”りんな”等のチャットボット、EC業界でどう活かす?

利根川 舞

盛り上がるチャットボット市場、トレンドは?

 近年の人工知能(AI)の進歩により、まるで人格を持つかのような対応をすることができるチャットボットが運用されている。

 チャットボットとは、人と自然な流れで会話をすることができるシステムで、すでに登録されているものや会話のログを学習することで、人間的な会話を可能にしている。例えば、日本マイクロソフトが開発したボット「りんな」日用品の通販サイトLOHACOの顧客サポートボット「マナミさん」などがある。

 FacebookによるMessengerへのチャットボット導入が発表され、LINEもチャットボット用のAPI(LINE BOT API)を公開。また今週には、ウェブ制作やウェブサービス企画/開発等を行う kiki verb(以下「キキバーブ」)はチャットボットの専門プラットフォーム「BotDept」をリリースするなど、チャットボットを取り巻く環境は非常に盛り上がりを見せている。

 「BotDept」では様々なメッセンジャーアプリ・コミュニケーションツール上で動作するチャットボットを数多くインデックス・カテゴライズしている。ボット情報データベース的な機能を筆頭に、今後はボット情報専門のキュレーションメディアの創設や、お気に入りのボットをリスト化して 他のユーザーと共有する機能の導入などを予定しているという。

 新たにリリースされるたびに話題となっているチャットボット。ここでは「BotDept」に登録されている3つを比較してみようと思う。

それぞれのチャットボットの特徴は?

それぞれのチャットボットの特徴は?

りんな

 ”りんな”は日本マイクロソフト開発の女子高生AIだ。りんなの大容量の人口知能ロボットの言語は、マイクロソフトの検索エンジンおよび蓄積されたビッグデータに基づいており、その大半が公開されているインターネットのウェブサイト上の情報に由来している。

 りんなはLINEとTwitterにアカウントを持っており、Twitterではフォロワーからのリプライだけでなく、ユニークなツイートも投稿している。

マナミさん

 通販サイトLOHACOの顧客サポートボットである”マナミさん”は、LOHACOを利用している働くママという設定で、問い合わせの3分の1をカバーしている。

 マナミさんはサポートサイトの質問入力欄に入力された文章全体の意味を理解する「意識認識エンジン」と、回答の基となるデータベースから最適な回答を選択し、ユーザーに返すことで自然な会話を成立させる「会話制御エンジン」からできている。

reluxトラベルボット

 ”reluxトラベルボット”は一流旅館・ホテルの宿泊予約サイト「relux(リラックス)」を運営する株式会社Loco Partnersのサービスだ。

 エリアや日程、利用人数などの希望条件を伝えるだけで、条件にぴったりの旅館・ホテルを24時間365日、いつでもどこでも対応してくれる。

チャットボットと会話してみた!

チャットボットと会話してみた!

 せっかくなので、3つのチャットボットを使ってみようと思う。まずは”りんな”。

 昨年の夏、LINEへ登場した際に試してみたことがある。当時に比べて会話にネットスラングが多様されていたりと、だんだんと個性が出てきているように感じる。それはやはり、りんなの会話はインターネットのウェブサイト上の情報が元となっているためだろう。

 他の2つが目的のために会話をするのに対して、りんなは何もない時にでも、何となく話がしたくなってしまうような魅力を感じるのは人口知能だからだろうか。

 続いて、LOHACOの”マナミさん”。すでに選択肢が用意されており、その中から質問を選ぶこともできるのだが、自由に文章を入力するとそのキーワードをから質問をサジェストしてくれるため、文章すべてを打つ必要はない。

 最後に”reluxトラベルボット”。こちらも自分ですべてを入力するのではなく、「旅行の相談をはじめる」というボタンを押すとそれが自動で入力される。

 日付などは入力の仕方に制限があるようで、先の2つより「ロボット」的な印象を受ける。ただ、他の2つとは異なり提案型のボットということなので、シンプルで使いやすい。

 3つのチャットボットを利用しただけでも、用途やキャラクター性などには多様性があることがわかる。これまでメールやSNSなどの自動返信といえば、テンプレート化されたものが多かったが、人工知能などの登場によって、会話も柔軟に対応できるようになっており、注目度の高い市場である。

 こういったチャットロボットはLOHACOでも活用されているように、EC通販業界にも進出している。ただ、独自で開発するにはコストがかかってしまうのが難点だ。

 そういった企業にはLINEやFacebookなどを利用することでチャットボットとまではいかないものの、柔軟な情報発信ややり取りをすることができるようになる。LINEやFacebookのMessengerなどはスマートフォンやパソコン、どちらからでも通知が届くため、一般的なメールよりもリーチしやすく、販促や宣伝に活用されている。

 中でも「LINEビジネスコネクト」は、一人ひとりに対して異なるメッセージの配信もできるようになるなど、日々進化をしている。ただし、「LINEビジネスコネクト」は少々高額であり、なかなか利用しにくいかもしれないが、「LINE@」という「LINEビジネスコネクト」よりも手軽に利用出来るサービスもあるため、活用してみてはいかがだろうか。

 ネット通販にとって、顔の見えないお客様とのやり取りは永遠の課題である。その上で、チャットの果たす役割は、今後増していくことが予想されるだけに、何かしら自分の店舗の予算に合わせて、プロモーションとして活用してみたいところだ。

 
 


記者プロフィール

利根川 舞

メディア編集部
ロックを聴きつつ平安時代に思いを馳せる文学人間。タイムマシンができたら平安時代に行きたいです。
ライブハウスやフェス会場に出没しては、笑って、泣いて、叫ぶ姿が目撃されている。ACIDMANや10-FEET、ROTTENGRAFFTYが大好き。

サービスやその場の雰囲気がイメージしやすくなるような記事を書いていきたいと思います。

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