アスクル17年5月期2Q決算〜LOHACOの今後は?岩田社長に直撃/ヤフー連携の意義

石郷“145”マナブ

アスクルの2017年度5月期を振り返る

アスクル株式会社(以下、アスクル)は、2017年度5月期の決算発表を行った。

 まず、連結業績の概要(17年5月期2Q累計)に関しては、次のように説明している。売上高は1650億9000万円で前年度同期比で110%となっていて、過去最高となった。売り上げ純利益は371億8100万円で売上高に対して占める比率は22.5%となり、当初の予定より若干の未達となった。販管費は335億3900億円で、営業利益が36億4100万円で計画よりも4億円増、経常利益は35億8500万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は21億500万円となった。

 第2クオーター自体はどうだったのだろう。連結業績の概要(17年5月期2Q期間)を見てみると、売上高は895億2900万円で前年同期比109,6%、売り上げ総純利益率192億3700万円(前年同期比110.1%)、販管費が168億1200万円(前年同期比105.5%)、営業利益242億2400万円(前年同期比157.8%)、経常利益24億800万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は14億6000万円(前年同期比158.5%)となっている。

LOHACOの事業に関して

 事業別の項目ではLOHACOの内容に関しても触れているので取り上げたい。17年5月期2Q累計で、売上高は207億円(前年同期比137.2%)で、営業利益は△25億円となった。この中には、TVCMの積極的な投入、Tポイントを使った販促費用(△7億円)などが含まれている。今は、損益を維持しながら、売上高を成長させる方針がここに垣間見える。

 積極的に様々な施策に着手しており、例えば、小刻み時間帯指定サービス「Happy OnTime」が8月から開始され、この中で3000円以上の購入者は、1時間単位で時間指定ができ、かつその指定料は無料としている。これはアスクル自体が培ってきた自社流通を効果的に活用したもの。

 ここでさらにビッグデータとAIを活用することで、生産性の向上と収入の安定化をはかり、ドライバーとなる人材を確保できるようにして、会社にとっての配送の最適化を図るとともに、お客様の利便性を向上、支持者を増やして、結果的に売上高を拡大させる狙いだ。特に、LOHACOは日用品に強みがあるので、家事育児の時間調整がしやすいなどの理由から、主婦層でのファン獲得は十分に考えられる。

アスクル岩田社長の想いとは?

 最後に、直接、代表取締役社長兼CEO 岩田彰一郎氏に話も伺えた。色々話をさせていただいて思ったのは、LOHACOについて、商品を売るというよりは、メーカーの今まで果たせなかった想いを、自ら消費者に近づいて、解決していこうという意識を感じた。

 どういうことか。それは、アスクルとして考えると今まではBtoBのイメージが強い。事実、そうやって企業(メーカー)と直接向き合う機会が多かったからこそ、おそらくメーカーから、例えば、実店舗での展開、流通における限界などを、耳にする機会が多かったのではないかと思う。それは、実店舗自体が問題というのではなく、それ以上に、世の中が多様化して、実店舗だけでは、それを果たせなくなってきた中で、皆、ネット通販の可能性に目を向けたのだと思うのだ。

 だから、アスクルは、その先頭に立って、メーカーに対して、自分たちがネットを使った新たな付加価値をどう作れるか、と考えた先に、LOHACOがあったのだと思うのだ。特に、それを象徴するのが、LOHACO ECマーケティングラボという場だ。ここではメーカーが今まで、縦割りで売り場の陳列棚を取り合っていたのとは真逆で、LOHACOでお客様が何と何をまとめて購入しているかなどのデータをもとに、そのデータを開示して、企業間コラボなどを積極的に行っており、商品の新たな可能性を引き出しているのだ。

ECが世の中にあらなた価値を生む。その先頭に立つLOHACO

 岩田さんは「ラボで作った商品は今までの商品とは全く違うもので、例えば、ロゴも入っていないけど、だからこそ、それがインテリアになって、Instagramで拡散されて、ネットの中ではヒットが生まれたりするんです」と嬉しそうに話す。

 商品を売るというただそれだけの意識のレベルであれば、極端な話、価格を安くするという手段でいいだろう。でも、そうではなく、別の価値を生んで、そこに付加価値をつけて、価格ではない訴求の仕方をするところにこそ、メーカーとずっと向き合ってきたアスクルという会社にしかできない、ECがあるのだと思う。

 だからこそ、ヤフーとも結びついた。これからの未来を考えたときに、自分たちのできることはネットを通して、お客様と向き合うことだと考えたからだろう。より多くのお客様のデータが集まれば、メーカーとともにその革命を起こすことができる。ここにあるのは、ECを通して、メーカーの商品の価値を上げる、ということ。ここにお客様が集まれば集まるほどに、いろんな価値が生まれていく。

 今まで思いもよらなかった“型破り”な商品であっと言わせる、商品をメーカーとともに用意してくれそうだ。その成長に期待したい。


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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