マーケ最前線!ママが見る日本とは?越境ECの可能性
2016年、より越境ECに対しての関心が高まっているなか、今年も中国の旧正月である春節を迎えた。年々、訪日中国人の人数が増えるにつれ、その「爆買い」ぶりにも注目が集まってきたが、当人達は日本に対して何を求め買い物をするのだろうか。
日本と中国、育児に関する意識の違い
株式会社リクルートライフスタイルに設置された出産・育児に関する調査・研究機関「赤すぐ総研」は、妊娠・出産・育児に関する調査・研究、提言を通じて、出産・子育てをしやすい社会の発展に貢献することを目的として活動している。そしてこの度、妊娠中および0~2歳の子供を持つ中国人の既婚女性を対象に、①育児に関する意識調査②育児用品の購入に関する調査を実施した。この調査から、店舗側は中国人消費者に対してどのようなサービスや商品を提供し、どのようなビジネスを展開していくべきかが見えてくるのではないかと思う。あえて、妊娠中および0~2歳の子供を持つ中国人の既婚女性を対象としたデータを参考にし、記事として取り上げるのは、今回のデータが越境ECの可能性を示しているということはもちろんだが、自ら買い物に行くことが困難でECを本当に必要としている消費者にターゲットを絞った調査結果が示されているからだ。
まずは、①育児に関する意識調査について読み解いていきたい。中国人の母親は、「高い業績を上げて社会的地位や金銭的成功を獲得したい」「女性も子どもが生まれてもずっと仕事を持ち続けるのがよい」など、仕事に対する意欲が日本の母親よりも強い。それを表すかのように、中国人の母親は結婚前も妊娠時も出産後も半数以上が会社員として働いている。これは、産後は半数以上が専業主婦となる日本人の母親とは大きく差が出てくる。(下図参照)
そんな中国人の母親は、家庭と仕事を積極的に両立し、日本人の母親よりも忙しいイメージがあるが、なんとSNSを使用している人の割合は96%と日本人女性の割合を大きく上回った。そう考えると、中国人の母親達は日頃からより多くSNSで情報を得る機会に接しており、店舗側からすれば商品情報を知ってもらいネットショップを利用してもらえるチャンスが日本人女性より多いのではないかと思う。
中国ママが越境ECを使用する理由とは
次に、②育児用品の購入に関する調査について、越境ECを利用して育児用品を購入した中国人の母親の割合は、「良く利用する」23%、「たまに利用する」64%、「ほとんど利用しない」10%、をあわせて、97%の人が利用経験があると回答した。(上図参照)
そして、越境ECを利用したことのある中国人の母親にその理由について尋ねたところ、「品質が高い商品が多い」が68%、「安心・安全な商品が多い」が64%で高く、この2項目が突出している。(上図参照)
幼い子供を持つ中国人の母親から日本のEC業界が一番求められているのは、品質が高く安心・安全な商品という結果がわかった。子供を持つ親として、使用するものの安全面を考えるのは当たり前のことではあるが、その点に関して日本の商品は大きな信頼を得られているのだろう。逆に、国内で品質が高く安心・安全な商品が手に入る環境におかれている日本人女性は、わざわざ越境ECを利用する理由がそれほどないのだろうか。
ターゲットを絞って越境ECについて改めて考えると、新たに見えてくるものが多くあった。これから越境ECを展開しようと考えているネットショップにとっては、自分達の商品やビジネスが、どの国で、どの年齢層に向けてウケるのか、しっかりとリサーチした上で勝負にでることが必要であるかと思う。今回は中国人の母親をターゲットに越境ECの可能性について考えたが、中国でウケたものが果たして他の国で通用するかどうか。国別のマーケティングによって得られる情報が越境ECにとって課題になるかもしれないが、私はその情報は越境ECにとって大きな可能性ではないかと思うのだ。