僕らの「財布」は何になる?PayPayかLINE Payか楽天ペイかそれとも?【東海大学&J-FEC&ECのミカタ産学連携企画】

石郷“145”マナブ

 見渡す今日の光景はいつもと違っていた。
そこにいたのは、東海大学の学生とネットショップの雄。

 きっかけは、一般財団法人日本電子商取引事業振興財団(J-FEC)理事 曽根原さんからの提案だった。ECのミカタ編集長である僕の講演を、東海大学の生徒と共に受けたいと言う。J-FECの声掛けの元、東海大学とネットショップとが、ECの未来を考えるというもので、その産学連携の企画に僕は、協力させていただいたのだ。この機会の創出には東海大学の准教授田畑智章さんも関わっており、それに感謝しつつ、今回は、その講演内容の一部とそれを元に学生とネットショップが話し合っているその様子を記事にしてみた。

 今回の講演の中身では「ボーダレスになる世の中」として、主に「スマホ決済」の話題をさせていただいた。昨今の動きとしてPayPay、LINE Pay、楽天ペイ、メルペイ、Origami Payなど、実に、あらゆる企業から様々なスマホ決済が出ている。

 これに関連して、僕なりの考え方として今後、いわゆる買い物につく「ポイント」は本当の「お金」に近づいていく、とにらんでいて、ここに絡んでくるのが「スマホ決済」だと思っている。そして、そこには経済圏が絡んでくる。

これまでとは違った買い物の新世界

 今では、商品を買う際にお得な「ポイント」。商品を買う際に還元されて、結果、値引きをされるからお客様はそこに価値を感じて、その店で商品を買うわけだ。一方、スマホ決済が始まってPayPayやLINE Payは一部の店舗でその購入金額の何%かを還元して、そのスマホの中の残高に戻しているわけで、ポイントのメリットをスマホ決済は解決してくれている。特に、ヤフーに関して言えば、Tポイントという存在があるのにも関わらず「PayPay」へのこの力の入れようである。

 これは時代が変わったのだと思う。語弊を恐れず言えば、お得さが付加価値だった頃は、それで十分だったが今やお得さだけではなく、そのデータまで求められるようになった。それを思えば、自社でその決済を持ち込んだ方が割りは良い。決済データはそのユーザーの趣味嗜好を映し出し、その人の人物像を浮かび上がらせるという点で、ビッグデータにつながり、AIと結びつけば、今とは違った買い物の提案ができるわけだ。

 さらに「なぜ経済圏か」と言えば、それは一社単位で考えることなく様々な業種と結びついて様々なデータが入ってくるようにしていくことで、そのデータはよりその人物像を正確に浮かび上がらせる。多くの情報が集まることがより的確な提案を自分たちのお客様にすることができるようになるから、なのだ。

 だから、楽天とKDDIの業務提携などがある。お互いショッピングモールや決済、携帯と同じコンテンツを持つライバルでありながらももはや楽天とauという違った経済圏での戦いなので提携してもお客を食い合うことはないという発想なのだ。いかに自分の経済圏に引き込み、そのお客に深くアプローチをするかの時代なのだ。

大学生とネットショップが判断!Payで浸透するのは?

大学生とネットショップが判断!Payで浸透するのは?

 このように僕から提示させていただいた上で、東海大学の生徒はいくつかのグループに分かれて、どのPayが日本で浸透するのかという議論をネットショップと共に話し合った。田畑さんの熱意溢れるリードに、ネットショップの圧巻な大学生の意見が飛び出す。細かいことは抜きにしてその視点はユニークでかつ鋭さのあるものになったので各チームの簡単な意見をまとめてみた。※ちなみにチーム名が個性的だが特に意味はない。

「チーム桜新町」Pay Pay
 まずユーザー基盤を調べ、それによればソフトバンクが4000万人以上、LINEが7000万人以上、楽天が8000万人以上であり、Pay Pay、LINE Pay、楽天ペイの3択に絞られ、各陣営の経常利益などを鑑みると、Pay Payが最も投資ができるのではないか。かつ、ソフトバンクは海外のアリババとも近く、アリペイなどとの連携も考えられ、インバウンド需要などを考えるとPay Payだと判断した。

「チーム若さを忘れない」LINE Pay
まず、ユーザー数の多さが挙げられ、かつコミュニケーションツールとして浸透している点に注目した。コミュニケーションの中で、割り勘システムなどを活用して、お金のやり取りは普通に行われるものであり、個人間送金などが積極的に行われそうだという理由からLINE Payだと判断した。

「チームいろはす」直近ではAmazon Pay
直近と未来で分けて考えた。5年以内はAmazon Payではないか。日本で最も活用されているEC決済の仕組みでリアルな店舗で導入されていけば、一番手頃にできるのではないか。予想の範囲ではあるが、例えば、商品を受け取らずに済ませるためにAmazon Payで決済をして、手ぶらで帰れるようにするなど街中の消費行動を促しやすくする要因として、浸透するのではないか。ただ、真の経済圏は人と人とコミュニケーションにあって、個人間送金が浸透すれば、コミュニケーションツールとして、未来を見れば、LINEが有利なのではないかと判断した。

「チームアーモンド」決済は一つにまとまらない
今の議題は携帯キャリアが「一番強くなるのか」というのと同等の問いだと思われた。キャリアが持っている経済圏がユーザー数だとすればある程度経済圏が出来上がっている中で、策を打つので、同じ策を打ってくるはずで、一つの経済圏が伸びても他が追随するなど、決まらないのではないか。

「チーム第二いろはす」Pay Pay 
Pay Payは広告費を多く使って積極的にPRしたことで我々の間でも認知が高いので、実際に使っている人も多く、その点がやはり重要だと考えた。ソフトバンクがバックにいて、かつ手数料がかからないなどの加盟店側が安心できる材料があるから浸透していくのではないか。

「チーム3年E組」WeChat Pay 
中国ではWe Chat PayとAlipayが席巻していて、日本でも中国から観光客が来ていることからすれば、日本で浸透する可能性はあるのではないか。Alipayと比べて、We Chatがコミュニケーションツールとしての役割を担っていて、全世界の人が使うようになれば、日本にも浸透するのではないかと考えている。(実は、LINEもコミュニケーションツールでは?との声に「きっとWeChatが買収します」ときっぱり答えて、会場内ドッと湧いた。LINEの方、どうかお許しを。あくまで意見ですから・・)

どこが覇権を握るのかは結論出ず!でもそれが現実。

 実際にやってみて驚いたことだが、それぞれのチームから出されたのはそれぞれまったく異なるPayだったという事実。それだけスマホ決済は浸透しつつも、消費者の感覚からいけば、どこに信頼しているという段階にまで至っていないことなのだ。どこが覇権を握ってもおかしくない情勢であることは間違いない。認知と加えて理解も大事なのではないかと思った。

 また、一方、EC業界においてもまだ自分達にはそこまで関係していないのではという声もなくはないが、先ほど話した通り、各社はこの決済にも必ずやECを絡めて、その存在感を増してくるだろう。他人事ではないのだ。ECも含め、世の中の動きに感度を高く持って、時代は大きく、変わっていくことを実感したい。さあ、あなたは変化するこの時代に何を思い、どんな行動をするだろうか。


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

石郷“145”マナブ の執筆記事