【分析】日本の贈答文化がカジュアル化・広がる『ソーシャルギフト』の利用

ECのミカタ編集部

デジタル分野におけるサービスプラットフォームプロバイダであるSK planet Japan 株式会社(以下「SK planet Japan」、株式会社プラチナム内)は、SNSで気軽にギフトを送りあえるサービス『ソーシャルギフトサービス』の動向に関する分析結果と、株式会社NTTドコモ(以下「docomo」)が運営する『ギフトコ』および『cotoco』の各サービスに関する情報を公表した。

進む「ギフト市場のカジュアル化」

中元・歳暮市場、ギフト市場は、引き続き堅調な動向を示しているが、儀礼的なギフト贈答からカジュアルなギフト贈答へシフトするいわゆる「ギフト市場のカジュアル化」が進んでいる。市場全体の成長が横ばいなのに対し、ソーシャルギフト市場が手堅く拡大し、中元・歳暮市場でもソーシャルギフトのシェア拡大が予測される。

そもそもソーシャルギフトとは、SNSなどでつながる友人・知人や家族に、比較的手軽なギフトを贈ることができるサービスの総称だ。送り先の相手の住所を知らなくても、さまざまな種類のギフトを簡単な手順で贈ることができ、近年利用の幅が広がっている。

『ソーシャルギフト』を使った親しい人への贈り物が浸透

「ソーシャルギフト市場に関する調査(2017年)矢野経済研究所推計」によれば、2015年の中元・歳暮市場規模は小売金額ベースで1兆8,175億円し、前年から約15億円減少した。

一方で、より大きな括りとなる2015年の国内ギフト市場全体の規模は、前年比102.2%の9兆9,535億円のプラス成長をみせた。2014年から2017年(見込)の3年で市場規模は約5倍に拡大し、2016 年度の『ソーシャルギフト』市場は285億円まで拡大している。今後については、2021年度のソーシャルギフト市場は 1,310 億円まで成長すると予測されている。

これらのデータからは、中元・歳暮については、かつては儀礼やしきたりに則り「贈るモノ」よりも「贈るコ ト(行為)」自体が重視されていたが、近年では家族や親しい人に中元・歳暮を贈る人が増え、中元・歳暮 の贈答もカジュアル化が進行していることが推測できる。

ソーシャルギフトを活用する企業が増えている

そのような「ギフトのカジュアル化」を踏まえて、『ソーシャルギフト』を活用する企業が増えている。詳しい事例について見ていこう。

▶事例①『ありあけ』

60年間以上、横浜のソウルフードとして愛され続けてきた「ありあけのハーバー」。薄くソフトなカステラ生地に刻んだ栗と栗餡を込んだ船型の「ありあけ 横濱ハーバー ダブルマロン」をはじめ、季節に合わせた期間限定の商品などを販売している。この『ありあけ』だが、1999年に製造元の有明製菓が倒産。ハーバーも姿を消してしまう。2002年、横浜市民をはじめ、ハーバーファンから復活を望む声が上がり、ハーバー復活委員会が立ち上がり、元従業員らの尽力で復活した経緯がある。。

新生『ありあけ』は、市場規模を拡げつつあった「ソーシャルギフト」にいち早く目をつけた。ハーバーのコンセプトに「カジュアルなお土産」があり「カジュアルな贈答を得意とするソーシャルギフトとは相性がよい」との想いからだった。また、他者が取り組んでいいない施策にいち早く乗り出すことで、知名度向上にもつながると考えた。

いくつかのソーシャルギフトサービス会社を比較検討した結果、圧倒的なブランド力を誇り、幅広い顧客層を持つdocomoが運営する『ギフトコ』を導入した。成功報酬制であることも導入に至る際のポイントになったとのこと。導入後に売上は少しずつ伸びている。また、これまではシニア層が購買の中心であったのに対し、ソーシャルギフトでは若い層へもリーチできるため、認知度向上の面でも大きな効果を感じているとのことだ。

▶事例②『山本海苔店』

『山本海苔店』は、近年の「贈答文化のカジュアル化」の影響をもろに受けていた企業と言えるだろう。なぜなら贈答利用の停滞や顧客のシニア化という課題を抱えており、課題解決の為に、中元・贈答市場からプチギフト・お土産市場など新市場開拓の必要性が高まっていたからだ。

その流れの中で『山本海苔店』は、2013年に楽天、2015年にはAmazonにも出店した。ECへの出店を拡充させる一方で、山本海苔店はソーシャルギフトサービスにも着目し、2015年にソーシャルギフトサービス『cotoco』を導入した。その結果、3か月で350人がギフトの受け取りに店頭に来店した

。また、日本橋本店でしか『cotoco』で得たギフトを現品に交換できないという制限があったが、顧客の負担を減らすため『山本海苔店』では、自社サイトでも現品に交換できるようクーポン制度を導入。ソーシャルギフトサービス利用者からは、「こんなパッケージの商品は知らなかった」と、新パッケージの新鮮さを評価する声が寄せられ、商品の認知拡大に貢献している。ここでもソーシャルギフトサービスを導入したことの成果が感じられているようだ。

『ソーシャルギフト』をリードする2つのサービス

▶『ギフトコ』

NTTドコモが運営する“ギフトコ”とは、感謝の気持ちをLINEやメールに添えてギフトを簡単に贈れるサービスとなっている。『ギフトコ』ではdポイントが溜められるほか、他のサービスでたまったdポイントを使うことも可能になっている。

▶『コトコ(SK planet Japan)』
2014年にサービス開始したソーシャルギフトサービス「コトコ」。28ブランド、36,500店舗が参加し、利用者はメールやSNSでメッセージと一緒にギフトを贈ることができる。住所を知らなくても、SNSアカウントかメールアドレスがわかれば贈答できるのも特徴だ。

ギフトを贈る場合は、プレゼントしたいギフトをサイトから選ぶ。代金はクレジットカード払いやモバイル決済等。メールやSNSを通じて、相手に「ソーシャルギフト」が届く仕組みだ。受け取った「ソーシャルギフト」をお店に持って行けば、ギフトが受け取れる。商品の受け取り方法は2種類あり、ギフト提供に対応した実店舗でスマートフォンの画面等を提示して受け取る場合と、ギフトを贈られた側が直接住所を入力し配送される場合がある。

日本の伝統的な「お中元」や「お歳暮」の市場が横ばいになる一方、よりカジュアルな「ソーシャルギフト」はさまざまな場で広がりを見せている。まさに私たちは「新しいギフト文化」の創出の現場を目撃しているのかも知れない。今後の贈答文化の変化と『ソーシャルギフト』の動向から目が離せない。

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