食品値上げ調査、2023年は記録的値上げラッシュに 2024年はどうなる?

ECのミカタ編集部

今年の食品値上げ、3万2396品目 過去30年で記録的「ラッシュ」 2024年の値上げは約4000品目、今年の6割減ペース

株式会社帝国データバンク(以下:帝国データバンク)は、2023年における食品の値上げ動向と、24年の展望・見通しについて分析を行った。本記事では食品を取り扱うEC事業者への影響を含め、一部内容を抜粋して紹介する。

2023年は記録的な値上げラッシュの1年に

主要食品メーカー195社における、家庭用を中心とした飲食料品の値上げは2023年の累計で3万2396品目となった。

当初想定された年3万5000品目を下回ったものの、22年累計の2万5768品目を25.7%上回る結果に。2年連続で全食品分野において一斉に値上げが行われた例は近年例がないほか、年間3万品目を超える水準はバブル崩壊以後の過去30年間でも例を見ない規模となり、総じて「記録的な値上げラッシュの1年」となった。

一連の食品値上げに対し、買い控えをはじめ「値上げ疲れ」が食品の売り上げにも影響を及ぼし始めた。

帝国データバンクの試算では、2人以上世帯で月3685円分の食費が「節約」によって抑制されたことが明らかになっており、食品スーパーでも低価格商品やプライベートブランド(PB)への人気が集中。一部の食品では値上げ後に販売数量が減少することから、追加での値上げ判断を見送ったケースが多くみられ、23年後半以降の値上げの勢いは大幅に減速した。

2024年の値上げは落ち着く方向に?

2024年の食品値上げは、23年に比べて小康状態が続くとみられている。

24年1月から5月までに値上げが決定している飲食料品は、オリーブオイルやゴマ製品、ケチャップや冷凍食品、輸入ウイスキーなど累計で3891品目が判明しており、24年春まで小~中規模な値上げラッシュが断続的に発生する見通しとなる。

24年の値上げで最も多い食品分野は「加工食品」となり、全体の約半数を占める。冷凍食品類のほか、ベビーフード、パスタソースなど多岐にわたるものの、23年からは大幅に減少。次いで、トマトケチャップやだし・つゆ製品が中心となる「調味料」や、嗜好性の強い「酒類・飲料」が続く。

24年の値上げの傾向として、内容量減による価格維持=「実質値上げ」ではなく、本体価格の引き上げが23年に続き多くみられる点が特徴となる。

人件費の高騰や電気代、円安による値上げが懸念

24年4月以降も緩やかな収束傾向が続くとみられるが、23年中に進行した円安の影響に加え、人件費、物流費、電気・ガス代などの動向次第で変化する可能性は高い。

24年における値上げ要因をみると「円安」の占める割合は39%を占め、23年通年の水準から倍増したほか「人件費」も23年を大きく上回って推移している。

サービス価格では人件費増を反映した上昇傾向が顕著にみられており、今後は食品分野でも賃上げ原資の確保に向けた値上げが進むことも想定されるだろう。

一方「電気代」は激変緩和措置が5月に縮小する見通しとなるなど、エネルギーコストの増加が再び値上げラッシュに繋がる可能性も懸念される。原油や食材などの輸入物価を押し上げる円安の再加速や、エネルギーコストの高騰による「コストプッシュ型」の値上げが再び先行するか、賃金上昇を伴う値上げへと転換するか、値上げ内容の変化が今後の注目点となる。

「食品・飲料・酒類」分野のEC市場規模は、2022年に約2兆7500億円となり前年比で9.15%増加した(※1)。食品値上げが今後も続く場合、多くの消費者がよりお得な商品を求めECへの購買へ流れることも考えられる。値上げ動向が食品EC市場へ与える影響は少なくないはずだ。今後の動向に注視しながら、施策検討を進める必要があるだろう。

※1 参考元:令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書(p.53)

調査概要

◆対象期間:12月29日9時時点
◆調査機関:株式会社帝国データバンク
◆次回発表日は2024年1月31日午前9時

品目数および値上げは、各社発表に基づく。また、年内に複数回値上げを行った品目はそれぞれ別品目としてカウントし、値上げ率は発表時点における最大値を採用。なお、価格据え置き・内容量減による「実質値上げ」も対象に含む。


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