JD Worldwide 副マネージャー語る、中国越境EC成功の秘訣

福島 れい

 収益規模で中国最大のEコマース企業JD.com、ここに国際的なブランドや小売業者が参入するサポートする役割を担っているのがJD Worldwideだ。今回、JD Worldwideの副マネージャー ルイス・リーさんへの取材の機会を得た。中国のEC市場はどうなっているのか?また、日本企業が中国EC市場で成功するコツとは?JD Worldwide運営者の視点を伺った。

月間アクティブユーザー2億人のJD.com

 そもそもJD.comは、家電や高級品、生鮮食品など様々な商品を提供するEコマース企業だ。2015年には1,813億円(約280億米ドル)の収益を記録し、収益規模では中国最大、世界第3位のインターネット企業へと成長している。月間アクティブユーザーは中国において2億人。日本の人口をはるかに上回るこの市場が、世界中の小売業者やブランドにとって魅力的であることは言うまでもないだろう。

 まず、すでにJD.comで成功を収めている日本企業として名前が挙がったのは、花王やコーセーだ。ベビー用品や化粧品を中心に人気がある。安全性で機能性に優れているのが人気の理由だ。この2社に限らず、日本のベビー用品や化粧品は中国人消費者に大変人気だとリーさんは説明する。これまで越境ECをサポートしてきて、特にポジティブな印象があるのは日本企業とアメリカ企業。日本企業の商品としては、ベビー用品、化粧品の他にサプリメントや食品、家電などで堅調な成長を記録している。

成功の鍵は、日本商品ならではの魅力

 では、先に挙がった人気商品以外のジャンルで中国市場に参入するのはどうなのだろう?リーさんによれば、これからファッションやアクセサリーなど様々なジャンルへとニーズが広がっていくという。そもそも、安全なものを使いたいというニーズは、大人が使うものよりも子供が使うもののほうが強い。 これがベビー用品がはじめに成功を収めた理由だ。その後、直接肌につける化粧品や身体に取り込む食品へとニーズが広がっていることを考えると安全な商品を求めるニーズが、他のジャンルにも広がっていくことは想像にたやすい。とはいえ、安全な商品であれば売れるというわけではない。日本企業の成功は、日本商品ならではの魅力をいかにアピールできるかにかかっているとリーさんは語る。

 また、越境ECを始める際に課題になっていることを問うと、「競争がし烈であること」と「物流面の課題」が挙がった。越境ECが盛んになり、参入ハードルが下がっているが、それはすべての企業にとって同じ。市場にはプレイヤーが溢れ、いかに目立つかが重要になっているというのだ。JD.comではバナー広告や、WeChatを提供するテンセント社との提携によるソーシャルマーケティングなど様々な方法でサポートされている。一方の物流については、やはり現地に倉庫が必要になることや、モノの流れが見えにくいことが障害になりがちだ。こちらについてはヤマトグループと協力することでサポートがなされている。

中国進出 最も重要なこととは・・・?

 中国EC市場は拡大しており、日本商品の評価も高いという非常に魅力的な市場だ。越境ECを始めやすいよう環境の整備も進められていることがわかる。では、これから越境ECを始めようとする日本企業にとって最も大切なことは?と問うと、「勇気持って挑むこと」と「準備万端で挑むこと」の2つを挙げた。

 これから進出する企業にとって、中国はまだまだ新しいマーケットだ。当然、中国消費者の好みや行動は日本の消費者とは異なる。この新市場に乗り込み、成果を上げるには新たなことに挑戦する勇気が必要になるというのだ。また、消費者が変われば商品に期待することも変わる。日本で売れているからといって安易に越境ECを始めてもそう簡単に成功するものではないのだ。勇気を持って行う一歩が無駄足にならないためにも、事前にしっかりマーケティングを行い、中国向けに手を加えてこそ越境ECは成功するのだ。


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記者プロフィール

福島 れい

ECのミカタ編集部に所属するバドミントンと和服、旅好きの記者、通称れーちゃん。ミニ特集「アパレルECの未来(https://goo.gl/uFvr2C)」等、これからEC業界がどんな風に発展していくのか。に注目しながら執筆しています。2017年の執筆テーマは、”私にしか書けない記事をタイムリーに”。

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