EC業界News1週間まとめ〜ZOZOとユニクロの似て非なる夢/ライバルのKDDIと楽天が組む本当の意味
こんにちは。
編集長の石郷です。
今週、読まれた記事はこちらです。
■【ZOZO決算】ZOZOSUITに代わる新たなテクノロジー発表!
https://ecnomikata.com/ecnews/20656/
■【速報】KDDIと楽天が決済、物流、通信で業務提携
https://ecnomikata.com/ecnews/20670/
■【速報】ヤフー18年第2四半期決算発表〜
https://ecnomikata.com/ecnews/20654/
■佐川急便が2018年末から2019年正月の集荷・配達の特別対応
https://ecnomikata.com/ecnews/20604/
■Shopifyが全日本語対応オンデマンド印刷サービスを開始
https://ecnomikata.com/ecnews/20639/
■Amazonプライム会員限定!自宅で試着できるサービス
https://ecnomikata.com/ecnews/20595/
ZOZOSUITなしでも購入できる衝撃
「今後はZOZOSUITなしでも購入いただけるようになります」。この発表はつい先日のZOZOの決算で、前澤友作社長が発言したところによるものです。
これまでは、ZOZOのPBブランドである『ZOZO』はZOZOSUITを使って自分の細かなデータを割り出しそれに基づきその人の体型にあった一番“カッコいい”シルエットになるための衣類を提供してきた。衣類にはTシャツを始め、スーツなども追加され、ラインナップは増えてきた。
その上で、そのPBを今度は、ZOZOSUITなしでも購入できるようにしたというわけだ。どういうことかというと、これまで配布したZOZOSUITのデータや同商品を使用したユーザーの声を元に、「身長、体重、年代、性別」を入力しさえすれば、ZOZOSUITで測定したのと同じものを出せるだけののテクノロジーを取り入れたからだ、とした。
あの規模感でワクワクさせる前澤友作の感性
この辺、前澤さんの感性の鋭さを感じられる切り返しで、あれだけ売り込んだ「ZOZOSUITをいずれ近い将来廃止する」とまで言及しています。前澤さんの予測できない動きは、通常、計画を出していながらも、通常なら、その計画とその決めた手段に溺れてしまいがちなところを、計画後もアンテナをフル回転して、世の中の動向を見ながら、より印象的に人を惹きつけるようにして、軌道修正しているところにあるように思います。
手段は変化していますが、データに基づき、“カッコイイ”ファッションを提供する、目的はブレていない。こういう動きに対して、少なからずファンが生まれるでしょうし、ビジネススーツの納期も問題とはなっていますが、ファンがそこに好奇心を感じて、買っている以上は、このブランドに対しての離脱は最小限に食い止めることもできそうです。いわゆるインフルエンサー的な動きを企業単位でやってのけるパワフルさを感じます。
ユニクロとはそもそも見ている先が違う
あともう一点は、どうしてもユニクロと比較をされがちなところもあります。ベクトルが違うのかもしれないなと思います。ユニクロの凄さというのはカスタマイズ性にあるのだと思います。それまでのアパレルというのはブランドがありデザイナーがいてそこに個性があったから、その恩恵を得て自分のファッションセンスの表現につなげていたのかもしれないです。
一方で、ユニクロは敢えてその反対側に行き、シンプルで多様性のある提案の仕方をして、カスタマイズの為には、カラーバリエーションを豊富にして、そこから他のファッションとも組み合わせ方で、個性が出るようにしている。
ZOZOとは違うユニクロの情報製造小売業の考え方
柳井社長は情報製造小売業と言っていて、リアルな小売店とお客様のデータ分析と徹底的な生産管理を追求することで、いまの時代に相応しいアパレルを提供しようとしているように感じられます。柳井社長が言いたいのは製造業としての誇りなんだと思います。ユニクロは製造業からみたお客様のためのデータの活用と、ZOZOは製造業の観点では成し得なかったお客様のためのデータの活用という点で、対立軸があるように思います。
製造販売という土台を持つユニクロには安定感があります。一方で、販売チャネルを一つに限らず国内の有数のブランドで地盤をしっかり築いているZOZOにはインフラとして自ら開発したテクノロジーを自らのプラットフォームで複数のブランドを通して、再現できる強みがあります。
KDDIと楽天の業務提携の前に理解しておきたい「経済圏」構想
さて、あともう一つは、KDDIが突然発表した楽天との業務提携の話になります。いろんなメディアが書いていますが、どちらかと言うと携帯事業に寄った書き方をしているので、EC事業者にとって、どう受け止めたらイイかと言う視点においては、経済圏の戦いだと言うことになると思います。
ご存知の通り、昨今、ショッピングモールを中心に、楽天、Yahoo!、Wowma!といった感じで、経済圏を構築しようとしています。経済圏は言うまでもなく、Yahoo!などで言えば、Tポイントがつきますから、このTポイントというのは例えば、リアルのコーヒーショップ「ドトール」などで貯めたりできるものであり、Yahoo!ショッピングでも使えるようになるわけです。
このポイントがつくことで日頃の買い物がお得になるというメリットからどうせなら同じ経済圏で回遊し繰り返し購入するわけで、各社はその自らの経済圏の範囲を広めようとしているわけです。これが最近ではデータの部分と紐付き、経済圏では同一のアカウントを使うので、その経済圏での生活を浮き彫りにすれば、相応しい商品のお勧めに繋がり、より買い物の質も向上し、安定するというわけです。
一見すると、KDDIも楽天もそれぞれで経済圏を構築している為、ライバルであり、業務提携は本来進むべき方向性ではないように思われますが、実は、これはお互いの経済圏を守るための動きとも取れると僕は思っています。
携帯と物流の面で、楽天とauの経済圏のお互いの思惑は一致
KDDIは長年培ってきた携帯電話事業で、楽天に対して圧倒的な強みがある一方で、楽天はこれから懈怠事業に参入する立場です。そこでKDDIは、楽天が2019年10月から開始予定の第4世代移動通信サービス (LTE通信サービス) に対して、通信ネットワークを提供するローミング協定を締結したわけです。
一方で、楽天はeコマースというジャンルにおいては長年の知見があるので強みがある一方で、KDDIのWowma!はもともとDeNAの運営する「ビッターズ」を買収したものの、手に入れてそれほど時を得ていないので、盤石とは言えません。そこで、配送のインフラを楽天が進める「One デリバリー構想」と連携することは、お互い配送環境をよくして行こうという思惑では一致しているので、組む意味があり、かつその分、自らのサービス強化の徹底に注力することができます。
楽天のOneデリバリー構想は、楽天が自ら自社配送でデリバリーを担うというものですが、出店店舗からも声が上がっているように、これからのサービスであり、まだ未知数な部分があります。だからこそ、Wowma!の店舗も巻き込みながら、少しでもスケールメリットを生かしてサービス工場につとめ、早い時期に仮説と検証をする必要性があるわけです。
急成長する「キャッシュレス社会」にも楽天とKDDIは意識
楽天はかねてよりショッピングモールでありながら、自らが配送する意味を 今までの配送は「CtoC向けの配送をBtoCでやっていた」からこそECがこれほどインフラとなった今、「ECに知見があり店舗との関係がある自分たちがECに相応しいBtoC物流を作る必要性」があることを説いています。ある意味、垣根を超えてやる必要性があると考えたのではないかと思います。
最後に、決済絡みに関しては、au Payというのが来春スタートします。言うまでもなくスマホ決済の必要性が問われる中で、携帯事業で盤石な会員の力を握るKDDIはそれを使うロケーションを増やして、その会員の動きを携帯電話以外の場面でも使うようにしていきたいはずです。だからこそ、au Payを出すことに意味がありますが、やや後発となってしまったので、ここに楽天の「楽天ペイ」の持つ加盟店ネットワークを活かせば、その決済はアクティブになります。
会社1社でこだわる時代ではなく、アライアンスを意識して世界的な企業に
これを見てわかると思いますが、大企業であれば複数のサービスを展開しつつも、強みのあるじゃなるとそうではないところがあります。故に、これを一社単位で考えていれば、それを強化仕様で終わってしまい、今回のような業務提携はなかったでしょう。
しかし、それだけ今やお互いの経済圏は棲み分けできはじめているからこそ、大胆に被るジャンルがありつつも、強みと弱みをカバーしあって、企業というよりは、お互いの経済圏の発展のために切磋琢磨しようということなんだと思います。
グローバルな世の中で知見を結集しないと太刀打ちできないということも含めて、企業が合併を通して力をつけていくことはありましたが、それもある一定のところもまでくると、こういう形の業務提携も考えられ、おそらくこのようなものは増えてくるのではないでしょうか。
ということで今日はこの辺で。
笑顔溢れる一週間でありますように。
また来週お会いしましょう。