していました。もちろんたまたまかもしれません。
しかし、このことがコンテンツを作る上で大きな試金石となりました。豪華な結婚式のイメージは愛知県にあったのですが、愛知は10位以内に入っていません。1位はダントツで千葉県でした。
「千葉県って何がありますか?」
これが答えですね。あの夢の国のテーマパークです。あそこで結婚式を挙げるのは中々高価ですよね。
そこで、「あのテーマパークの結婚式の平均相場は◯万円。一生に一度の結婚式ですから、妥協はしたくないですよね。そこで、ウェルカムボードや席札、席次表は手作りしてみませんか?」そんなアプローチのコンテンツができるわけですね。
その中に散りばめるべきキーワードを自社商品と絡めて連想していけば、良質なコンテンツが書けそうですよね。
他にも、東急ハンズやロフト、ハンドクラフト系のショップの少ないエリアでのCVRが高い傾向にあり、この辺りも自社にアクセスを生む、強力なコンテンツの種になるんですね。
ECでも、よくペルソナという表現をしますが、お客さんのイメージが見えてくれば、コンテンツも具体的に創り出していけますよね。
コンテンツを生み出す時に重要な、自分の好きなことを絡めて発信するヒントは前回13回目にてご紹介しましたので、下記もご参照ください。
https://ecnomikata.com/column/20362/
静岡県民は甘い物が好き?相性の良い地域を知ろう
前章の話を「魔法の壷プリン」で有名な神戸フランツ( https://www.frantz.jp/ )の仲良しなご担当者と話していると、
「そういえばウチ、静岡県からの注文多いんですよね」
とおっしゃいました。
ここで「ひらめき」ですよね。お茶どころだし、お茶請けに甘い物が好きなのかな?スイーツ好きの県民性なのかも?と想って調べてみると、意外なことがわかりました。
県民1人辺りのプリンの消費量は7位でしたが、スイーツの代表格ケーキの消費量42位だったんです(平成28年度) 。
お茶どころで、抹茶プリンが好き?とも思いましたが、抹茶のスイーツの種類は豊富にありますしね。
翌年、変動はありましたが、プリンとケーキのランクは20位ほどの開きがあり、決して甘い物全般が好きなわけではなく、プリン好きの傾向がありそうだという推測が立ちます。
SNS広告、リスティング広告もエリアを絞って配信できますから、より強い地域に絞った広告戦略やキャンペーンを講じるのもありですよね。
13回目で「広告の前に、コンテンツでお客さんの傾向や自社の強みをある程度掴んでからの運用が賢明」と記したのは、コンテンツを更新していくと、こうしたデータを掴むことができるという理由もあるのです。
とある地方の食品ECサイトでは、東京と大阪のアクセスはほぼ同じなのに、大阪だけが極端に直帰率が高く、滞在時間も短く、受注も少ないというサイトもありました(大阪人は食に厳しいのでしょうか。僕も大阪人ですが)。
皆さんのお店と相性の良い都道府県はどこでしょう?ぜひ、アナリティクスで見てみると思わぬ気づきがあるかもしれませんね。
そういう意味では、あの県民性を扱うバラエティ番組は良いヒントになるかも?
あ、賢明な方はお気づきかもですが、タイトルのツボと壷プリン掛かってます。
第14回も最後までお読み頂き、ありがとうございました。
褒められて伸びる僕に、ぜひぜひ今回のご感想・温かいお言葉をよろしくお願いします。
http://www.machicollege.jp/contact
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次回の更新は
11月6日(火)あたりを予定しております。次回も宜しくお願いします。