ヤマト他5社が共同実施、鉄道を活用した物流実証実験

福島 れい

ヤマト・佐川・日本郵便・メトロ・東武が共同実施

 ネットショップからお客様の元に商品を届けるにあたり、欠かせない「物流」。出荷から数日以内に届くことや、冷凍冷蔵にも対応し、なにより欠損なく安全に届けられる質の高い物流が発展しているからこそ、日本のEC業界は勢いよく成長してきたと言っても過言ではないだろう。

 しかし、EC業界の成長に伴い、荷物の数は増え、これまで通りのやり方では追いつかなくなりつつあるのも事実だ。交通渋滞やトラックドライバー不足、またCO2排出量の削減も急務の課題とされている。こうした課題の解決を目指し、旅客鉄道の輸送力を活用した物流実証実験を実施するとの発表があった。

 旅客鉄道の輸送力を活用した貨物輸送については、2015年12月に社会資本整備審議会・交通政策審議会が発表した「今後の物流政策の基本的な方向性等について(答申)」の中で触れられており、この度、東京地下鉄株式会社、東武鉄道株式会社、佐川急便株式会社、日本郵便株式会社、ヤマト運輸株式会社の5社が共同で実証実験を行う運びとなった。

 実験パターンは「拠点間輸送」と「拠点~駅間輸送」の2パターンで、実際の荷物の重量を模した段ボール等を積載する形で実施される。両実験とも、お客様がご利用できない実験専用ダイヤを設定し、今年9月から10月に月にかけて合計10回行われる。実験に利用するのは、東京メトロ有楽町線~東武東上線の鉄道施設。

 これにより、各作業工程における所要時間・人員数、安全性確保のための人員配置、作業効率性や安全性に資する機器、施設・設備等の必要性と規模、旅客輸送への影響等を把握。実験の終了後は、取得したデータや旅客輸送に与える影響、物流各社のニーズ等を考慮し、トラック輸送から旅客鉄道を活用した貨物輸送への転換(モーダルシフト)の実現可能性を検証していくという。

 一部地域と物流各社が協力し、路線バスを活用した貨物輸送により、路線バスの維持と過疎地域での物流サービスの充実を実現している。人の移動のために「路線バス」、荷物の輸送のための「輸送トラック」という形にとらわれず、取り組んだことにより、双方が充実した事例と言えるだろう。既存のものを上手く活用し、物流の課題に挑む。今回の実証実験を皮切りに、より良い物流が実現することを期待したい。


記者プロフィール

福島 れい

ECのミカタ編集部に所属するバドミントンと和服、旅好きの記者、通称れーちゃん。ミニ特集「アパレルECの未来(https://goo.gl/uFvr2C)」等、これからEC業界がどんな風に発展していくのか。に注目しながら執筆しています。2017年の執筆テーマは、”私にしか書けない記事をタイムリーに”。

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