薬事法の基礎① 「医薬品」とは?

木川 和広

【連載コラム】これだけはおさえておきたいECの法律問題
アンダーソン・毛利・友常法律事務所 弁護士 木川和広

第3回:サン・クロレラ判決に見る薬事法と景表法の境界線
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第4回:2016年EC業界注目の法律トピックTOP3
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「医薬品的な目的」があると健康食品でも「医薬品」とみなされる

私が東京地検で薬事法の取締りをしていた当時、違反者から、「自分は健康食品を売っていたのであって、医薬品を売っていたのではない。」という弁解を良く聞きました。確かに、販売された商品のパッケージには「健康食品」と書いてありましたから、彼らがそう弁解したくなる気持ちも分からなくはありませんが、薬事法は、「医薬品的な目的をもって販売されるものは医薬品とみなす。」という規制方法を採っており、「医薬品的な効能効果」を謳って販売すると、その商品は「医薬品」とみなされます。その結果、医薬品を販売する許可を持っていなければ「医薬品の無許可販売」となり、販売許可を持っていても「未承認医薬品の広告」をしたとして罪に問われることになります。

「医薬品的な目的で販売されるものは医薬品とみなす。」という規制方法は、「目的規制」と呼ばれています。実際には医薬品的な効能効果がなくても、効能効果を謳って医薬品的な目的で販売すると、その商品は「医薬品」とみなされます。戦後間もなくの古い事例ですが、ただの生理食塩水を覚せい剤だとして販売したことが、医薬品の無許可販売とされた事例があります。この事例の場合、実際には覚せい剤ではないので覚せい剤取締法は適用できず、やむを得ず薬事法を適用して摘発したということでしょう。

「医薬品的な目的」は2種類ある

「医薬品的な目的」には以下の2種類があります。
① 疾病の診断、治療又は予防に使用する目的
② 身体の構造・機能に影響を及ぼす目的

①は病気を治すとか予防するといった目的ですので、特に説明は不要かと思います。②は、例えば、お腹の調子を整えるとか、肌の保湿力を高めるとか、眼のピント調整機能を高めるといった目的です。

昨年導入された機能性表示食品制度は、一定の要件にしたがった届出をした場合には、②の目的(機能性目的)で健康食品を販売しても、薬事法違反には問わないことにした制度です。国の許可性ではなく事業者の届出だけで②の表示(機能性表示)が認められるのですから、機能性表示食品制度の導入によって、②の目的(機能性目的)で健康食品を販売する行為を薬事法違反で取り締まる意義は乏しくなったといえます。

一方、機能性表示食品制度でも、①の目的(疾病治療予防目的)で健康食品を販売することは許されていません。今後は、②の目的(機能性目的)で販売される健康食品への取締りが緩やかになる反動で、①の目的(疾病治療予防目的)で販売される健康食品の取締りが厳しくなると予想されます。

なお、②の目的(機能性目的)の取締りが緩やかになると予想されるのは薬事法の刑事罰の話で、景品表示法による行政処分はまた別の話です。むしろ、ここ最近は、景品表示法による健康食品の取締りは、②の目的(機能性目的)を対象とするものが多いように見受けられます。今後は、①の目的(疾病治療予防目的)の取締りは薬事法、②の目的(機能性目的)の取締りは景品表示法という切り分けができていくのかもしれません。

昭和57年最高裁判決の「医薬品」概念

薬事法上の「医薬品」概念に関して最も引用される昭和57年9月28日の最高裁判決は、クエン酸が高血圧、糖尿病、リウマチなどに効くと宣伝して、クエン酸の錠剤を販売していた事業者に対するものです。判決理由では、医薬品の概念について、以下のように述べられています。

「『医薬品』とは、その物の成分、形状、名称、その物に表示された使用目的・効能効果・用法用量、販売方法、その際の演述・宣伝などを総合して、その物が通常人の理解において『人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている』と認められるものをいい、これが客観的に薬理作用を有するものであるか否かを問わない。」

つまり、「医薬品的な目的」があるか否かは、健康食品を販売する際の様々な事情を総合して判断されるということです。したがって、ネーミングやパッケージには医薬品的な要素がなくても、医薬品的な効能効果を宣伝すれば医薬品と見なされますし、逆に、効能効果の宣伝をしなくても、ネーミングやパッケージが医薬品的であれば医薬品と見なされる場合があるということになります。また、LPやPOPなどに効能効果を記載したような場合だけでなく、例えば、スーパーで見かける実演販売などで口頭で効能効果の説明をした場合であっても、薬事法違反になることがあります。

次回は、EC事業者の方が最も頭を悩ませる薬事法上の「広告」概念について、近時の2つの注目すべき摘発事例をご紹介しながら、ご説明します。

著者

木川 和広 (Kazuhilo Kikawa)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所スペシャル・カウンセル
国際的な案件も含め、EC関連企業の法律問題を幅広く取り扱う。
(木川弁護士プロフィール)https://www.amt-law.com/professional/profile/KLK

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