ヤマトHDが新会社設立 共同輸配送で荷主の運賃負担は変わる? メリットは?

宮地彩花【MIKATA編集部】

ヤマトホールディングス株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:長尾裕)は2024年5月21日に新会社「Sustainable Shared Transport株式会社」を設立したことを発表し、記者会見を行った。新会社では持続可能なサプライチェーン構築に向け、共同輸配送のオープンプラットフォームを提供。事業開始は、2024年度中を予定しているという。

BtoB輸送の効率化・標準化が課題

ヤマトホールディングス株式会社が新会社「Sustainable Shared Transport株式会社」(以下、SST)を2024年5月21日に設立した。

目的は、持続可能なサプライチェーンの構築。標準パレットを中心とした輸配送サービスの提供と共同輸配送サービスのオープンプラットフォーム管理・運用などを事業として行う。背景には、物流の2024年問題に伴うBtoB輸送の課題があるという。

新会社、SSTの代表取締役社長に就任した髙野茂幸氏(ヤマト運輸株式会社 グリーン物流事業推進部長を兼務)「物流の2024年問題で2030年には35.9%の需要ギャップがあると言われており、輸送力低下の深刻化は事実。一方でBtoB輸送の積載率は約40%と低積載の貸切輸送が常態化しており、標準化・効率化にはほど遠い状態」現状を説明。そこでSSTではこの領域に対し、宅配便のノウハウを生かしながら持続可能なサプライチェーンを実現していく考えだという。

左:Sustainable Shared Transport株式会社 代表取締役社長 兼 ヤマト運輸株式会社 グリーン物流事業推進部長 髙野茂幸氏
右:ヤマト運輸株式会社執行役員(グリーンイノベーション開発、サステナビリティ推進 統括) 福田靖氏

持続可能なサプライチェーンを実現する手段としては、共同輸配送があるが、「業種ごとに商慣行などが異なり、異業種間の取り組みが難しい」「パレット規格が異なるなど最適な荷積みが属人化してしまう」など課題も多い。

BtoB輸送の効率化・標準化をデジタル・リアル、双方で支援

SSTの高野氏は、この物流の2024年問題に対する輸送力の低下と商慣行の違いに伴う共同配送の課題について、デジタル・リアルと双方から支援していくと説明。

「富士通株式会社と共同で構築を進めている『物流・商用データ基盤』上で荷主企業の出荷計画や荷物量の情報と物流事業者の運行計画の情報を統一化させる。これにより、需要と供給に合わせた積載量のマッチングを支援。マッチング後に、中継地点を介した短中距離リレー輸送や標準化されたパレットを活用した複数社による混載輸送、定時運行を行うことでドライバーの負担を軽減しながら稼働率や積載量の向上が可能となる」(高野氏)

画像元:ヤマトホールディングス株式会社

メリットは? 共同輸送で配送料金が安くなるとはいえないが……

事業者として気になるのは、今回の新会社設立に伴う共同輸配送の具体的なコストだろう。高野氏はケースバイケースだということを前提にした上で「トラック1台で16パレット積載できるとして、現状そのうちの8パレットや10パレット分の積載量しかない場合は、他社との乗り合わせが可能になるため安くつくと考えられる。ただし、1社で16パレット分丸々使用している場合は、短中距離リレー輸送を行う関係でコストとしては高くつくと考えられる」とした。つまり、単純なコストメリットで考えるのは現段階では難しいと言える。

とはいえ“物流問題”への取り組みは、コスト面だけで判断していいものではない。より持続可能な物流システムの効率が求められている今、「BtoB輸送の平均積載率40%を改善できれば今後多くの人にとってメリットが享受できるのではと考えている」(髙野氏)

短中距離リレー配送に伴う車両ごとの燃料費等も加味すると配送のコストカットなどメリットを享受できるのはまだ先になりそうだ。また混積輸送に耐えうる常温の荷物が前提となるため、対象の荷主は限られるが今後の対象範囲拡大やコスト削減につながる施策を期待したい。