【新型コロナ下での最新消費動向】多くの業種が売上減もEC決済は増加 三井住友カードが調査を実施

ECのミカタ編集部

三井住友カード株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:大西 幸彦、以下:三井住友カード)は、保有するキャッシュレスデータを、データ分析支援サービス「Custella(カステラ)」を用いて集計し、新型コロナウイルスの感染拡大がもたらす消費行動の変化を、株式会社顧客時間(本社:大阪府大阪市、共同CEO 代表取締役:岩井琢磨・共同CEO 取締役:奥谷孝司、以下:顧客時間)と共同で分析した。ここではその概要についてポイントを絞って見て行く。

調査概要

今回、同社は2020年1月〜4月15日までのデータから、キャッシュレス決済状況の全体、業種別、世代別推移に着目し、分析を行っている。多くの業種でコロナ感染拡大に伴い決済件数・金額が減少していく中、取引が増加している業種からは日常生活の変容による「巣ごもり消費」の顕在化と、社会情勢の変化に伴う買物の質の移り変わり、さらには高年齢層のEC利用への「デジタルシフト」の兆候など、消費行動の変化を垣間見ることができるとしている。

多くの業種で売上減もEC決済は増加

多くの業種で売上減もEC決済は増加

三井住友カードの決済人数・件数を2019年と2020年の1〜3月で比較すると、2020年はキャッシュレス推進の影響もあり各月とも増加しているが内容に変化が生じているという。

具体的には新型コロナウイルスによる消費影響がほぼ無かった2020年1月は、利用人数114%・利用件数120%・利用金額111%と、前年を大きく上回った。この2020年1月の前年同月比を「ベース増加率」と仮定し、この影響を排除した。

その結果、日本国内にもコロナの影響が徐々に現れ始めた2月は利用人数・件数が前年比でまだ増加したが、コロナ自粛ムードが顕在化した3月は利用人数・件数・金額全てが減少に転じた。

業種別の動向でも、2月はまだ多くの業種が前年同月比で増加しているが、3月はほとんどの業種で減少。このような状況の中で、3月に件数も金額もプラスとなった業種は「ホームセンター」「スーパー」「ペット関連」「ECモール・通販」「通信サービス」「美容品」であり、在宅時間増に伴う消費の傾向を窺い知ることができるとしている。

さらに、コロナ関連ワードの検索数とキャッシュレス決済件数を日別で比較すると、不要不急の外出自粛やトイレットペーパーの不足等、目に見える生活への影響が増えてきた3月3週目以降のコロナ関連ワード検索数が増加していることが分かった。この期間は「買い溜め」や在宅勤務急増による「生活変化」関連であると思われる消費も増加している。一方で4月以降は検索件数の高止まりと反比例するような決済件数の減少傾向だった。

EC・通販などが伸長、「巣ごもり消費」が顕在化

EC・通販などが伸長、「巣ごもり消費」が顕在化

3月の業種別決済件数・金額の前年伸び率では、「ホームセンター」「スーパー」など、生活必需品を取り扱う業種が決済件数・金額ともに前年から大きく伸長した。また「ECモール・通販」「ペット関連」「通信サービス」の伸びは、小中高校等の休校や出社・外出自粛要請等に伴う在宅時間増加により、「巣ごもり消費」と称される消費行動の変化が裏付けられたようだ。

決済件数の増加に拘わらず決済総額が減少した5業種(「ディスカウントショップ」「家電量販店」「ドラッグストア」「家具・インテリア」「健康食品」)では、例えばテレワークのために家電量販店でPC周辺機器、家具・インテリア店舗でデスクやチェアを購入のように、日々変わる状況下、突発的に準備を要するものについて頻度を高くして来店・購入する(従って単価も低い)消費行動が想像できるものとなった。

一方で「レジャー施設」「旅行代理店」「美術館・博物館」「映画・劇場」「交通関連」などの落ち込みは、企業自らの営業自粛や、顧客の「三密」回避の行動変容を如実に現していると言えそうだ。

決済金額の前年比を世代別で見ると、1月は70代の伸び率が122%と高く、高年齢層も含めキャッシュレス行動の増加が進んだが、3月は全世代で減少傾向となった。新型コロナウイルスは高齢者の重症化リスクが高いとされるなか、「ECモール・通販」のシェア増加へとつながっているようだ。

日常的にECモール・通販を利用しているとされる20・30代よりも、高年齢層における増加幅が大きいことが分かったという。ECモール・通販の増加幅が「スーパー」を上回っていることからも、高年齢層が自らの身を守るために、外出を必要としないECモール・通販を活用している消費行動の変化が推測できそうだ。

“魅せる”アパレルから機能性を重視した選択へ

“魅せる”アパレルから機能性を重視した選択へ

決済金額伸長業種での、20・30代の「スポーツブランド」の伸長からは、テレワーク推奨によるアパレルに対する消費行動の変化を捉えることができるとしている。前述の結果から「紳士服」「衣服ブランド」の落ち込みは把握できるが、働き方の変化が、現実の場で人と会うことを重視したファッション性優先のアパレル選びではなく、「体に負担をかけない」「長時間座っていても楽」などの機能性重視でスポーツブランドを選ぶようなアパレルの選択基準にも影響を及ぼしている様子がうかがえる。

緊急事態宣言後は家中時間充実のための消費行動へ

緊急事態宣言後は家中時間充実のための消費行動へ

4月7日の緊急事態宣言以降、4/8週の週別業種別傾向)では、さらなる在宅勤務増に伴うテレワーク関連消費と呼べる「通信サービス」や「家電量販店」、「ECモール・通販」の伸長だけでなく、「玩具・娯楽品」の伸びが著しく、買物の質も変化していることが分かったようだ。

世代別の決済金額伸長業種ランキングでも、玩具・娯楽品が全体及び20〜40代での伸長率1位になっている。同業種にはゲーム機・ゲームのダウンロード購入・スマホゲームの課金等も含むため、これまでの必需品中心の消費行動から、外出自粛の長期化も視野に入れた、家中での余剰時間を充実して過ごす目的への消費行動変化の現れでもあると言えそうだ。

これを裏付けるように、ゲーム・EC関連のワードは、4月に入り検索数が伸びている。特にスイッチ(Nintendo Switch ※任天堂の登録商標)関連ワードは、本体やリングフィットアドベンチャーの在庫不足の背景もあり検索数が大きく増加した。

新型コロナ禍で一変する消費動向

同社はまた「調査結果要旨に対する考察と今後の検証テーマについて」として次のように述べている。

「新型コロナウイルスの影響により経済活動は大きく停滞を余儀なくされていますが、そのなかでも決済データを業種別や世代別で分析することにより、従来とは異なる顧客の消費行動の変化を知ることができます。特に、高年齢層の『安全志向』重視の行動だと考えられるECサイト活用のデジタルシフト傾向も見逃せない行動のひとつです。この傾向を一過性の変化としてではなく、世代を問わないデジタルシフトの加速だと理解すると、ECサイトには高年齢層にも使いやすい操作性や画面構成・表現の考慮が、これまで以上に必要とされるでしょう。

また、『巣ごもり消費』が外出自粛の長期化により必需品から娯楽品へ買物対象が移り変わっている状況なども含め、刻々と変わる社会情勢と決済データを時系列で追うことは、『コロナ感染期』『コロナ感染収束後』の消費行動を考える上で、大事な示唆の発見に繋がると言えます。 今後は、段階的な緊急事態宣言の発令による消費行動の地域差についての検証や顧客インタビューなどから、消費行動変化の考察をさらに深めていきたいと考えています」

調査結果にあるように、多くの業種でコロナ感染拡大に伴い決済件数・金額が減少している。取引が増加している業種からは日常生活の変容による「巣ごもり消費」の顕在化と、社会情勢の変化に伴う買物の質の移り変わり、さらには高年齢層のEC利用への「デジタルシフト」の兆候など、消費行動の変化が垣間見えるものとなった。新型コロナウイルスとの戦いが長期戦となる中、こうした傾向も継続されることとなりそうだ。

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