【連載コラム第2回】インフィード広告の成功の鍵 〜2016年ネット広告のトレンドワードとクリエイティブ戦略〜

安藤達也

【連載コラム】2016年ネット広告のトレンドワードとクリエイティブ戦略
(第2回)インフィード広告の成功の鍵

【連載コラム第1回】媒体技術で考えるネット広告 http://ecnomikata.com/ecnews/strategy/8007/

スマホ時代のNewスタンダード「インフィード広告」

ここ1、2年で一気に注目を集めた「インフィード広告」。その名の通り、ニュースメディアやSNSなどのフィード(feed)の中(in)に差し込まれる広告フォーマットのことです。スマートフォンに適したタイムライン型のサービスが増加する中で、視認性が高く、効果的なアクションを期待できる広告フォーマットとして広まってきました。FacebookやTwitterなどのソーシャルメディア、SmartNewsやGunosyなどのキュレーションメディアのタイムラインの中で、皆さんも何度か目にしたことがあるのではないでしょうか。
昨年4月には、Yahoo! JAPANがTOP面のUIを刷新し、インフィード広告の販売を開始したことで一気に話題になりました。また、今年の6月にはLINEが運用型のインフィード広告(タイムラインアド)の販売を開始すると発表し、インフィード広告がスマホ時代の新しい広告フォーマットとして本格的に市場に定着・拡大してくると予測できます。
なお、インフィード広告の市場規模は、2015年768億円、そして2020年には2015年比300%超の2,478億円に到達する見込みです(※)。

※インフィード広告市場調査より
https://www.cyberagent.co.jp/newsinfo/press/detail/id=11607

インフィード広告の魅力はその視認性の高さとアクション率

先にも話しましたように、インフィード広告の魅力はその視認性の高さにあります。これまでのバナー広告は基本的にサイト内のコンテンツとは別の「広告枠(広告のための枠)」に表示されていましたが、インフィード広告はコンテンツとコンテンツの間に自然な形で出現するため、目に留まりやすく、またアクションにつながりやすいのです。Yahoo! JAPANは「従来のディスプレイ広告と比較してCTRが2.2倍に向上」と発表しています。

インフィード広告はそのフォーマットの新しさから、これまでと違った運用スタイルやクリエイティビティが求められるようになりました。ここで少し、その戦略立案と実行の具体的なポイントをご紹介したいと思います。

インフィード攻略のためのオペレーション設計とクリエイティブ戦略(1)

(1)オペレーション設計(運用ルールの定義)

インフィード広告は非常に視認性が高いため、クリエイティブの疲弊が非常に早い、つまり飽きられやすい、という特徴があります。そのため、クリエイティブを非常にスピーディー且つ大量に運用する必要があるのですが、その高速・大量の運用を正確に実行していくために重要なのが、運用ルールの定義(オペレーション設計)です。
運用ルールの定義は科学的・実証的に行います。まず、各インフィード広告の媒体のアルゴリズムの分析からスタートし、その媒体が「いつ、どのような評価基準で、そのクリエイティブの良し悪しを判断しているのか」を正確につかみます。そして、その媒体の判断基準に沿って、「どのような構造で、何本入れ、どう差し替えていくべきか」を、媒体の評価アルゴリズムと実証データから設計していきます。細かい部分だと、例えばFacebookであれば「スタティック(静止画のみ)・カルーセル・動画のどれがよいのか」「動画であれば何秒がよいのか」ということも突き詰めて、運用のルールに落としていきます。こうして設計した運用ルールをベースとして、それぞれの業界や顧客でより最適な形でカスタマイズしていくことで、最短距離で広告効果を最大化できる型を作っていくのです。

インフィード広告攻略のためのオペレーション設計とクリエイティブ戦略(2)

(2)クリエイティブ戦略(誰に何をどう伝えるのか?)

運用ルールの定義ができたら、具体的に「誰に、何を、どう伝えるか」というクリエイティブ戦略です。「最もマッチしたユーザーに、最も求められる情報を、最も魅力的な形で提供する」ための戦略づくりとも言えます。「誰に」の部分には、配信テクノロジーやタイミング、セグメントの設計など重要なプランニング要素が多く含まれますが、ここでは「何を、どう伝えるか」のクリエイティブ(企画・制作)の部分を中心にご紹介したいと思います。
インフィード広告のように高速・大量の運用を実行する場合、事前にある程度長期的な運用を想定してクリエイティブ戦略を立案しておくことが大切です。例えば、「どういう訴求コピー・画像・レイアウト・デコレーションでアプローチできるか」「その効果的な組み合わせは何か」の仮説の洗い出しや、「どの要素からどう検証していくか」などの検証のストーリーを描いておくことです。高速・大量の運用に加えて、正確に表現面の検証を行うとなると、事前の綿密な設計がいかに重要かはイメージできますね。

「挑戦し続けること」が成功の鍵

効果を最大限高めていくには、事前準備やルールづくりだけでなく、大胆なプランニングやアイデアのジャンプ、表現のクオリティももちろん重要になります。これまで見たことのないようなグラフィックやアニメーション、また、鮮度のあるリアルタイム性の高い情報のチョイス、さらに、次々と現れる動画やカルーセルなどの新しい表現タイプへの挑戦など、様々なアプローチでユーザーの心を捉え、飽きさせないような驚きを常に提供していく工夫が勝負の鍵となってくるでしょう。安定と挑戦のバランス(ポートフォリオ)をうまくコントロールしながら、めまぐるしく変化するインフィード広告のフォーマットを攻略していきましょう。


著者

安藤達也 (Tatsuya Ando)

株式会社 サイバーエージェント
クリエイティブソリューション局 局長
1983年 兵庫県生まれ。同志社大学卒。  2007年 株式会社サイバーエージェントに入社。インターネット広告事業本部クリエイティブ局にてコピーライター、プランナーとして活躍後、同社大阪オフィスのクリエイティブテクノロジー局の立ち上げに従事。国内外の幅広いクライアントのWebマーケティング戦略の立案と実行を担当。その後、クリエイティブソリューション局局長に就任。現在に至る。