スーパーアプリとは。必要とされる理由や代表例、展開する際のメリットと注意点
スーパーアプリとは、1つのアプリ内にさまざまな機能が集約された総合アプリの名称だ。スマホの普及に伴い、アプリへの課題を感じ、スーパーアプリへの参入を検討している事業者もいるのではないだろうか。今回は、スーパーアプリの概要や必要とされる理由、展開するメリットなどを紹介する。検討時に考えておくべき注意点についても紹介するので、導入を視野に入れる際の参考にしてほしい。
目次
●スーパーアプリとは
●スーパーアプリが必要とされる理由
●代表的なスーパーアプリ4選
●スーパーアプリを展開する4つのメリット
●スーパーアプリを検討する際の3つの注意点
●まとめ
スーパーアプリとは
まずは、スーパーアプリの概要、ミニアプリや既存アプリとの違いについて確認していこう。
スーパーアプリは、複数のサービスをまとめて利用できるアプリのこと
スーパーアプリとは、日常生活で使用するあらゆる機能を統合して提供するアプリを指す。メッセージングやSNS、決済、送金、飛行機やホテルの予約、Eコマースなど、スマホで一般的に行われるサービスがすべて1つのアプリに詰まっているのをイメージするとよいだろう。
スーパーアプリは、一見関連性のない機能やサービスが集結している印象を持つが、ユーザー体験と呼ばれる消費者の使いやすさを重視している。スマホで何か行うたびに、複数のアプリを立ち上げる必要がなく、1つのアプリで完結するという利便性の高さが特徴だ。
ミニアプリとの違い
スーパーアプリと混同しやすいものに「ミニアプリ」がある。双方の違いは、「アプリのプラットフォームであるか」どうかということ。スーパーアプリは、さまざまなアプリの土台となるプラットフォームであるのに対し、ミニアプリはスーパーアプリというプラットフォームを基盤に動作する。
スーパーアプリは、一般的なアプリストアからインストールするが、ミニアプリは新たにインストールする必要はない。スーパーアプリに多種なミニアプリが登録されており、ミニアプリを通じてサービスが提供される仕組みだ。
既存アプリとの違い
ネイティブアプリとも呼ばれるアプリストアからインストールする「既存アプリ」とスーパーアプリの違いは、1つのアプリで何が行えるかという点だ。スーパーアプリは1つのアプリで、複数のサービスや機能を提供するのに対し、既存アプリは1つのアプリで単数の機能しか提供できない。そのため、スーパーアプリと同じ機能を賄おうとすると、必要な機能に合わせて多くの既存アプリをスマホにインストールする必要がある。
スーパーアプリが必要とされる理由
スーパーアプリが必要とされる理由を考える際、既存アプリの課題について確認しておこう。
スマホアプリの現状として、インストールしたアプリをすべて利用している消費者は少ない。なぜなら、アプリをインストールする度に、IDやパスワードの登録、場合によってはクレジットカードといった個人情報の登録が必要だからだ。また、インストールによるスマホ容量の圧迫や、アプリを起動することに手間がかかるといったことも課題として挙げられる。
既存アプリは、このようにユーザーの手間や負担が多いことから、自社サイトを作ったとしてもその他の多くのアプリに淘汰されてしまい、登録が見込めないケースも少なくない。
一方のスーパーアプリは、先述したように単独で多様な機能が使用できるため、既存アプリの課題を解決できると考えられている。スーパーアプリに会員登録してもらえば、消費者の負担を一気に軽減でき、顧客満足度や顧客体験の向上が期待できる。このように、スーパーアプリは、消費者の行動をより活発にし、生活を便利にするアプリとして必要とされているのだ。
代表的なスーパーアプリ4選
スーパーアプリへの理解を深めるためには、実際のアプリを確認するのがわかりやすいだろう。代表的なスーパーアプリを見てみよう。
WeChat(ウィーチャット)
WeChatは、中国のTencent社が運営するメッセンジャーとSNSの機能が融合したスーパーアプリだ。WeChat上から使用できるミニアプリはチャット以外にも、買い物、チケットの予約、決済など幅広い。新型コロナウイルス感染症が拡大した際は、WeChat上で感染状況をリアルタイムで確認できるサービスや健康状態を確認するサービスなど、新型コロナ感染対策にも活用された。
Alipay(アリペイ)
Alipayは、中国の阿里巴巴集団(アリババグループ)が提供するキャッシュレス決済サービスだ。中国消費者に最も使用されており、モバイル決済の54%をAlipayが占めている。キャッシュレス決済に留まらず、タクシー配車やバイクシェアリング、資産運用、振込などさまざまなミニアプリが統合している。
Grab(グラブ)
Grabは、マレーシアで誕生した東南アジア最大と呼ばれる配車サービスのスーパーアプリだ。車を手配してタクシーのように利用でき、行き先を伝えることや料金支払うことまで、アプリ内で完結できるため、効率的で安全性に優れているのが特徴だ。配車サービス以外にも、決済、ローン、自動車保険等、多種多様なサービスを提供する。
LINE(ライン)
LINEは、LINE株式会社が運営するスマホ向けのコミュニケーションアプリだ。2020年9月時点の国内利用者は、8600万人となり、老若男女問わず多くのユーザーに支持されている。正確にはスーパーアプリの位置付けではないが、LINEアプリをプラットフォームとして、決済やクーポン、音楽、ゲーム、店舗予約などさまざまなミニアプリが利用できるため、スーパーアプリに近いサービスを展開していると考えられている。
スーパーアプリを展開する4つのメリット
ここでは、企業側がスーパーアプリを展開することで得られる4つのメリットを確認しておこう。
1.顧客を獲得しやすい
一度の登録で複数のミニアプリの利用が可能なスーパーアプリは、アプリ利用へのハードルが低く顧客を獲得しやすいといった特徴がある。
2.アプリが削除されにくい
スーパーアプリは、多様なミニアプリを1つのプラットフォームで管理できるという仕組みから、利用頻度が下がったとしても削除されにくいという傾向にある。削除されずに端末上に残ることで、企業側にとっては機会損失の減少にもつながる。
3.多様なサービスを展開できる
先述したように、スーパーアプリは、多様なサービスを集結させることができるため、さまざまなサービスを展開できるというメリットもある。スーパーアプリ内で新しくリリースしたサービスにも、既存ユーザーを呼び込みやすく、集客やシェアといった効果も期待できるだろう。
4.開発コストが抑えられる
スーパーアプリの展開は、プラットフォーム上のミニアプリの開発コストを抑えられることも特徴のひとつだ。一般的な既存アプリの場合、iOSとAndroidで別々にアプリを開発する必要がある。しかし、スーパーアプリで動作するミニアプリの場合は、両方のOSに対応可能なため、開発コストや手間を抑えられるのだ。
スーパーアプリを検討する際の3つの注意点
企業にとってメリットの大きいスーパーアプリだが、注意すべき点についても忘れてはならない。スーパーアプリを検討する際に考えておくべき3つの注意点を紹介する。
参入が難しい
スーパーアプリは、自社で提供できるサービスが多様にあることが前提となるため、多方面においてビジネス展開されていない状況だと参入が難しいだろう。スーパーアプリに参入する場合の確認ポイントは以下の3つだ。
・多くのユーザーに利用されるアプリを提供しているか
・アプリの高い利用状況があるか
・自社で多様なサービスを展開している、または連携可能なパートナーを募ることが可能か
これらの要素を満たしていると、スムーズに導入が進められると考えられるがあるため一度確認しよう。
機能が多く操作性が低下する
多種多様な機能やサービスが集結しているスーパーアプリは、機能が増えることで操作性が低下するという懸念もある。スーパーアプリのメリットを最大限に活かすために、機能性と操作性を両立させ、消費者の使いやすさを重視するUXデザインを設計していくことが重要になっていくだろう。
情報漏れのリスクが高い
同一のアカウントで、多くのミニアプリを操作できることは便利な一方で、情報が漏えいした場合にリスクが高い。アカウントが乗っ取られた際は、ミニアプリの内容に応じては、クレジットカード等の全ての個人情報が漏れてしまう可能性が出てくる。セキュリティ強化の対応は不可欠になっていくだろう。
まとめ
複数のサービスをまとめて利用できるアプリのプラットフォームとして注目される、スーパーアプリ。海外でいち早く展開されるスーパーアプリだが、日本国内においてもスーパーアプリ化の動きが進みつつある。昨今は、消費者の利便性や使いやすさを重視するユーザー体験が不可欠になっている。今回の記事を参考にスーパーアプリへの展開も視野に入れてみてはいかがでだろうか。