「カード情報非保持化」で何をすればいいかわからない人向けのお話
今年の6月、割賦販売法が改正され、多くの企業がカード情報の非保持化に対応するために、PCI-DSSの準拠など様々な対応に追われた。
しかし明確な罰則が現状無い為、まだ対応しきれていない事業者がいるのも事実だ。しかし、今後対応しない状態を続けると、カード契約を打ち切られる可能性が経産省の資料にも明記されているのだ。そこで今回は、EC専門の基幹システム開発を行う株式会社フォービス 田口勇真氏をファシリテーターに迎え、GMOペイメントゲートウェイ株式会社の財津拓郎氏と、GMOペイメントサービス株式会社の山本拓也氏に、今事業者が行うべきこと、それに対する解決方法を話していただいた。
カード情報非保持化に対応できるソリューションとは
田口 そもそも、カード情報非保持化そのものを理解していない事業者様も多いと思います。具体的に事業者様は何をすればいいのでしょうか。
財津 2018年に出された実行計画には大きく分けて3つ対応しなければならない項目があります。
1つ目が、カード情報の非保持化、2つ目が実店舗の場合はカード・決済端末の100%IC化、3つ目が不正使用対策を行うことです。
EC事業者様に関係することで言えば、1と3になりますが、1に関してお話ししますと、カード情報の非保持化で1番良いのはPCI-DSSに準拠することです。しかしコストや対応しなければならない項目の多さから一部の大規模店舗でしか対応できていないのが現状です。
田口 とは言え対応しなければならない期限は2018年3月まで、ということで期限を過ぎています。PCI-DSSに対応するのが難しい事業者様はどうすれば良いのでしょうか。
財津 リダイレクト型(リンク型)という決済の接続方式を利用するか、Java Script型(トークン型)に対応すれば非保持化は可能になります。しかし課題も残っています。
それがコールセンターでも受注対応を行なっているケースです。以前はオペレーターが電話越しで顧客のカード情報をヒアリングし、自社システムに反映させていたのですが、この状態はカード情報保持となります。
そこで弊社がまず対応したのが決済専用タブレット端末で、今は、様々なソリューションの登場にあわせ、IVR(Interactive Voice Response)や実行計画に記載のある決済専用端末を利用した外回り方式、テンキーを利用した内回り方式など取り揃えています。
田口 印象としてはタブレット端末やIVRが今年の初旬頃から普及しており、決済専用端末(外回り方式)やテンキー(内回り方式)は後から参入してきたという印象がありますね。
様々なソリューションの中でオススメはあるのか?
財津 大手企業は、早めの対応を行なっていました。罰則はなくとも法令違反しているという状態は印象も悪いですし、早急に対応をしたという印象でした。
田口 3月までの対応をということだったので、余裕を持って2月に済ませる企業が多かったですね。
罰則が曖昧なため、まだやらなくていいと考えている事業者様も多いですが、そろそろ本格的にペナルティが課せられる時期になってきたのだと思います。
実際に導入しようと考える際のオススメなどはあるのでしょうか。
財津 事業者様により異なるため、私たちからこのソリューションがオススメという話はしません。顧客属性に応じてアドバイスをしています。
そこで私たちはタブレット端末、IVR、テンキーなどをラインナップとして提示した上でコンサルティングを行なっています。
田口 すでに対応済みの大手企業は当時選択肢がない中でやったと思いますが、今でこそ様々なソリューションや、実績が揃ってきたので財津さんに相談すれば、自社にあった対処方法を提示してくれるというわけですね。
実際に導入数で最も多いのはどのソリューションになるんですか?
山本 当社の実績で言えば、体感にはなりますが、タブレット端末が8割ほどだと思います。初期から導入されているという意味合いも強いですが。
その他だと、最近出始めている様々なソリューションの中でもテンキーは徐々に利用され始めているな、という印象です。
後払い決済で非保持化が可能、顧客ニーズにも柔軟に対応
田口 カード情報非保持化というテーマで話していますが、そもそも自分のカード情報を企業に登録したくない人や、所持したくない層もいます。そのような属性の顧客を有している事業者様の中には、コールセンター対応の場合のみ、カード決済をそもそも行わないという形も見えてきています。
山本 そのようなコールセンターでのカード決済利用が少ない事業者様には、後払い決済はオススメです。カード決済を好まれる顧客にはECからの購入を勧めるだけでいいので手間も思ったより少ないという声も聞いております。
代引きでもカードは必要ないですが、必ずしも対面で受け取れるわけではありませんし、宅配業者と顔を合わせることに抵抗がある方もいるようです。
また物流業界も再配達を減らす取り組みを行なっています。宅配ボックスの利用や、ポストに投函できるサイズでの梱包などです。このような社会背景には代引きより、後払いの方がニーズに応えていると言えると思います。
自社で債権管理を行っている事業者様にも、後払い決済をぜひ検討していただきたいです。
督促業務は決して気持ちのいい業務とは言えません。非常にセンシティブな業務をアウトソースし、自社の成長を考えることに時間を割いて欲しいというのが我々の本音です。
田口 確かに業務の外部委託は主流になりつつあると思いますし、そうなるべきだと感じています。
手数料といったコストは発生しますが、そこだけに目を向けて欲しくないです。基幹システムの開発からEC業務のフルフィルを俯瞰した目で見ていると、外注できる業務は非常に多いと思います。
例えば電話対応や帳簿処理。そこに割く人員のリソースなどを考えるとやはりまだ無駄が多いと思います。このような業務を外注に回せば結果的に人件費を、企画や商品開発といった業務に集中することも可能になります。
後払い決済を導入するときも手数料ではなく、現状の業務にどれくらいの時間と人が忙殺されているのかを意識して欲しいなと思います。
事業者に親身になってくれる担当者と仕事をするべし!
田口 私は決済周りで課題を抱えている自分のお客様には必ずと言っていいほどGMOペイメントゲートウェイさんやGMOペイメントサービスさんをご紹介しています。
決済手数料で最終的な判断をしてしまう人がまだまだ多いんです。しかし、一番大事なのは事業者様に親身になって対応してくれるかどうかだと思います。
様々なトラブルもある中で、質の高い営業さんでしたり、対応の早い担当者さんは信用ができると思っています。
財津さんや山本さんはまさに優秀な営業マンだと思っています。(笑)
さらにGMOグループという強みもあると思います。
山本 ありがとうございます(笑)。
決済機能を横に並べるとわかるんですけど、サービス面での差は本当に細かいところなんです。どこで差がつくかでいうと、ホスピタリティと言ったところになる時もよくあるのかなと思います。
財津 GMOペイメントゲートウェイで受けた相談は、山本がいるGMOペイメントサービスに共有を行い、常に連携が取れる状態で仕事をしています。会社は別ですが、同じGMOペイメントゲートウェイのグループなので。企業としての強みを存分に活かして事業者様のサポートが行えればと思っております。
田口 カード情報非保持化対応に追われているという事業者様は、早めにGMOペイメントゲートウェイさんにご相談するのを強くオススメします。実際にカード契約を切られてからでは遅すぎるので。
私たちは事業者様がいかに商品開発や企画に集中できるかを常々考えています。まずは相談、それだけでも構いません。実際に動くことがとても大事なんです。
ECのミカタ編集部の見解
カード情報非保持化に対応するには専門家の助けは必須になってきます。そして多くの専門企業がある中で、手数料で選ぶのではなく、営業担当者で選ぶべきという田口氏の言葉は多くのEC企業と多くのEC支援企業と接してきたからこそ重みと説得力があります。
確かに事業者は手数料を判断材料にしていると思います。確かに大切な指標ですが、それ以上に自社にとってどのようなメリットがあるのかを業務全体を見て検討する必要があるのではないでしょうか。
サービスを導入するだけで終わりの企業と、コンサルを行いながら様々なサービスを考え、導入後も速やかなサポート対応をする企業では手数料は変わってくるのは当然です。今回解説してくださった財津氏、山本氏のような自社の利益ではなく、事業者の助けをしたいと考えている人と仕事を行うことは業務全体を俯瞰したときに、手数料分だけではなく、自社に大きな利益をもたらすのではないでしょうか。