「ていねい通販」が実践するお客様第一のCRMとは?~目指すは100億円企業より100年続く企業~

野中 真規子 [PR]

ていねい通販株式会社 生活総合サービス(大阪市)
経営管理部 リーダー 戸田良輝氏
マーケティング部 WEB担当 堀翔太郎氏

創業1997年、今年で22年目を迎えた株式会社生活総合サービス(以下、生活総合サービス)は、大ヒット中のサプリメント『すっぽん小町』をメインとした健康食品や化粧品の販売サイトを運営。同社は「100億企業より、100年続く企業」をコンセプトとし、顧客に長く愛されるためのCRM施策を行っている。

同社の経営管理部のリーダーである戸田氏は、数年前にCRM担当であった期間に一般社団法人 日本通販CRM協会(以下、「CRM協会」)に参加。現在はセミナーにも登壇し、惜しみない情報を提供する姿勢が人気を呼んでいる。
また入社2年目にして、昨年からCRM担当に抜擢された堀氏もCRM協会に参加し、同業他社との交流やセミナーを通して吸収したノウハウを実践に活かしているという。

2人に同社のCRMのあり方や具体的な施策、CRM協会での体験などについて伺った。

目先の売り上げより、長く愛されることを考える

目先の売り上げより、長く愛されることを考えるていねい通販公式サイト(https://www.teinei.co.jp/

生活総合サービスは、おもに女性向けの健康食品や化粧品を販売する通販サイト。売り上げの7割を占める『すっぽん小町』は、コラーゲンを構成するアミノ酸を豊富に含み、内側からの元気とキレイをサポートする人気商品だ。

「弊社の商品は『がんばる女性を応援したい』というコンセプトのもと、作られています。お仕事や家事、子育など、だれかのために毎日忙しく過ごされている女性の方たちに、元気とキレイをお届けしたい。『いつもより元気に過ごせたな。』『キレイになったねと言われた♪』日々過ごす中で、そういった小さな喜びを感じてもらいたい。その結果、目の前の家族や周りの人に優しくなれたり、その優しさを受け取った人も、会社や学校で誰かに優しくなれたりする。そうやって優しさが繋がっていく。そうした優しさの連鎖の第一歩目を踏み出すことができるきっかけになれれば、うれしいです。」(戸田氏)

同社の売り上げは一昨年が広告収益が上がり過去最高の79億円を達成。昨年が72億となっている。

「今年は社内環境整備に注力し、売り上げは少し下がる見込みですが、実は短期的な売り上げの上下は世の中の情勢や広告媒体に左右されるもので、あまり気にしていません。弊社が目指すのは『100億企業より、100年続く企業』。売上を伸ばすことよりも、長く愛される企業であり続けたい。よく京都の団子屋さんにたとえてお話をするのですが、店舗を拡大するよりお客様のことを考えて、ひと串のだんごの数を増やすとか、あんこの量を増やすなど、今ある商品の質にこだわる。そんな企業でありたいと考えています。」(戸田氏)

定期中止のリスクがありながら、お客様第一の考えでスタートした「10日前メール」

定期中止のリスクがありながら、お客様第一の考えでスタートした「10日前メール」マーケティング部 WEB担当 堀翔太郎氏

堀氏は2018年に生活総合サービスに入社し、去年7月からCRMの分析担当に。ひとつひとつのCRM施策に対して、メールやSNSなどの数字をみながらユーザーの反応を分析し、次の施策に反映している。

「施策を考える上で意識していることは『お客様第一』『されていやなことはしない』ということです。2017年から始まった『10日前メール』がその代表例で、定期商品が届く10日前に商品のお届けをお知らせするメールを送るというものです。

定期注文している方の中には、注文したことを忘れているとか、先月に届いたぶんをまだ飲みきれていない、注文内容を変更したいが手続きを忘れている、といったケースもあります。そこにいきなり発送メールがきて、商品が届けば、いやな思いをさせてしまったり、変更手続きでお手間をかけてしまうかもしれません。それならこちらから事前にお知らせしたほうが親切ではないかという考えで、このサービスが始まったんです。」(堀氏)

通常、定期購入の顧客にこのようなメールを送れば、定期中止率が上がるリスクがある。確かに顧客の立場からすると親切かもしれないが、店舗として売り上げを考えたら、実践できない企業は多いはずだ。

「実際『10日前メール』をスタートした当初、売り上げは下がりましたが、お客様のことを考えて継続しました。そのうちお知らせだけではなく、お客様とのうれしかったエピソードや、季節の行事の話題など、担当者の顔が見えるようなメッセージも添えてお送りすることで、中止率やメール解除率が下がり、結果としてマイナスとなった部分はクリアできたんです。」(堀氏)

変革を起こすためには、他業界からのヒントも必要

新規獲得については、どのような施策を行っているのだろうか。

「以前は『おもてなし』が重要視されていましたが、今はただお客さん扱いされるより、運営側に回る体験を面白いと感じる方が増えています。たとえば単においしい料理が提供されるレストランより、みんなでやるバーベキューのほうが楽しいし、こげたお肉も笑いながら食べる醍醐味がありますよね。

通販サイトでもお客様に企画のアイデアを募るなど、お客様自身に『自分が盛り上げている』という実感を持っていただくことが大事です。弊社では、SNS戦略として新しい広告バナーを公開し、お客様にデザインの意見を求めたり、LINEスタンプのキャラクターの特徴や誕生日を応募してもらって決めたりしています。

誕生日を決めてもらう施策はとても反響が大きかったのですが、実はあるコミック本での人気企画を真似したものです。お客様が思いをこめたアイデアを形にすることで、喜んでいただけますし、SNSやリアルで周りの方にも広めていただけます。」(戸田氏)

漫画の企画から得たアイデアをCRMに活かすとはなんともユニークだが、変革を起こすためには、他業界からヒントを得ることは大切だ、と戸田氏は言う。

経営管理部 リーダー 戸田良輝氏

「CRMは、魅力的なコンテンツ作りが必要ですが、コンテンツの最先端をいくのがエンタメの世界。音楽の世界でも、ライブで歌う曲をファンの投票で決めるなど『他人事ではなく自分事』にしてもらうコミュニティ戦略を行っている。エンタメで盛り上がっている施策があれば、通販サイトでも活かすことは理にかなっていると思います。」(戸田氏)

コンテンツ作りにおいて、もうひとつ意識しているテーマが『消費のコンテンツから投資のコンテンツへ』。

「刺激的なネタを拡散し、最大瞬間風速を狙う、いわゆるバズらせるようなやり方は、SNSなどのプラットフォームは盛り上がっても、発信者のことは誰も覚えてくれません。それよりも、自分たちの会社や商品を好きになってもらうようなクオリティの高いコンテンツを作りたいと考えています。同梱物に関しても、読み捨てられてしまうペラペラの紙を入れるより、webでリッチなコンテンツを作る方向に動いています。」(戸田氏)

CRM協会は孤独になりがちなCRM担当者が集い、スキルアップできる場所

日々の業務やCRM施策に関して、堀氏は参加しているCRM協会の関西支部で学んだことも積極的に生かしているという。

「協会には、もともと戸田が、2014年に初めて弊社のCRM責任者になった際に参加していた経緯があります。その後僕が CRM 担当になり、戸田から『CRMのプロから学べるし、他社のCRM担当者と情報交換ができて知見が広がるからぜひ行って来い』と勧められ、参加しました。

参加してみると『CRM業界には、こんな熱量の高い人たちがいたんだ』とシンプルに刺激をもらえましたね。去年11月の協会の関西ツアーでは、さまざまな企業様に弊社の社内見学をしていただいたのですが、私はその担当者として関わる中で、いままで社名しか知らなかった同業他社の方と交流でき、あらためて自分に不足していた知識を認識することもできました。

また緊張しやすい性格だったのですが、協会では発信する場をくださるので、積極的に参加することで伝えるスキルが磨かれたと思います。企業のトップの方からフィードバックをいただけるなど、貴重な機会が得られるのも、協会ならではの魅力だと思います。」(堀氏)

ちなみに戸田氏のセミナーでは、生活総合サービスの3年後の事業戦略まで公開するなど、同社のCRMのノウハウを惜しみなく紹介しているが、同業他社に情報提供することに迷いはないのだろうか。

「弊社では『情報は伝えることでこそ、思いを持っている人と出会える』と考えています。弊社はたまたまタイミングに恵まれて、規模的に大きくなったからこそ、未来に投資できるリソースがある。業界の方々がチャレンジしにくい施策を実践して、その結果の成功事例も失敗事例も共有することで、他社さんがよりチャレンジしやすくなる土台を作りたい。そうしてみんなで通販企業界を盛り上げていけば、みんなハッピーになれると思うんです。」(戸田氏)

CRM協会での戸田氏登壇時の様子

なおCRM担当者は、社内でも人数が少なく孤独を感じやすい傾向にあるのではないだろうか。とくに関西は通販業界のイベントも少なく、CRM担当者がコミュニケーションをとれる場がなかなかないのが現状だ。

「いい施策を考えても、会社のトップや上司に『それよりも売上を上げろ』『新規を獲得しろ』と却下されて苦しむ人も多いのではないでしょうか。でも現場でお客様のことを1番に考えている担当者が考える施策は、大体正しい。実際、売り上げや新規獲得以外のCRM施策で会社のファンを作っている企業は多いです。CRM協会にくると、そこを理解して背中を押してくれる同志がいっぱいいますし、上司を納得させるための事例もたくさん得られると思います。

CRMを実践するためには組織改革も大事。CRM協会でも、会社の上層部に対して、組織から手を入れる根本改革を提示してもらえたらもっとよくなるのかなと思います。協会の今後にも期待しています。」(戸田氏)


記者プロフィール

野中 真規子

ライター。著書(電子書籍)『片付けられない、という「思い込み」をなくして、今すぐ片付けるための本』(ハウスキーピング協会)が好評発売中。ECのミカタにおいては、ECサービスのお話から伝わる本質的なメッセージを受け取り、拡散することが歓びです。

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