玉石混淆の時代、 ユーザーとの関係を どう構築していくか

ECのミカタ編集部

EC業界創世の頃から価格比較サービスを開始し、常に生活者にとって有益な情報を発信してきた株式会社カカクコム。ユーザーの立場に立った様々なコンテンツを提供し続けているカカクコムの、ショッピング本部コマースマーケティング部長松井氏に、EC業界の今とこれからをうかがった。

——カカクコムはEC業界をどう捉え、どう動いていくと思われていますか。

2013年は、「eコマース革命」ということでYahoo!ショッピングのストア出店料・売上ロイヤルティが無料化しました。また、最近は個人間取引の「CtoC」も非常に盛り上がりを見せています。今後は「『誰』から『何』を買うのか」ということを生活者が選ぶ時に、非常に玉石混淆の「宝探し」のような状況になるのではないかと思っています。

——O2Oへも積極的に取組まれていますね。

以前価格.com(読み:カカクドットコム)で行ったユーザーアンケートでは、価格.comで情報を摂取した後、実際に家電を購入したユーザーのうち4割がECで購入、6割がリアル店舗で購入しているという結果でした。価格.comの情報は、お客様が主に耐久消費財を購入する時の、ひとつの物差しとしての役割を果たしていると感じております。その一方で、ユーザーがリアルにアクションをしたいのであれば、その情報をよりリッチ化していきたい。そんな思いでO2Oに取り組んでいます。リアル店舗の位置情報などは、価格.comの主力商品であるパソコン・家電・カメラ・カー用品といったジャンルについては、概ね対応しております。

——カカクコムの新しい取り組みについて教えてください。

カカクコムでは2014年3月から、全く新しいサービス「ミセトク」をスタートさせました。価格.comではまず商品のデータベースがあり、それにオンラインの価格情報やユーザーの口コミ情報を紐づけた仕組みです。「耐久消費財」「EC」というイメージが非常に強くある価格.comとミセトクは発想が全く逆。ミセトクは商品ありきではなく「売り主ありき」の新しいサービスです。EC事業者・リアル店舗を問わず、ありとあらゆるセールやイベント情報、新作入荷の情報などを集約して見られるコンテンツになります。ターゲットも、男性割合が高い価格.comに対し、ミセトクは女性に電車の中吊り広告でショッピングモールのセール情報をチェックするような感覚で利用していただきたいと思っています。

——消費者の目線に立ったメディア作りですね。

ファッションアイテムなどはシーズナリーがある程度集中すると思いますが「いつどこで何をやっているの?」ということが、今は整理されていません。それをザッピングしながら情報を摂取していく行為自体も、ユーザーは楽しんでおられるかもしれません。でもできればシンプルに、手元で情報がすぐ分かるようにしたい。予定が立てやすくなり、気になっていたアイテムをECショップで検索したり、買い物に出かけたりするきっかけになれば良いと思っています。そのためにも、情報の最新性・更新性はしっかり担保していき、オンライン・オフラインの店舗の情報を網羅的に見られるようにしていきたいと考えています。

——今後、オンラインとオフラインは共存していくのでしょうか。

全てのユーザーが一番安いショップで商品を買うのかというと、実はそうではないんですよね。安心感なのか、納期なのか、実際に触ってみたいとか、色んな判断軸がありますので。最終的には「どこでアクションすることが、その生活者にとって良いのか」ということになると思います。例えば、値段は安いが納期が遅いECショップと、ちょっと高くてもすぐに購入できるリアル店舗があったと仮定して、どちらを選ぶのかは、その人や状況によって違います。その選択の幅を僕らができるだけ広げて、最良の選択をしてもらうことが大事だと思っています。

——これからの時代、生き残っていくECショップはどんな店舗だと思いますか。

唯一性や独自性があり、比較検討できないような商材を扱っている店舗は、オンラインであれリアル店舗であれ、その独自性がある限りは支持されると思います。一方、どこでも売っている一般流通製品を扱っているというと、どうしても価格勝負になってしまう。しかし「一番安いお店よりもここで買う」というのは、安心感やブランド力といった選ばれる理由があるから。ポイントが付く、延長保証が付くという付加サービスや、「ここで買えば安心」というブランド力など、サービス面をきっちり訴求していき、ユーザーとの接点・関係性を構築していくことが非常に重要です。ユーザーにとって有益な情報を発信していく場としても、ミセトクをご活用いただけると思います。

——EC業界における、カカクコムの今後の展望を教えてください。

この4月から消費税が増税され、プライスコンシャスにならざるを得ない状況があり、商品選びに、価格.comをご利用いただくお客様も増えるでしょう。また、今後は、スマートフォン利用者の増加に伴うデバイスの変化にもしっかりと対応していくなど、カカクコムグループでは、様々な情勢に応じて利便性の高いサービスを生活者、事業者双方に提供していきたいと考えております。


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